1367. 試作品の実証実験へ向けて(8)
「う~ん、アルミニウムの合金は反重力魔法陣に使えるのが思ったよりも多い様だな」
半日経って3階の実験スペースに浮かべた反重力魔法陣を刻んだ魔法陣を確認した隆一はちょっと眉を顰めながら言った。
「良くないことなんですか?」
エフゲルトがメモを取るノートを手に持ちながら尋ねる。
ちなみに3時ぐらいにシリコンを使った合金系は魔石が枯渇して床に落ちていた。
鉄と亜鉛を使った合金は昼過ぎから3時までの間に順次黒ずんだ箇所から穴が開いて床に落ちた。
が。
マンガンとマグネシウムの合金はどれも半日使い続けられている。
隆一が特許登録して使用制限を課しているジュラルミン以外でも反重力魔法陣を使えるというのは、隆一が飛行型魔道具に課した侵略行為への制約を受けない飛行具を大量生産出来てしまう事を意味しかねない。
「特許登録したら将来的には情報が拡散する。
特許登録しなかったら誰かに製法を盗まれて勝手に登録される危険性がある。
どっちも微妙なんだよなぁ」
自分で色々実験して悦に浸るだけだったら登録しなくてもいいだろうが、水中翼船を開発してそれに使うとなったら、人の目に入るから特許登録しないリスクは高過ぎだろう。
まあ、ジュラルミンを使っている顔をして、勝手に水中翼船の製法を盗んだ連中が海の上で魔法陣が劣化して立ち往生するよう誘導するのもありかもだが。
ナフザード商会とピケッタ商会及び海軍が南大陸との交易と海賊の取り締まり程度に使う船の数だったら隆一が個人的に作って提供するのも極端な手間ではない。
とは言え、飛行具のジュラルミンを特許申請して錬金術師が勝手に作ればいいと言っているのに、水中翼船の魔法陣だけ隆一が関与し続けるとしたらちょっと怪しいと疑われそうだ。
そう考えるとマンガンかマグネシウムの合金のどちらかは特許申請して、こちらも使用制限を掛けるような使用契約書にした方が良さそうだ。
その前に、これらの合金で飛行具を飛ばせるのかも確認しておくと良いだろうが。
まあ、家の中での実験の結果を見る限り、今までのジュラルミンとほぼ違いが無いような感じなので、確実に飛行具は飛ばせそうだが。
「取り敢えず。
寝るまでもうちょっと実験を続けて、どれかが劣化するかの確認だな。
あとは、海水に対する耐性か」
3階の実験スペースを出て、隆一は浴室の方へ向かった。
此方の方はそれなりに海水に負けているのが多い。
「最終的には魔法陣を刻んで実験してみた方が良いだろうが、これとこれ以外はほぼ駄目だな」
マグネシウム1%とマンガン5%の合金だけが微かに泡が付く程度で済んでいるが、他のは泡だらけになったり、持ち上げようと手に取ったら穴が開いたりとかなり脆い。
地球では金属が海水に浸かったと言っても1日程度でここまで弱るなんてことは無かった気がするのだが、異世界だと塩に対する反応も違うのだろうか?
それとも海水に何か地球になかった成分や効果があるのか。
かなりボロボロになった金属を見ると、海洋性魔物が居なくても海で泳ぐのは怖くなる。
「こちらの世界って人間が海で泳いでも健康被害はないんだよな?
危険な肉食性の魚とか魔物に襲われない限り?」
思わずボロボロになった試作品の金属を手に持って、隆一はエフゲルトに尋ねた。
「敢えて海で泳ぐ人は殆どいないと思いますが、船が座礁したり沈没した際に泳ぐ羽目になった水夫が海水に浸かったせいで病気になるって話も聞いてはいませんね。
何日も漂流する羽目になると日焼けや脱水で酷いことになるらしいですが」
エフゲルトが答えた。
まあ、漂流して日焼けと脱水で死にそうになるのは地球でも同じことだ。
この世界の海水に地球になかった効果があるにしても、少なくとも人体はそれに対抗できるらしい。
ちなみに防水袋の材料を吹き付けたジュラルミンの反重力魔法陣も取り敢えず大丈夫そうだった。
「ちゃんと……起動するな」
スイッチを押してみたら、ジュラルミンの板がふいっと中に浮く。
それをキャッチしてスイッチを切り、再度海水の中に戻しておく。
「どのくらいでダメになるのかのチェックもしなくちゃだな」
マグネシウムとマンガンの合金に関しても、反重力魔法陣を刻んで防水加工したのを同じように試してみよう。
と言うか。
防水加工だけで十分なら新しい合金の試験結果を捨ててしまうのも一つの手だが。
取り敢えず、様子見をしようと決めた隆一だった。
「アルミニウムの合金だったら反重力魔法陣を刻めるらしいぞ!
新しい合金を発見して大金持ちになろう!」




