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デートではありません!

新キャラ登場です!

『あなたが抱え込んでいるものを私にも背負わせて。』




宮谷の言葉に、私はある人の言葉を思い出した。

「別に、私はいつも真っ直ぐ素直に生きていますよ。抱え込んでいるものなんてありません。」


そして私は前今も手を差し伸べてくれた人を拒否した。

結局、私は前世も今世も根っこでは変わってない。


「・・・そっか。」

宮谷がほんの少しだけ顔を苦しげに歪ませた。

あぁ、あの時も()()()はこんなふうに顔を歪ませていた。

宮谷を拒否するような言葉を吐いてから私はそんなことに気づいた。

「あ、すみません。あの・・・」

だめだ。ここでこのままにしてしまったら本当にあの時と同じになってしまう。

「違うんです。その、宮谷様が頼りないとかそういうことじゃなくて、まだ私の心の準備ができてないんです。」

必死に、前世の私なら考えられないくらいに必死に私は言葉を紡ぐ。

もう、あんな顔はさせたくない。

無様でもいいから、ここだけは譲れない。

「だからっ、もし私の心の準備が出来たら、聴いてくださいますか?」

私は言った途端、自分の言葉に恥ずかしくなって俯くこうとすると、宮谷の嬉しそうな「うん」という声が聞こえた。

「じゃあその時まで待ってるね。」

「・・・ありがとうございます。」


今度は言えた。


ちゃんと、言えた。

少しだけ前世の自分が救えたような気がして私は微笑んだ。




◇◆◇



球技大会から何日かがたった。

結局、宮谷のクラスは優勝した。これで宮谷が全くチームに貢献していなかったら文句の一つでもいえように、貢献してないどころか宮谷がいなければあのチームは優勝出来ていなかったので私は文句の一つも言えない。

ちなみにまーくんのチームは2位だった。

まぁ、ですよね〜って感じ。私達?5組中3位ですけど?なにか??


あと桃ちゃんの一件で変わったことが二つある。

一つ目は桃ちゃんとまーくんの仲が少し縮まったこと。

今までは桃ちゃんにとってまーくんは友達認識だったみたいだけど、保健室でまーくんが変なことを言ったらしく最近の桃ちゃんはまーくんと顔を合わせると少し顔が赤くなる。

まーくんに何を言ったの?と聞いたらちょっとね、と色気ムンムンで妖しげに笑っていたのでそれ以上は聞くまい。

桃ちゃん、逃げて、超逃げて。


二つ目は私のこと。

私自身はあまり覚えてないのだけど、どうやら私は桃ちゃんが保健室に運ばれた時、相当必死になっていたらしくてそれが周りの人の記憶に残ったらしい。次の日から少しずつ話しかけられるようになった。これはぼっち卒業フラグなのでは?!

最近よく言われるのは「思っていた人と全然違う!」です。

そうでしょ?全然、鉄の女なんて似合う人じゃないでしょ?

ふふふ、別に鉄の女なんて全く可愛くないあだ名つけられてるのを未だに根に持っている訳では無いですよ?ええ、まったく。うふふふふ。


と、まぁ私の最近の変化といえばこんなもんなのだが、私がなぜ今までの出来事を整理しているのかと言うとあのクソチャラ男野郎を待っている時間に何もすることがないからだ。


そう!私は律儀にもあの男が言った約束を守って今こうして、()()()()の待ち合わせをしているのだ!!偉くない?!

え?約束したんだったら当たり前だって?

・・・勘のいいガキは嫌いだよ。


にも関わらず!あの男、待ち合わせから15分がすぎても姿を見せない。

あんの野郎・・・、自分で言っておいて・・・!!


私がちょっと本気でいらつきだした瞬間、後ろから声が聞こえた。

「すみれちゃん!!」

あ、この声は・・・


振り向くとそこには案の定クソ男がいた。

もう名前を呼ぶ価値もねぇわ!!!

