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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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第一話 長刀の剣士 ー雪ー

あの夜、剣は抜けなかった。

それがすべての始まりだった。


春。

入学式から数日が過ぎた朝。


今日の剣士学園は、いつもより静かだった。


新人へのオリエンテーションも、部活の勧誘も終わった。

学園は、ようやく普段の姿に戻りつつある。


そして――


今日からは、

指名し、相手が受ければ、誰とでも戦える。


訓練場には、多くの生徒が集まっていた。


中央の円形試合場。

そこに、一人の少女が立っている。


黒髪が、わずかに揺れた。

腰には一振りの長刀。


彼女の名は、雪。


この学園で、その名を知らない者はいない。


対面には三年の剣士。

実力者だ。


普段なら、誰もが避ける相手。


だが――


観客の視線は、すべて少女に向けられていた。


審判が手を上げる。


「始め」


次の瞬間。


雪の指が、柄に触れた。


抜刀。


一閃。


残心。


ゆっくりと血振り。


まるで、型稽古のような一一連の動作。


それだけだった。


音は、ほとんどない。


誰かが息を飲む。


気づいたときには――


三年生の剣が、地面に落ちていた。


遅れて、膝が崩れる。


静寂。


誰も声を出さない。


やがて審判が口を開いた。


「……勝者、雪」


歓声は上がらない。


誰も驚いていないからだ。


これが特別なことではないと、

皆、知っている。


雪は長刀を納めた。


一連の動作の続きをするように。


表情は変わらない。


まるで――


ただ、歩いただけのようだった。


――剣士学園。


剣を志す者のための学び舎。


国内でも数少ない、

武を専門に教える学校。


ただし、この学園は少し違う。


実力がすべて。


定期的にランキング戦が行われる。

武器も流派も問わない。


勝てば、上へ。

負ければ、下へ。


それだけの、

単純で残酷な仕組みだった。


――その時。


訓練場の入口に、一人の男が立っていた。


背は高くない。

体格もさして大きくはない。

帯刀すらしていない。


「新入生だろう」と、誰かが言った。


男は静かに試合場を見つめていた。

ただ、それだけだった。


だが――


二階の観覧席に、一人の剣士が眉をひそめる。


鷹宮蓮。


学園ランキング二位の剣士だ。


蓮は小さく呟いた。


「あの男……」


その歩き方。

その立ち方。

その空気。


ただの武人ではない。


その男の名を、まだ知らない。

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