過去の記憶
よく分からない回かもしれません・・・
さて、私たちのクラスの男子の試合がひと段落ついて、次は私達女子の番になった。
「桃ちゃん、頑張りましょうね!」
「うん!」
あ〜、可愛いなぁ、可愛いーーーーよぉぉぉぉ!!!!
流石にここでは人が多すぎるので顔には出さないけど私は心の中で萌えまくっていた。うちの子マジ天使。
「あ、桃ちゃん、すみれちゃん!!」
げっ、こ、この声は・・・。
嫌な予感とともに私が後ろを振り向くとそこには予想通りの人物がいた。
「あら、宮谷様。ごきげんよう。」
「さっきぶりだね!すみれちゃん!!」
私と宮谷が喋っていることで周囲でざわめきが起こる。
あ、そう言えばここまで人が多い中で宮谷と喋ったの初めてかも・・・、しくじった・・・。
「すみれちゃん、今回は俺の方が気づくのが早かったね。」
こっそり耳元で宮谷がそう呟いた。
私は数秒たってからその言葉の意味に気づく。
こ、こいつわざと人前で話しかけやがった・・・!
手の込んだいたずらしやがって・・・!!!!
殺意のこもった目で宮谷を見るも全く聞いた様子がない。
ちっ・・・、もう!してやられたぁーーー!!!
バンっ!!!!
と言う試合前にあった出来事のイラつきをボールにのせて投げてるうちに気づけば相手チームの人数がだいぶ減っていた。
「す、すみれ様すごいです・・・!一人で何人も倒しちゃうなんて!」
と横で天使のような桃ちゃんが褒めてくれるのはすごい嬉しいんだけど、やばいよ。無意識で投げてたよ。
怒りって怖いね。
なんてどうでもいいを学習してるうちにどんどんと試合は進んでいく。
まぁ、ほぼほぼ私の投げたボールなんですけどね、あは。
相手チームの内野人数が残り2人になった所で試合終了のホイッスルがなった。
あ〜〜〜、疲れた!!こんなに動いたの久しぶり・・・。
「桃ちゃん、勝ったね!」
きっと桃ちゃんだったら可愛らしく大喜びしてくれるだろうと横を見るとそこには明らかに息を荒くした桃ちゃんがいた。
「も、桃ちゃん?」
私は桃ちゃんのいつもと違う様子に声をかけながら肩に手を置く。
バタンっ!
桃ちゃんが倒れた。
「桃ちゃん?!!桃ちゃん!!桃ちゃん!!!聞こえる?!私のこと、わかる?」
私が声をかけても桃ちゃんは、はっ、はっ、と苦しそうに息をするだけだ。
「桃ちゃん!ゆっくり息を吸って、大丈夫、ゆっくりでいいよ。」
私は前世でこの症状を知ってる。
私自身が幼い頃に、まだ自分の感情とうまく向き合えない頃に良くなった症状だ。
そう、これは過呼吸。
過呼吸と言うと軽い症状に聞こえるかもしれないが、過呼吸は呼吸困難や目眩を引き起こす危ない症状なのだ。
「落ち着いて、大丈夫。ここにいるから。そう、ゆっくり、吸ってー、吐いてー、」
少しずつだけど桃ちゃんの呼吸が楽になってきた。
「すみません!!誰か、飲み物を持ってきてくれませんか?!なんでもいいです!」
私が叫ぶとみんなぎょっ、としたような顔をして自分の荷物を漁り出す。
「すみれちゃん!これ!!」
宮谷の声がして、その方向を向くとミネラルウォーターのペットボトルが投げられた。
「ありがとうございます!!桃ちゃん、ゆっくりでいいから飲んで。」
私はお礼を言いながら桃ちゃんの頭をあげる。
水を飲むと桃ちゃんはだいぶ落ち着いたようでふぅ〜、と大きく息をついた。
と、そこに慌てた様子のまーくんが走ってきた。
「すみれ!大丈夫か?!」
「えぇ。ひとまず落ち着きました。」
「そうか、保健室には俺が運ぼう。ありがとう。」
「いえ。桃ちゃんをよろしくお願いします。」
「頼まれた。」
まーくんはいつもの軽い様子を一切ださないまま、桃ちゃんをお姫様抱っこした。
周りが少し色めき立つが今はそんな時じゃない。すぐにどよめきは収まった。
私が呆然と立ち尽くしていると宮谷が待機場所から試合コートの中に入ってきた。
「すみれちゃん、大丈夫?」
「私は、大丈夫です。・・・ちょっと次の試合休みます。すみません、宮谷様、伝えておいてください。」
「え、」
宮谷が私の顔を心配そうに見るが今の私に表情を取り繕ってる暇はなかった。
私はそのまま体育館をあとにした。
◇◆◇
・・・どうして。
ゲームでは桃ちゃんは立ちくらみだけで済むはずだったのに。あんな過呼吸になるシーンなかった。
また、ゲームにズレが?
