思い出(王子様視点)
珍しく王子様視点です。
手紙を出して、数日後、アンネリーゼから手紙が届いた。
お会いしたい、か
私も、アンネリーゼに会いたい。
10歳の頃から、私は結婚するなら彼女と、想い続けていた
きっと、彼女は覚えていないだろうと
やはり覚えていなかった
淡い期待があったが、あの時、アンネリーゼは6歳。
覚えていないのも無理はなかった。
「殿下」
「すまない、手が止まっていたな」
「伯爵令嬢の事を考えていらっしゃったのですか?」
「よくわかったな」
「恋煩いみたいな顔していたので」
「...」
私はアーサーを睨んだが
「そんな顔されても」
あの頃から姿は大きくなってとても美しくなった。だが、金色の髪と菫色の紫の瞳は変わらず。
あの庭に迷い込んで、これからの事を一人悩み、苦しんでいた私を救い出してくれたから...
あれは10年前、伯爵家の主催のお茶会に参加をし
大人の会話などに疲れ、私は庭園に逃げた。
そんな時、アンネリーゼが私を見つけた
『どうしたの?ないているの?』
『泣いて、なんか』
『ウソはだめよ、どうしてないているの?きょうはこんなにもいいおてんきなのに』
『君は...この伯爵家の子?』
『そうよ!おはつにおめにかかります、わたくしはアンネリーゼ・リルル・エセルバートでございます』
アンネリーゼは幼いながらも綺麗な礼をしてくれた。
私はそんな様子を見て泣き顔から少し微笑んだ
『ご挨拶ありがとう、私は、エリオット・アレン・シルヴェスター・ガーランド』
『まぁ、ガーランド...おうじ、さま?』
『そう、私は、第一王子だよ』
『おうじさま、はじめまして、よろしくおねがいします!』
『よろしくね、アンネリーゼ』
『おうじさまは、おちゃかい、きらい?」
ストレートに王子にものを言うのは珍しい事で、大人は不敬を恐れて言葉を選んで訪ねてくる。
こうやって、彼女は私の心を開いていく
『いや、お茶会が嫌いでは...』
『わたくしはね、つまらないの!もっともっとちがうことがしたいの』
『あはは、そうか、だからここにいるんだね』
『おうじさまもいやならいや!ていったほうがいいのよ?すこしはがまんしないといけないこともあるかもしれないけれども...わたくしはいや!ていうの』
『そう、か、そう言ってくれる人はなかなかいないな』
『そうなの?』
『私は、嫡男だから、我慢することが多いんだよ』
『にぃさまといっしょ?』
『にぃさま...にぃさまがいるんだね』
『うん!だいすきなにぃさまなの!』
こくりと頷きとてもいい笑顔をくれた。
そんな風に思ってもらえるなんて、羨ましい
『おうじさま?』
『ごめんね、何かな?』
『あのね、おうじさまはすきなひといらっしゃるの?』
『特に、多分、私は好きな人を持つことは許されないと思う』
『?だめなの?』
『王子、だからかな』
『わたくしは、おうじさま、すき!』
『え?』
『おうじさま、わたし、おおきくなったらあなたさまをさがしにいきます!それまでまってて?すぐみつけだしてみせるから!』
そう言った彼女はニコニコと微笑んで
ぎゅっと手を握ってくれた
その後は彼女の両親が探しに来て、私もお茶会に戻っていった。
それから、その言葉を忘れられずにいる。
アンネリーゼは覚えていないみたいだが
彼女は再び私の目の前に現れた。
私はアンネリーゼを他の男に渡すつもりは無い
「殿下、ここに判子を」
「はい」
「あと、こっちの資料とこの紙のここの部分を確認して頂いて」
「アーサー」
「はい?」
「伯爵領にいつごろ行けそうか?」
覚えていないなら、再び歩み寄っていくまで
幸いにも私の事は嫌がっていないはずなのだから
「この調子だと2週間後の出発になるかと」
「そうか」
「早く会いたいですか?」
「そうだな」
「さーて、私も頑張りますから殿下も頑張ってくださいね?」
アーサーの言葉に頷き、政務に戻った。
アンネリーゼ、ただ、君が微笑んでくれるなら
君に会える、なら、私は...
アンちゃんは幼いながらも大人みたいなことを言わせてしまったなと思った。
こんな6歳児おらんだろ...
げ、現実じゃないので許してください