トラック野郎が異世界転生したぜ!!
短編
俺は今日も走っている。俺は今日も相棒とともに走っている。
俺は、俺が背負えるだけのものを運び、働いている。
相棒も細心の注意を払って走っている。
それでも俺たちとは関係のない場所で、まさかは訪れる。
後ろから猛スピードで追い上げて来る奴がいる。
見れば、若く粋がった奴だった。ソイツは俺たちの前で巫山戯出した。
危ない!! と思った時には既に危機回避が間に合わなかった。粋がった輩は俺たちをおちょくる事に集中していて前方をあまり注視していなかったのだ。
俺たちは回避しようとした。だが、回避しきれなかった。
粋がった奴らは見るも無惨な姿へと成り果てた。それは自業自得だったが、そいつ等に巻き込まれた者はいい迷惑だ。
後続も周囲も巻き込んだ大きな被害だ。
そして、粋がった輩の体に火が着いた。助けてくれ、と言っているようだが、無理だ。周囲も距離をとる。
俺の意識も薄らいできた。
悔しいぜ……。
――はっ!!
俺は目覚めた。
――一体此処は……。
周りは自然で溢れていた。
俺は混乱した。
――俺は事故を避けようとして……。
それは叶わず、俺は――
――と、とにかく、誰か、誰か通ってくれ!!
誰かが相棒にならなければ俺は走れない。いや、動けないのだ。何故なら俺は――
――配達トラックだからなっ!!
いや、そもそも、ガソリンが無ければ走れないんだがな。
――いや、そもそも俺の体……無事……だな……。それになんだか心臓も前とは違うような……。
それに、相棒はどうなった? 無事に救出されたのか?
どうか無事でいてくれよ。そうであってくれ、と願うしかない。
ガンッ!! と体を殴られた。
――うぉっ!? な、何だこいつらは!!
粗末な腰布、緑の肌。でかい鷲鼻。黄ばんだ牙。小さな角。教育も行き届いていない、姿勢の悪い子供の様な背格好の棍棒を持った生き物だった。
――や、やめろ!! このやろう!!
そう、拒絶した瞬間、緑の肌のガキの頭が弾けた。
――うおっ!? 汚ねぇっ!!
「なんやけったいな箱にゴブリンどもが群がっとる思うたら、ほんまにけったいやなぁ。何なんや、コレ?」
――ふぁ! 関西弁の美少女よ、そこツンツンらめ〜。
「き、キモ!? なんやコイツ!! 喋りよったで!?」
――お、俺の声が聞こえるのか美少女よ!!
「……」
――そう、警戒するな。いや、するか。と、とりあえず落ち着いて話を聞いてくれ。俺は配達トラック。俺が乗せられる重さまでなら、どんな物でも運べる優れ物だ。び、美少女よ。君の改造次第で、君が俺を駆ってくれるならば、あの緑肌の様な奴は簡単に置き去りに出来るぜ? ぶっ飛ばして轢き潰せるぜ? 馬車にはむりだろ? 安全だぜ?
「……それがホンマやったら、そら、楽になるやろうけど……。まぁ、ええわ。うちが使うたるわ。お嬢にも見せたろ。で? どうやって使うんよ?」
そうして俺は関西弁美少女に俺の使い方を説明した。
「はは! 馬車より楽やし! 速い!! それにケツ痛ないのは嬉しいなぁ!!」
これが俺――配達トラック、あらため“ストライク ボーダー”と美少女商人のヴェルキティとの出会いだった。
因みに俺に名を付けたのは“お嬢”こと、ソーナ・ラピスラズリ・ハーティリアだ。