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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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閑話  最強の潜む場所 ー都市伝説とサンライスー

数日後。


昼休みの学食。


一年男子のテーブルでは、

また同じ話題が盛り上がっていた。


「でさ、この前の続きなんだけど」


「まだあるのかよ」


「あるんだよ」


「湊川先輩の追加情報」


その一言で、周りの一年が身を乗り出す。


「何だよそれ」


「聞いたんだけどさ」


声がひそまる。


「湊川先輩の家の道場」


「実は」


「門が二つあるらしい」


「門?」


「表門と裏門」


「裏門から入るのは――」


「名家の人間だけ」


「何それ」


「じゃあ表門は?」


「普通の弟子」


ざわつく。


「じゃあさ」


「本山先輩は?」


「裏門」


「そりゃそうだろ」


「じゃあ鷹宮先輩は?」


少し間があく。


そして一人が言う。


「……裏門だろ」


「いや」


別の一年が首を振る。


「違うらしい」


「え?」


「湊川先輩が直接呼びつけるらしい」


「何それ」


「門関係ないじゃん」


その時だった。


少し離れた席で

カレーを食べていた蓮の手が止まる。


(何の話だ)


耳が自然と後ろを向く。


一年が続ける。


「あとさ」


「もっとやばい話」


「なんだよ」


「湊川先輩」


声がさらに小さくなる。


「怒ると」


「居合の刀が抜けないらしい」


「……は?」


「怒りすぎると」


「鞘が割れる」


「意味わからん」


「いやマジらしい」


蓮は心の中で思う。


(それはさすがに嘘だろ)


別の一年が言う。


「俺は別の話聞いた」


「何」


「湊川先輩」


「夜の道場で一人稽古してるとき」


「足音がしないらしい」


「忍者かよ」


「だから春日がついて行けない」


蓮は思う。


(春日関係あるのか)


その時。


一年が言った。


「あとさ」


「これはガチ」


「なに」


「湊川先輩」


「剣持ってない時の方が強い」


沈黙。


「それ」


「春日じゃね?」


「いや違う」


「柔術の先輩が言ってた」


「投げられたらしい」


蓮はスプーンを止める。


(それはあり得る)


実際。


昔、道場で見たことがある。


澪は普通に投げる。


しかも綺麗に。


一年が続ける。


「つまり」


「湊川先輩は」


「剣も強い」


「体術も強い」


「しかも裏ボス」


「やっぱ最強じゃん」


そこで。


静かな声がした。


「へぇ」


一年生たちが凍る。


振り向く。


そこに立っていたのは――


澪だった。


今日は

制服の上に薄いカーディガン。


手にはパンとカフェオレ。


澪は言う。


「追加情報?」


一年生たちの顔から血の気が消える。


「みみみ湊川先輩!」


澪は首を傾げる。


「門が二つあるんですか?」


一年生が震える。


「えっと」


「その」


澪は考える。


「門は一つですね」


一年生たちが一斉にうなずく。


「はい!」


澪が続ける。


「鞘も割れません」


「はい!」


「足音も普通にします」


「はい!」


澪は少し考える。


「あと」


「投げは普通です」


蓮はカレーを食べながら思う。


(普通の基準がおかしい)


その時。


後ろから声。


「何やってるの?」


雪だった。


トレイを持っている。


澪が言う。


「私の追加情報らしいです」


雪が一年を見る。


一年は固まる。


「……どんな?」


一年が震えながら言う。


「いえ」


「大したことじゃ」


雪が言う。


「聞きたい」


一年は観念した。


「えっと」


「湊川先輩が」


「裏ボスって」


雪は一瞬考える。


そして言う。


「まあ」


「間違ってはいない」


澪が振り向く。


「雪?」


雪は平然と言う。


「怒らせたくない」


澪が黙る。


蓮が笑う。


その時。


食堂の入口。


「澪先輩!」


春日だった。


一直線に走ってくる。


一年が小声で言う。


「来た」


「わんこ」


春日が止まる。


「こんにちは!」


澪が言う。


「こんにちは」


春日が言う。


「今日も、稽古へお伺いしてもよろしいでしょうか」


澪が答える。


「いいですよ」


春日が深く頭を下げる。


そして去っていく。


一年生がつぶやく。


「やっぱ犬じゃん」


澪が振り向く。


「聞こえてますよ」


一年が青くなる。


蓮はカレーを一口食べる。


そして思う。


(もう手遅れだな)


その時だった。


澪が、おもむろに横を向いた。


そして言う。


「ところで」


一年生たちはまだ凍ったままだ。


澪の視線は――

まっすぐ後ろ。


「そこの」


少しだけ首を傾げる。


「鷹宮先輩」


蓮の背中が固まる。


(げっ)


(ばれてた!)


澪は微笑んだ。


「奇遇なところで会いますね」


「こちらでご一緒しませんか?」


周囲の一年生の視線が、

一斉に蓮へ向く。


蓮はゆっくり振り返った。


「……はい」


観念した声だった。


蓮は食べかけのトレーを持ち上げる。


雪の後ろについて歩く。


三人はそのまま

窓際の席へ向かっていった。


一年生たちは、ただ呆然と見送る。


そしてその日。


一年生の間で

新しい噂が広まった。


湊川澪


・裏ボス

・体術最強

・名家の中心人物

・春日を従える


そして最後に――


絶対に怒らせてはいけない先輩ランキング


堂々の一位になった。

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