「おはようございます。随分とお早いご到着ですね、クソ男。」

うふふ、と私が笑うと宮谷が心なしか顔を青くさせて頬をひきつらせた。失礼な。

「お、遅れてごめん。本当は三十分前についてたんだけどこれ、見つけて買おうとしたら時間がかかった。」

と、宮谷が差し出した手の先には小さな箱があった。

「・・・これは?」

「あけてみて。」

言われるがまま、小さな箱を開けると中には可愛らしい指輪が入っていた。

指輪は中央にダイヤがあり、その周りに二つ、小さな花がついている大人っぽいものだった。

「あの・・・?」

「それ、すみれちゃんにあげる。」

「え!!!」

いや、これ明らかにすんごい高いやつでしょ!!!!

もう作りとかからして高いって!!

「い、いいですよ!私、大丈夫ですよ?!」

私が箱ごと急いで宮谷に返すと宮谷はしゅんとして「いらない?」と言ってきた。

「いや、だって!これ高いでしょう!?」

「そんなことないよ。」

「いやら見るからに高いですって!親のお金ですし・・・」

宮谷もたしか結構なお金持ちだった気がする。

「いや、これ俺が自分で稼いだ。最近株を始めたんだ。あとは親父の仕事手伝ったり。」

「え、」

まじかぁぁぁぁぁ、この年でそんな見た目でも色々考えてるんだね。

と感心する一方で親父と宮谷が言った時の曇った表情が心に引っかかった。


「その花、すみれなんだ。すみれちゃんにぴったりだと思ったんだけど・・・。」

またもやしゅん、と捨てられた子犬のようにする宮谷を見て私はこれ以上否定するのも可哀想になってきて今回は素直に受け取ることにした。

「いや、あの、あ、有難く頂戴いたします・・・。可愛いものをありがとうございます、」

私が宮谷にお礼を言うと宮谷は途端にパァと顔を明るくした。


こいつ・・・、さっきの落ち込みぶりわざとだな・・・!!

ぐぬぬぬ、と宮谷を睨むと宮谷はにこりと笑って「つけないの?」と聞いてきた。

「え?え〜、だって壊したら嫌ですし・・・」

「つけて欲しいなぁ・・・」

だからその子犬のような顔はやめろ!わざとだって分かってても罪悪感があるんだよ!

「分かりました、つけますよ。」

私が指輪を恐る恐るはめるとサイズはぴったりだった。

「え、ぴったり」

「良かった〜。スゴイにあってるよ、可愛い。」

砂糖と蜂蜜ををたっくさん入れた紅茶のように甘い顔で宮谷が微笑む。

しばらく恥ずかしくて黙っていると「どこへ行こうか」となんでもないように宮谷が聞いてきた。

「別に、どこでもいいですよ。」

「う〜ん、とりあえず・・・」

宮谷は少し考え込んだ仕草を見せた後に「クレープって食べたことある?」と聞いてきた。

「そんなの食べたことあるに決まって・・・」

と言いかけた私は今世、生まれ変わってから1回もクレープを食べていないことに気づいた。


前世では当たり前のように食べてたからつい答えそうになっちゃったけどよく考えたら私みたいな箱入り娘が「あるに決まってる」とか言ったら変なのかな?

え〜、根が庶民なんで分かんないっす。

「いえ、ないです。」

結局私がそう答えると満足そうに宮谷が頷いた。

「みんな、そう言うんだよね。おいで、美味しいとこ知ってるから。」

手を引っ張られる。私は大人しくついていきながらもみんなって学園とかの女子のことなんだろうな〜なんてくだらないことを考えていた。





「あれ、宮谷?」

結局手を離されることなくしばらく二人で歩いていると宮谷を呼ぶ声がした。

後ろを振り返るとそこには可愛い顔をした男子がハーレムをつくっていた。


ん?どこかで見た気が・・・。

えーと・・・、どこだっけ?同じクラスではないし・・・、宮谷のクラスにもいなかったはず・・・。


もう1度よく、男子の顔を確認する。

クリン、とした大きな目と少し童顔な顔の整った男子。

・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!

思い出したぞぉぉぉぉぉぉ!!!!


