041 再起
感情の件はまたいろいろと調べることとなり、僕は昨日の続きとして、動画制作の流れを見せることになった。
この作業を見せれば全て終わりだと思っていただけに、これからも関係が続くというヤヤの言葉は僕を大いに動揺させる。
具体的には、機材を触れる手が震えてセッティングに手間取ったり、変に呼吸を乱してしまって固まってしまったりと、作業を思いっきり遅延させてしまった。
モニタールームで様子を見ているヤヤや、助手として横に立つエルには幾度となく『大丈夫か』と尋ねられてしまう始末である。
だが、不思議なもので、落ち着こうとか、普段通りに振る舞おうとか思うほどに、ミスは重なっていった。
『レンタ、今日はやめておく?』
ついに、ヤヤに切り出されたところで、両手で挟み込むように、僕は思いっきり自分の頬を叩いた。
「レンタさん?」
横にいたエルが、僕の名を呼びながら目を丸くする。
「気合を入れ直しただけだから」
短くエルにそう言ってから、ヤヤが見ているであろうカメラを見た。
「心配掛けてゴメン。ちゃんと出来るから、待ってて貰える?」
僕なりに真剣な気持ちでそう訴える。
もっとも、それでも今日は辞めた方が良いと言われるかも知れないと想像しながら、ヤヤの返答を待てば、思いの外明るい声で答えが戻ってきた。
「レンタ、真面目なのはわかるけど、そんなに気負わなくても良いよ。レンタのやり方を見せて貰いたいだけだから」
ヤヤの言葉から、動画の、歌の成否は気にしていないと断言された気がして、僕は「そう……だ、ね」と、自分でもわかるほど気落ちしてしまう。
すると、横のエルが「レンタさん」と眉を下げながら僕の名前を呼んできた。
振り返って、目にしたエルの表情に、僕は自分の身勝手さを痛感する。
ヤヤに言われたわけでもないのに、言葉の裏を勝手に読んで、拗ねて意気消沈してみっともないと自分が情けなかった。
駄目な自分を振り払うように、左右に首を振る。
目の前のエルは、僕をきっかけに感情を覚えたと言っていた。
エルにとって手本にならなくてはいけない僕が、みっともない姿は見せられない。
そう思うと、僕の中の冷静な部分が動き出した。
動画作成はそもそも誰に見せるつもりもなく、自分の自己満足のためにやっていたのに、ヤヤがそのできばえに興味を示さなかった程度で腐るなんて情けないと、僕は苦笑する。
それから、僕は気持ちを切り替えた。
ヤヤが興味を示さないなら、ヤヤが興味を示すほどのできばえにすれば良い。
そう考えた僕は、気持ちを新たに機材に手を伸ばした。
「ヤヤ、エル、作業再開するから、手伝って貰えるかな?」
そう尋ねた僕に、笑みを浮かべてエルは頷いてくれる。
「はい、レンタさん」
そして、ヤヤもまた明るい声で応えてくれた。
『バックアップは任せて頂戴、いつでも始めて良いよ、レンタ』
修正報告
2021.05.23
前:いつでも初めて良いよ
後:いつでも始めて良いよ
2021.06.03
タイトルを『動揺』から『再起』に変更




