012 地下
僕の返答から始まった沈黙は、結局アダムの介入で終わりを迎えた。
「マスター、不法侵入者のようです」
アダムの発した不穏な言葉に、ヤヤと僕はまるで真逆の反応をする。
「あら……」
「不法侵入者!?」
まるで大したことではないと言わんばかりの穏やかな口調のヤヤに対して、僕は気になった言葉を大げさに口にしてしまった。
直後、こちらに振り返ったヤヤが、突然僕の手を握る。
「え?」
思わず声を漏らしてしまった僕だけど、手を握られたことを認識してしまったせいで、急激に体が熱を帯び始めた。
そんな僕の状況などお構いなしに、ヤヤは手を引いて歩き出す。
「わっ」
急に手を引かれたことに驚いた僕に振り返って、ヤヤは「早く基地に移動するわよ!」と笑みを見せた。
その笑顔に何か返さなきゃと焦った僕は「う、うん」とかなり恥ずかしい反応をしてしまう。
けど、ヤヤの方は詰まりながらも同意したことで満足したらしく、改めて進行方向を見て僕の手を引いて歩き出した。
「アダム」
「はい。マスター」
ヤヤの言葉を受けたアダムが僕たちをあっさりと追い抜いて、メリーゴーラウンドの横まで移動した。
移動したアダムは、迷うことなく、メリーゴーラウンドの周囲を囲む金属製の柵に触れる。
何をするのかと、アダムに意識を向けた直後、ギッギッギと軋むような音がし始めて、直後、メリーゴーラウンド自体が横にずれた。
「ええええ!?」
想像もしていなかった変化に、思わず驚きの声が飛び出る。
一方、ヤヤは僕の驚く姿に、表情をキラキラと輝かせて、悪戯を成功させた子供のように得意げに笑って見せた。
「驚くのは早いよ、レンタ、アソコに基地の入り口があるからね、早速入ろう!」
「え、うぇっ!」
巨大なメリーゴーラウンド自体が横に動くという想定外の状況変化を見せたことに驚きで固まっていた僕の手を引いて、再びヤヤが歩き出す。
そのヤヤの言葉を裏付けるように、向かう先ではしゃがみ込んでいたアダムが、地面についていた重そうな蓋を持ち上げていた。
「ありがとう、アダム」
短く礼を言ったヤヤは、アダムの持ち上げた蓋の下から現れた地下に続く階段へと足を踏み入れる。
手を引かれたままの僕も、状況に戸惑って足を止めることも許されず、そのまま引き摺られるようにして後に続くことになった。
廃遊園地という寂れてうち捨てられた印象の地上の建物群に対して、その地下は真逆と言っても言い過ぎでないほど印象が違っていた。
最新のオフィスビルのような真っ白な外壁で構成された眺めの廊下には、学校のコンピュータ室のような、独特のパソコンなんかが出す匂いと、少しヒヤッとする空気の流れ、そして低く静かな駆動音が響いている。
そんな廊下を颯爽と歩くヤヤは、長い廊下の先にあった一つ目の扉の前に立った。
直後、プシューっと空気の漏れる音がして、ヤヤの前の大きな扉が開かれる。
そのまま部屋の中に突入したヤヤは、数秒後そこからひょっこりと顔だけを廊下に戻してきた。
「ほら、レンタ、こっちこっち」
ヤヤが手招きするとほぼ同じタイミングで、バフッと蓋の閉まる音がして、ギギギと何か重いものが動く音が響く。
僕は音のした方向である後ろに振り返ると、ヤヤが今響いた音の説明をしてくれた。
「あぁ、アダムが地下の扉を閉めて、メリーゴーラウンドを元の位置に戻した音だよ」
「な、なるほど」
シレッというヤヤだけど、それって僕と二人っきりってことじゃないかと気付く。
「さ、入って、入って」
顔だけ出していたヤヤが右手を追加して手招きを始めた。
それに誘われて、少し浮ついた足取りで僕はヤヤの入った部屋へとむかう。
のぞき込んだ廊下とは比べものにならないくらい明るい部屋に、一瞬だけ目がくらんだ。
修正報告
2021.05.18
前:メリー五ラウンド
後:メリーゴーラウンド
前:悪戯を成功させたこのように
後:悪戯を成功させた子供のように
前:蓋のしたに
後:蓋の下から
前:真っ白な外壁でで構成された
後:真っ白な外壁で構成された
前:ギギギと何か思いものが
後:ギギギと何か重いものが




