078 推測
「はい。それでいいと思います」
「永田さん?」
同意されてしまったことに驚き、思わず名前を呼んでしまった。
「貴方は学生で、一般人なのですから、貴方の出来る範疇で、プロフェッサーの助力をしてくれれば、我々としては十分なのです……そこに、彼女に常識を教えるというのも含まれるでしょうからね」
永田さんの断言に「なんで言い切れるんです?」と尋ねると、直ぐに理由が返ってくる。
「まず夏川さんは真面目な方で、正義に反するのに抵抗のある人物だと思いますから……つまり、夏川さんの気質が理由ですかね」
「気質?」
「ええ、いわゆる『ツッコミ体質』というヤツですか、ついつい間違いを正してしまう性分ですね」
思わず絶句してしまった。
「自覚はあると思いますが、無意識に道を正してしまう性格なようですからね。我々としても大変ありがたいです」
最後に満面の笑顔で、そう言われてしまうと、諦めるしかないというか、反論の言葉が出てこない。
確かに、自分の性格なら突っ込みそうな気がするからだ。
まあ、問題としては、ツッコミの言葉をそのままヤヤに伝えられるかってことだろう。
コレまでを振り返っても、どちらかというと流されていた気がするのだ。
つまり、寄せて貰った期待を裏切りそうな気がして、その事を永田さんに伝えようとすると、それより先に首を左右に振られてしまう。
「無理のない範疇で良いのですよ」
「それ……は……」
まるで僕の思考を読んだような言葉に、再び言葉を失ってしまった。
自分を見透かされているという事実がただただ怖いと感じる。
恐らく、そんな僕の心理の変化も察していたと思われる永田さんは、平然と種明かしを始めた。
「貴方の思考をある程度解析しているのです……エルさんとリンクされたでしょう? その時の貴方の思考ログを参照しているのです」
「な……」
「事後報告になってしまって申し訳ないですが、プロフェッサーの研究には我々も出資していますので……」
言外に出資者として我々も見ていますよという含みを持たせながら、そう続けた永田さんの表情は申し訳なさそうに見える。
が、あくまで見えるだけで、そう思っているかどうかをその態度や言動から推し量ることは、僕には出来そうになかった。
ならばと、別のアプローチで考える。
まず最初に、永田さんが口を滑らせたパターンだが、まあ、コレは確実にない筈だ。
だとするならば、自分たちがエルとのリンクした時の思考を解析していると漏らした理由があると推測出来る。
じゃあ、その意図はないかと考えれば、保険と共に、誠意を示したって感じじゃないかと思った。
なぜなら『言わなくても良いことだから』で、ある。
僕はエルにリンクしていた時の思考が、伝わっているなんて考えもしなかった。
つまり、永田さんが口にしなければ、もしかしたら一生知ることがなかったかも知れない。
その一方で、ヤヤから僕が知らされる可能性を、永田さんは予測したんじゃないかと感じた。
永田さん達がリンクしていた時の情報を得たと知ったとして、すぐさま悪い感情を僕が彼らに抱くとは限らないけど、少なくとも良い印象を持つ可能性は無いと言って良いと思う。
だから、先手を打って手の内を明かしたという感じじゃないかと僕は結論づけた。
修正報告
2021.07.31
前:我々も終始していますので
後:我々も出資していますので
前:永田山岳地を滑らせた
後:永田さんが口を滑らせた
前:自分たちが得るとのリンクした時の
後:自分たちがエルとのリンクした時の




