035 任命
「私とアダムの関係?」
二谷先生の問い掛けにヤヤは小首を傾げた姿勢で動きを止めた。
過不足無く情報を返そうと、最適解でも模索しているんだろうけど、ヤヤの思考は控えめに言ってもぶっ飛んでいるので、どう返すつもりかが気になって仕方ない。
そして、ヤヤが長考しているせいで、チラチラと僕の方にも視線が向けられ始めた。
ギャグみたいなアダムの態度のお陰で、僕のミスは皆忘れてくれないだろうかと願っていたが、どうやら無理そうである。
それどころか、首を戻したヤヤが僕を見てにこやかに笑ったのだ。
瞬間、僕の中の冷静な思考の部分が、諦めるしかないという結論を導き出す。
そして、その結論が正しいことを肯定するように、ヤヤの言葉が紡がれた。
「ねぇ、レンタ。関係性ってなると、私はアダムの生みの親だから、アダムは子供って説明するのが良いかな?」
(それを僕に確認しないでくれええええ!!)
今にも解き放ってしまいそうな魂の叫びをどうにか飲み込んで、一斉に僕の方を向いたクラス全体の視線に応えるように、諦めの心境で僕はゆっくりと立ち上がる。
「ヤヤ、ちょっと」
そう言いながら教室の外を指さした僕はそのまま、教室の外へと飛び出した。
「なに、レンタ?」
ひょこっと可愛らしく教室から顔を出したヤヤに、話がしたいという意図が伝わったことにひとまず安堵したが、直ぐに打ち合わせをしないといけないので、すぐさま手招いた。
「ん? なになに?」
トテトテと教室を出て歩み寄ってきたヤヤに、目を閉じて一回大きく息を吐き出してから、小声で話しかける。
「ねぇ、ヤヤ、聞きたいこと、言いたいことは山ほどあるんだけど……」
「ふむ」
僕の言葉に理解してると言わんばかりにヤヤは大きく頷いた。
だが、実際状況のカオスッぷりをとても理解しているとは思えないほど、すっきりとした表情を浮かべてるヤヤに、僕は思わず長い溜め息を吐き出す。
とはいえ、ここで心折れてしまっては何も先に進まないので、ヤヤと状況のすりあわせをすることにした。
「ヤヤに関することで言っちゃいけないことってある?」
正直僕の知っている内容を、常識という現状では役立ちそうにない物差しで測れば、ヤヤに関することはほぼ全て規格外になってしまう。
当然、一般に知らせてはいけない情報もあるだろうと思ったのだが、ヤヤは「とくにないかな」と言い放った。
「アダムがロボットだとか、廃遊園地に秘密基地があるとか、いろいろあるでしょう!」
「あははは、そんな強い口調なのに、声を抑えるなんて、レンタは器用だね」
のんきなことを言ってるヤヤに、僕はこめかみがピクピクと痙攣するのを感じながら、感情を抑え込みつつ、もう一度尋ねる。
「本当にアダムのこととか、基地のこととか知られても良いの?」
「レンタ、情報というものはいずれは知られてしまうものだよ?」
やれやれと言わんばかりの態度でいうヤヤに僕は苛立ちを募らせたが、それを口にするよりも早く、教室から顔を出した二谷先生が声を掛けてきた。
「ホームルーム中に勝手に、廊下に出るんじゃネェよ」
「ゴメンなさい、レンタに呼ばれたものだから」
二谷先生に対して、シレッとそう言い放ったヤヤは僕を置いてさっさと教室に戻ってしまう。
取り残された僕と二谷先生の視線が交わった。
「夏川……くん」
普段呼び捨ての二谷先生のとってつけたような『くん』付けに、嫌な予感がする。
「何ですか、二谷先生……」
「おまえ、上野さん係な」
二谷先生はそう宣言するなり、ヤヤの後を追って教室に戻ってしまった。
「なっ」
その宣言に絶句した僕はうかつにもその場で固まってしまう。
直後、教室の中から二谷先生の宣言が漏れ伝わってきた。
「あー、どうも夏川が上野さんと知り合いみたいだから、夏川からいろいろ聞いてくれ、以上!」
修正報告
2021.05.23
前:谷先生の問い掛けたヤヤは
後:谷先生の問い掛けにヤヤは
前:過不足無く情報を変えそうと
後:過不足無く情報を返そうと
前:ヤヤが聴講しているせいで
後:ヤヤが長考しているせいで
前:実際状況のカオスップリを
後:実際状況のカオスッぷりを
前:物差しで計れば
後:物差しで測れば
前:危地のこととか知られても良いの?
後:基地のこととか知られても良いの?
前:態度でいうあ、ヤヤに
後:態度でいうヤヤに
前:二谷先生はそう言って宣言するなり、
後:二谷先生はそう宣言するなり、