いや、この世界がゲームの世界ではなくて、現実だということくらい私にもわかってる。
でも、私はゲームでは大丈夫だったからって桃ちゃんの体調不良を放っておいた。
友達より、イベントを優先させたんだ。
まーくんと、桃ちゃんが上手くいってほしい。
そう思ってた。でも心のどこかでこの世界を楽しんではいなかっただろうか?私は次に起こるイベントを楽しみにしてはいなかっただろうか。
何よりもさっきの過呼吸で前世の記憶がまた新しく頭の中に流れこんできた。
私が、譲れなくて、譲りたくなくて。
でも手元にある時には気づかなかったもの。
いつも、私を支えていてくれた手。
どうして、私は・・・・・・
しばらくずっと立ち尽くしていた
「すみれちゃん!!!」
私が暗い思考に溺れそうになった時、後ろから最近よく聞くようになった声が聞こえた。
後ろを振り向くとさっき別れたはずの宮谷がいた。
「どうされましたか?」
「どうしたってこっちのセリフだよ。すみれちゃん、なんか様子へんだよ。」
珍しく真顔で宮谷が私に問いかける。
「変、ですか?これが私の素ですよ。」
だって、私前世ではずっとこうだった。仮面をかぶってる時以外は自分がどんな顔をしてるのかも分からなかった。
すると私の言葉に宮谷が顔をくしゃりと歪ませた。
どうして、そんな顔をするの?
「違うよ、すみれちゃんは本当はもっとキラキラしてる。いつも楽しそうだよ。今のすみれちゃんはすみれちゃんじゃない。この俺が言うんだ。確かなことだよ。今のすみれちゃんは変。」
宮谷が言い切ったことに私は酷く動揺する。
前世ではいつもこんな時、私は1人だったから。
こういう時、私はどんな反応をすればいいのか分からない。
「だから、いつものすみれちゃんに戻って。」
その声はとても優しかった。
そうだ・・・、今は、私は前世の私じゃない。私の今の名前は北条すみれだ。
「桃ちゃんは、大丈夫でしょうか?」
のみこまれちゃいけないんだ。過去の、前世の私に。
私は私の意志で生きて、もう二度と後悔はしたくないんだ。
私の問いかけに少しだけほっとした顔で宮谷が笑った。
「保健室に運ばれてすぐ、落ち着いてすみれちゃんのことを探してるみたいだよ。」
「え・・・」
「桃ちゃんがすみれちゃんのこと呼んでるって。」
「そ、れは・・・、行かなきゃ、ですね」
その言葉でなんだか少しだけ救われた気がした。
さて、『いつもの』私に戻ろう。
あほみたいに好き勝手するいつもの私に。
それで桃ちゃんに謝らないと。
体調悪いのに気づけなくてごめんねって。
後悔はいつでもできるけど、未来を作ることは今しかできないんだから。
過去を悔やむのなら未来を創る方がずっといい。
「宮谷様、ありがとう。」
「俺は何もしてないよ。」
すぐに返ってきたその言葉が少しおかしくて私は「それでもいいんです。」と笑った。
◇◆◇
保健室に行くと桃ちゃんが保健室のベッドの上にいた。
「桃ちゃん、大丈夫?!」
廊下を走ってきた私は勢いよく桃ちゃんに抱きつく。
「はい、すみれ様、本当にありがとうございます。元々少し体調が悪くて・・・、それに寝不足も重なってしまってパニックになってしまったんです。本当に心配かけて申し訳ありませんでした。」
桃ちゃんは真面目な顔でぺこりと頭を下げた。
「え、全然大丈夫だよ!!むしろ気づけなくてごめんね!」
「いえ!!すみれ様がいてくれたからすぐに収まったんです!本当に心の底から感謝です」
私も桃ちゃんもお互いに譲らないのでこのやり取りを五回ほどした後に素に戻ったまーくんが「いい加減にしない、」
と呆れた目で見てきた。
「にしても、本当にびっかりしたわ。桃ちゃんいきなり倒れるんですもの。」
誠くんのことだからすごい勢いで保健室まできたんだろうなぁと思いながらその言葉を聞く。
「はい、誠様も、本当にありがとうございます。」
「べ、別に。私がしたくてしたことで・・・」
まーくんは真正面からの感謝を受け止められずに目をそらす。
ツンデレかよっ!
でも少しだけいい雰囲気になってきたふたりを邪魔してはいけないと私は宮谷とそっと2人で保健室を出た。
「すみれちゃん、もう大丈夫?」
「えぇ。宮谷様、ご迷惑おかけしました。」
「別に迷惑は全然かけてもいいんだけどさ、」
そこで一旦、宮谷が言葉を区切る。
「すみれちゃんは一体何を抱え込んでいるの?」
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