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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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閑話 十一話の後  学園の昼 ーカレーとサンライス それと味噌汁ー

昼休み。


剣士学園の食堂は、今日も騒がしかった。


特に今日は違う。

 

ランキング戦が終わったばかりだからだ。


「見たか? 決勝」


「いや、途中からしか」


「いやいやいや、あの最後の一手だよ!」


あちこちで同じ話題が飛び交う。


長いテーブルの端で、雪は静かに味噌汁を飲んでいた。


隣では澪がパンを食べている。


「すごいですねぇ」


唐突に言った。


雪が視線を向ける。


「なにが?」


「雪のことですよ」


澪はパンを振る。


「学内ランキング一位。無敗の剣士」


そして少し笑う。


「なのに、食堂の定食」


雪は少し考えて答える。


「普通だと思うけど」


「普通じゃないです」


澪は首を振る。


「だって皆、見てますよ」


雪が周囲を見る。


確かに。


視線がちらちらと向いていた。


すぐ逸らされるが、また戻ってくる。


澪は面白そうに笑う。


「もう一年以上も一位なのに……」


少し肩をすくめる。


「みんなも、いい加減慣れたらいいのにね。ねぇ、雪?」


その時、向かいの席に影が落ちた。


「ここ、いいか?」


蓮だった。


トレーを持っている。


澪が即答する。


「どうぞ」


蓮は座る。


カレーの皿を置いた。


少し沈黙。


そして蓮が言う。


「この前の試合……」


雪の手が止まる。


蓮は続けた。


「いい剣だった」


それだけ言って、カレーを食べ始めた。


雪は少し迷ってから言う。


「……ありがとうございます」


澪は二人を見比べる。


そして小さく笑う。


「いいですねぇ」


二人が同時に澪を見る。


澪は楽しそうに言った。


「学園っぽいです」


少し間。


「まあ、学園なんですけどね」


「なにが?」


蓮が聞く。


澪はパンを小さくちぎりながら言う。


「強い人が、普通に同じ食堂でご飯食べてる」


少し考える。


「なんか、いいです」


雪は少し考える。


蓮は黙ってカレーを食べる。


その時、食堂の奥で声が上がった。


「あ!」


誰かが指を差す。


「一年の春日だ」


食堂の入口に春日が立っていた。


静かにトレーを持っている。


周囲の声が少し大きくなる。


澪が小さく言う。


「人気者ですね」


蓮がちらりと見る。


雪も春日を見る。


澪だけが見ていない。


蓮が言う。


「澪。お前のせいだろ」


「え?」


「昨日の演舞」


澪は気にせず――というより、聞こえないふりをして春日に目を向けた。


春日は澪の視線に気づいたのか、軽く明るく会釈した。


それだけ。


そして普通に列に並んだ。


澪がぽつりと言う。


「いいですね」


雪が聞く。


「なにが?」


澪は言う。


「強い人が、普通に並んでる」


蓮が少し笑った。


「当たり前だろ」


澪は肩をすくめる。


「そうなんですけど」


少し考えて言う。


「なんか、いいんですよ」


食堂の窓から、昼の光が差している。


ランキング戦は終わった。


だが――


学園の一日は、まだ続いていた。







少しの沈黙。


そして。


澪がふと思い出したように言う。


「ところで、蓮先輩」


蓮が顔を上げる。


「なんだ」


澪は悪戯っぽく笑った。


「わざわざ私たちの横に来てお食事なんて」


「彼女、いないんですか?」


蓮のスプーンが止まった。

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