013 監視
部屋の中は、特撮番組なんかで見る司令室って感じの内装になっていた。
大型のモニターが複数並び、いくつものキーボードが設置されている少し広めのモニタールームの中央に大きな革張りの椅子が設置されている。
ヤヤは飛び跳ねるように席に着くと、一番手近なキーボードを引き寄せて、もの凄いスピードでキーを叩き始めた。
直後、蝶の3Dモデルが飛ぶスクリーンセーバーの動画が一気に実写のものに切り替わる。
「これ……」
「この秘密基地周辺に設置されてるカメラのリアルタイム映像だよ」
「え?」
僕がヤヤの言葉に驚いたのは、廃遊園地の映像が映し出されたからじゃなかった。
映し出された映像が、昼間のように明るき色もはっきりと映し出されているのである。
最近はテレビ番組なんかで、夜の暗さの中でも明るく撮影出来る機能を持ったカメラを知っているし、その画像も見たことがあったけど、目にしたカメラ映像はそれ以上だった。
少なくとも今さっき見た廃遊園地の光景が、昼間と変わらない映像で見えている。
まあ、単純に昼間録画した映像をヤヤがリアルタイムのものだと偽っている可能性もあるけど、ロボを自分で造って、そのロボで30キロを飛んで移動して、廃遊園地に秘密基地を作ってるヤヤが、そこだけ嘘をつく理由が思い付かなかった。
それもあって、多分、何らかの技術で昼間同様に撮影出来ているんだろうと解釈する方が、しっくりくる。
僕がそうやって一人で思考を巡らせていると、いくつものカメラを切り替えていたヤヤが口を開いた。
「不法侵入者は、男2の女2……これ、ダブルデートってヤツかな?」
小首を傾げながら、突如そんなことを言い出したヤヤに「いや、廃遊園地でデートなんてしないでしょ」と、僕は思わず突っ込んでしまう。
「そうなのね。遊園地と言えばデートって言うのは、古い情報かぁ」
ブツブツと呟くヤヤに向かって「古いというか、どっちかって言うと、ここが廃墟だから……かな」と僕の中では当たり前なことを言葉にして告げた。
「なるほどね。確かに廃墟でデートって言うのは余り聞かない事例だと思ったよ」
ポンと手を打つヤヤに、薄々感じていた彼女のアンバランスさを強く感じる。
コレまでは翻弄されていたせいもあって思いもしなかったけど、ヤヤを放って置いてはいけない気がして、僕は彼女の言葉により注意を向けることにした。
「さて、デートかどうかはともかく、不法侵入は良くないよねぇ」
その言葉を口にした瞬間、ヤヤがキラリと目を輝かせたのを見て、僕は慌てて待ったをかける。
「ちょ、ちょっと待って、ヤヤ。これまではどうしてたの?」
明らかに何かをしでかしそうなヤヤの雰囲気に、前のめり気味に僕は質問をぶつけた。
「アダムに、お話に言って貰ってるけど?」
「そ、そうなんだ……」
ヤヤの言葉で、アダムと出会った直後の自分の心理状態が蘇る。
余り生きた心地がしないかもなぁと思いつつ、中央のモニターに映し出された四人の男女の姿を見た。
おっかなびっくりといった様子で、多少の差はあれど全員腰が引けている。
映像では昼間と変わらない姿で映し出されているので、コントでも見ているような心境になるけど、実際は暗闇の中懐中電灯の明かりだけで移動しているはずだ。
そんな怯えながらも肝試しを続ける四人の背後に、静かにアダムが現れる。
直後、四人のうち男女一組がその気配に反応して背後を振り返った。
恐らくそこでアダムに気が付いたんだろう。
蜘蛛の子を散らすように四人が別々の方向へと逃げ出すが、当然速度も、タイミングもマチマチなせいで、直ぐに姿がカメラの外に消えた者と躓いてその場に取り残された者、結果は様々だった。
その光景をカメラで確認しながら、僕はヤヤに尋ねる。
「ええと、どうするの?」
すると、ヤヤは一度パチクリと瞬きをしてから、事もなげに答えを返してきた。
「私有地だから入らないでねって言って貰うよ、アダムに」
「そ、そうか、アダムにね……」
修正報告
2021.05.18
前:昼間とか割らない映像で
後:昼間と変わらない映像で