こいつ、攻略対象だぁー!!!!



攻略対象、『杉原 (みやび)

こいつは弟属性で元々はヒロインにも興味本位で近づく。

でもいつも周りがお姉さん系の女子しかいなかった杉原はヒロインの放っておけない雰囲気に徐々に惹かれていく。


簡単に言うとこいつも宮谷と同じでハーレム製造機だ。

関わりたくねぇ〜、こいつは特に関わりたくねぇ〜!!

確かこいつ、ゲームの中でも特に私に嫌がらせしてこなかったけ?

こいつの個別ルートに入ると、ヒロインはこいつに私のことについて相談できるイベントがある。その時、こいつはヒロインから相談を受けたあと、すごい勢いで私を潰しに来る。

詳しくは語られていなかったけど相談した日からヒロインへのイジメがぱったり止んだことに気づいたヒロインはやつに聞くのだ。「なにをしたの?」と。

そしたらやつは言う。

「君には言えないようなこと。」と!!

しかもすっっごい黒い笑顔を浮かべて!!!

その後、ヒロインは抱きつかれてその質問はうやむやになったのだけど私は一体あのすみれが一瞬でいじめをやめるほどのことって何?!!何をしたの?!!とすごく気になったのを覚えている。


もうやだよぉ〜!全力で関わりたくないですぅ〜〜!!

みーーやーーーたーーーーにぃーーーーー!!!!!!

助けろぉ!!

と、私は心の中で叫びながら思わず宮谷の袖をギュッと握る。

宮谷は私の様子に気づいてさりげなく私を背中にまわしてくれた。

お、おお。まって、今初めて宮谷を尊敬したかも・・・。

「え、何その顔。すみれちゃん、今すごい失礼な事考えてない?すごい嫌な予感がするんだけど?!」

宮谷が私の顔を見てコソコソと話しかける。

え、失礼な事なんて考えてないデスヨ。ホント、ホント。


「えーと?宮谷の後ろにいるのってあの北条すみれちゃん?」

若干存在を忘れかけていたというのに杉原のやつは空気を読まずにまた話しかけてきた。

ていうか、あのってなんだよ!あの、って!!!

いや、やっぱり聞きたくないのでいいです。聞いたら私の豆腐メンタルはもう再起不能になっちゃうから。


なんてことを考えながら私は仕方なく宮谷の後ろから少しだけ姿を見せる。

「こんにちは。はじめまして。私、北条 すみれでございます。以後、お見知りおきを。」

挨拶とは裏腹に私は心の中で覚えてなくていいからねーーー!と心の底から叫んでいた。


「僕は杉原 雅。よろしくね。いや〜、北条さん遠くから見るよりずっと綺麗だね。」

「ふふふ、お世辞がお上手ですのね。ありがとうございます。」

とりあえず口元だけで笑みを浮かべる。

内心はもう早く帰りてぇよ〜、クレープ食べようよぉーーーである。


「もういい?今日は俺たちデートなの。邪魔しないでね」

隣から宮谷の声がした。

おっ!よく言ったぞ!宮谷!!デートではないけどなっ!!

勢いよく隣に宮谷を見上げると黒い笑みがうかんでいた。


いや、だからその笑顔怖いって。

と、思った私がこれじゃあ杉原の取り巻きの女子も怖がっちゃうよなんて思いながらそっちの方を向くと美青年二人にうっとりとしていた。

え"?お姉様方、気づいてないの?この真っ黒な笑顔に。

決してそんなウットリできるような顔してなくね?だってこいつ目が笑ってないよ?

なに?これわかるの私だけ?


「そんなに怒んないでよ〜。二人の邪魔したのは悪いと思うけどさ。」

杉原の言葉に私は安心する。

あ、良かった。あなたは宮谷が怒ってるってんかるのね。

なんて思っていると続けて杉原からの衝撃発言が。

「面白そうだから俺もついていこうかな。」


はいぃぃ?

そういった杉原の顔は黒い好奇心が溢れていた。



オーマイガッ!!


お読み頂きありがとうございました!

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