075 理由
「夏川さん、お許しください」
そういうなり、永田は深く頭を下げた。
「貴方のような真面目で正義感のある青年が感情をぶつけてきてくれることが、少し嬉しくて、つい笑みを浮かべてしまうのです。他意はありません。ご不快でしょうが、ご容赦ください」
永田……さんのその謝罪姿勢は、誠心誠意に見える。
だから、僕はとても戸惑ってしまった。
単純に自分の印象を信じて良いほど、信用出来る相手ではない。
少なくとも、コチラの考えをかなり的確に読んでいるようだし、そもそも情報収集力もヤヤ以上なのは確実な筈だ。
まあ、組織の方が個人より情報収集に長けてるだろうって考えなので、あのヤヤの場合、予想を上回ってくるかも知れないけど……。
ともかく、警戒を怠らないことだと、改めて胸の内で自分に言い聞かせた。
すると永田さんは、一瞬笑みを深くした後で、話を切り出す。
「協力者と聞くと、余り良いイメージは抱かれないと思いますので、誤解の無いように丁寧に話をさせていただきたいのですが、構いませんか?」
丁寧にとわざわざ言う以上、難しくて長い話を聞くことになるだろうというのは、簡単に想像が付いた。
正直言えば、聞きたくはない。
けど、聞かなかったことで取り返しの付かないことになる可能性は大きいとも思った。
ヤヤもそうだけど、陽菜ちゃんや陽菜ちゃんのおばちゃん、それにおじさん……迷惑を掛けたくない人を思い浮かべれば、出てくる答えは一つしか無い。
「できるだけ、簡単に短めにお願いしても良いですか?」
そうじゃないと、思考が追いつかないし、わかった気になって大きなミスを犯しかねないと思ったからなのだが、永田さんは笑い出した。
そんなに長い時間ではないが、ひとしきり笑った後で永田さんは「失礼」と頭を下げる。
「そのように思ったままを伝えてくれると、大変助かります」
丁寧な口調でそういう永田さんに、僕は「なんで笑ったんですか?」と不服そうに問い掛けた。
「理由は先ほどと同じく、夏川さんの姿勢に微笑ましいものを感じたのも理由ですが……なによりも、普通は警戒心が強くなると、それに伴って思考も固くなる方が多い中で、柔軟に要求を出せる姿勢に感服したんです。まあ、私の言葉では素直に受け取りにくいかも知れませんが、大変優秀で好ましいと思っています」
永田さんの言葉はいちいち本心だと感じさせる気配のようなものがあるので、思わずくすぐったい思いをしてしまったが、ここは駆け引きも必要な場だと、気持ちを引き締める。
さすがに褒め言葉一つで、永田さんに気を許すのはチョロすぎるというものだ。
僕が一人息巻いてそんなことを考えていると、またも永田さんはフッと笑う。
その態度にむっとする間なく、永田さんはついに話を切り出した。
「まず、最初に誤解しないでいただきたいのは、我々はプロフェッサー・ヤヤに対して、危害や損害を与えるつもりや、その行動を阻害する意図はほぼ在りません」
修正報告
2021.07.06
前:そもそも情報収集も
後:そもそも情報収集力も
前:その態度にむっとするまもなく
後:その態度にむっとする間なく
前:我々にはプロフェッサー・ヤヤに危害、被害、あるいはその行動を阻害する意図は
後:我々はプロフェッサー・ヤヤに対して、危害や損害を与えるつもりや、その行動を阻害する意図は




