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094 Second time

 ゆっくりと目を開くと、そこには目を輝かせてコチラをのぞき込んでくる陽菜ちゃんの顔があった。

 それも直近に……。

 思わず「ちょっ!?」と驚きが声になってしまった。

 一方、陽菜ちゃんは僕の反応で、中身が変わったことを理解したのか、歓喜の声を上げながら僕……正しくは僕がリンクしたエルの体を抱きしめ、そのまま抱き上げる。

「すごい、本当に入れ替わったんだ。コレが本物のエルちゃん!」

「本物って『エル』に失礼だろ!?」

 二の腕の上からきつく抱きしめられているせいで、肘から先の少しと足しか動かせないが、それでも陽菜ちゃんの発言は問題ありなので、頭に浮かんだ言葉をそのまま言い放った。

 その言葉は決して複雑ではない。

 僕のリンクした『エル』が『本物』だとしたら、僕のリンクしていない彼女はどうなるのかという話だ。

『レンタさん。エルは気にしていないので……』

 なんだか申し訳なさそうに聞こえる控えめなエルの声が響く。

 けど、その声で僕の気持ちはより強まった。

『ダメだ、エル。ちゃんと気にしないと……例え、きっかけは昔の僕を真似たものだったとしても、エルは僕じゃなくて、エルとして生まれて、エルとして生きてきたんだから、そこに『本物』と『偽物』があって良い訳がないんだよ』

『レンタ……さん』

 僕の言葉に対して思考が追いついていないのか、エルの反応は鈍い。

 それでも、僕はエルに、自分が誰の真似でもなく、誰かの代わりでもなく、エルというただ一つの存在だと思って欲しかった。

 だから、じっとエルの反応を待っていたのだけど、よりによって、このタイミングで、僕の考えをほぼノーカットで、ヤヤが陽菜ちゃんに告げてしまう。

 直後、僕……エルの体は、陽菜ちゃんに熱い抱擁をされることになってしまった。

「ゴメン、二人とも! そんな意図はなかったけど、確かに本物と偽物ってレッテル貼ってるように聞こえるよね。配慮が足りなかったよ」

「わかった! 陽菜ちゃんの気持ちはわかったから、一旦手を緩めて!!」

 エルの体は見た目の年齢に即した筋力しか無いので、ギュウギュウと体を抱きしめてくる陽菜ちゃんの腕が、万力のように固い。

 別段、息苦しいとか、体がきし無と言うことはないけれど、それでも感じる圧迫感は、直ぐに抜け出したいと思う程度には不快だった。

 その形容しがたい感情も、包み隠さずヤヤは報告してくれたので、程なく陽菜ちゃんの腕からは解放される。

 直後、陽菜ちゃんは落胆した様子で頭を下げてきた。

「ゴメンなさい……配慮が足りなかったって謝罪した直後だったのに……」

 心の底から申し訳ないというのが伝わってくる陽菜ちゃんの謝罪の言葉に、僕は思わず苦笑してしまう。

 だから、許すのは前提として、釘を刺すことにした。

「陽菜ちゃんが本当に好きなものを見ると自分を抑えきれなくなるのは知っているから、ある程度は仕方が無いとは思うんだけど、エルの体は見た目と同じく幼い女の子と変わらない繊細で華奢なんだ。それに、エル自身だってボク達ほどには長く生きていない。変なトラウマを植え付けないように、気を遣ってくれるかな? 今僕がリンクしているとはいえ、ちゃんとエルの意識もあって、エルも体験しているんだから」

 僕が言い終えると、ほぼ同時に声が上がった。

「レン」

「レンタ」

『レンタさん』

 とても感情のこもった三人の声に、僕はなんだか無性に恥ずかしくなった。

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