1370. 20階(14)
20階へ行く前に、いつも通り16階でジョギングをして、その間にデヴリンに食肉イチゴの採取を頼んでおいた隆一は、一周走り終わったところでついでにエルダートレントの苗を一つ採取することで16階の鍛錬を締めくくることにした。
南大陸との交易用の輸出品は作りためておきたい。
という事で。
「いつも同じエルダートレントの苗を狙うんじゃ成長が限られちまうから、今日はこっちのにしようか」
エルダートレントの場所はほぼ全て記憶にあるので、過去数回苗を採取したのとは違うエルダートレントの所へ隆一は足を進めた。
「そういえば、この苗って魔石や魔力をガンガン与えれば暫く若葉が出続けるって話だが、最近採取した苗木はどうしているんだ?」
デヴリンがふと聞いてきた。
「一応庭で育ててるぞ?お陰で植木鉢がそこそこ増えてきたが。
若葉が出無くなったら木材系の素材として使っているからある程度以上は増えないけどね」
とは言え、流石に飴型継続的回復薬を作るのも飽きてきたので、今度時間がある時にエフゲルトに錬金の訓練の一環として作らせる練習に使ってもいいかも知れない。
普通の薬草と魔力水を使った回復薬ならエフゲルトも錬金できるようになってきたので、ちょっと一気にステップアップだが材料があり、しかも売値の高い飴型継続的回復薬の錬金の練習をやらせまくるのも悪くはないだろう。
出来上がった飴の一部はエフゲルトが自分用に持っていていいし、残りは隆一が買い取るなり、護衛担当の人員に売っても良いのだ。
「フリオスも幾らでも欲しいと言っているから、余ったなら買うぜ~」
デヴリンが軽く笑いながら声を掛けてきた。
「軍だったら必要な分の補給はあるだろう?」
怪我をするような遠征や鍛錬の際に回復薬が補給されるのだから、継続的回復薬だって必要に応じて提供される筈。
「飴型のは疲労回復に良いんだよ。
だから夕方とか、もしくは夜更かしした翌朝とかに皆が欲しがる」
デヴリンが笑いながら言った。
ある意味、日本でのエナドリ扱いされているのかも?
『夜更かし』が酒で『翌朝の疲れ』が二日酔いならばウコン系のドリンク扱いだが。
確かエナドリは二日酔いには更に体調を悪化させる効果があった筈だが、継続的回復薬の場合は回復薬だからそういう問題はない可能性が高そうだ。
二日酔いだったら実は16階の食肉イチゴの消化液から作るアセトアルデヒド分解薬が一番な筈だが……もしかしたら神殿の薬局の方ではそれを製品化しなかったのかも?
一応鑑定結果は伝えておいたのだが、その際に『二日酔いなんぞ病気ではない』というセリフも聞こえたような気がしないでもない。
取り敢えず。
エルダートレントの元に辿り着いた隆一は、魔力を練って風矢を準備したら今度は少しハードルを上げようと、蔓の攻撃範囲内に一歩だけ入って振り下ろされる蔓を避けながら幹に近いその基部へ向けて攻撃を放つ。
「風矢!」
一応当たったが、ちょっと外れたのか完全には蔓を切り落とせない。
が、半分ぐらいちぎれたので蔓の動きが変になった。
「うっし。
風矢!」
再度攻撃したら、あっさり蔓がちぎれ飛んだ。
次の蔓がある方向へ足を進める。
外周近くにいることで複数の蔓の攻撃範囲に入るのはまだ避けているので、それなりにハードルは低い。
だがそれでも動いているターゲットを、それを避けながら狙い撃つというのはそれなりに集中力を要するので悪くない鍛錬だろう。
「風矢!」
今度はきっちり基部の中央に当てられたので、蔓がちぎれ飛んだ。
「大分と慣れて来たじゃないか。
次は2本で狙われる場所まで入ってみたらどうだ?」
デヴリンが声を掛けてきた。
確かに、あと2本しか残っていないので、試してみてもいいかも知れない。
という事で、攻撃範囲の外周からもう少し内部へ近づいて苗の方へ足を進める。
二本の蔓がどう動くのかを頭の中でシミュレーションしながらそれを避ける場所へ動きつつ、魔力を練る。
「風……うわ!!」
突地面から出てきた根に足を取られ、躓いたせいで術が離散した。
「足元の注意も必要だったな」
更に伸びて隆一の足に絡みつこうとした根をストンと切り落としながらダルディールが指摘する。
どうやら根が伸びてきているのに気づいていたのだが、隆一に指摘せずにどうなるか観察していたらしい。
「そういえば、足元からも来るんだったっけ……」
全方向に注意を払いながら戦うのは、中々難しい。
20階での鍛錬(と金稼ぎ)の前に体力増進!




