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番外編のようなものです
今日は、同期のお葬式があった。
俺の好きな人だった。
その人はいつもニコニコと笑ってて、人との距離のとり方が抜群に上手で、誰からも好かれていた。
俺とその人――――花梨は学生の頃、1度付き合ってるんじゃないかと噂になったことがあった。
と、言うのも俺は自分で言うのもなんだがそこそこモテる。
そんな俺は女子と変な雰囲気になって友達にからかわれるのが嫌であまり女子と仲良くしていなかった。
だけど花梨とだけは話しやすくてそういうことを気にせずに気軽に話していた。花梨はしつこくなかったし、冗談も通じるし、いい友達だと思ってた。
でも周りが騒ぎ出した。
付き合ってるんじゃないか、とか仲が良すぎる、とか騒いでいるのを聞いて俺はうんざりしていた。
でも、その噂を止めたのも花梨だった。
後から聞いた話だが、花梨はその時、クラスのリーダー格の女子に睨まれていたらしい。
なんでもその子は、あー、その、なんだ。俺のことを好いていてくれたらしくて俺と仲のいい花梨に嫉妬したとかしないとか・・・。
花梨にとっては飛んだとばっちりだろうが花梨は騒ぎもせず、あからさまな否定もしなかった。
でもリーダー格の女子はそれに納得しなかったらしく、クラスの雰囲気はしばらくピリピリしていた、らしい。
というのも俺の前でのリーダー格の女子はいつもか弱い感じで特に気にもとめてなかったし、リーダー格だとも知らなかった。
鈍すぎないかって?・・・女子とあんまり絡んでなかったからそんなに詳しく知らなかったんだよ!(因みにこの話は同窓会の時に周りの人から教えてもらった)
まぁ、そんなクラスの雰囲気をいち早く感じ取った花梨は、リーダー格の女子に「他に好きな人がいる」と宣言したらしい。そして、「その人との仲介を俺にしてもらっている」とも。
もちろん俺はそんなことしたことは無かったが、そこは花梨に話を合わせた。
なんていうか、リーダー格の女子に鬼気迫るものがあったんだよ、うん。
あと花梨はリーダー格の女子と俺の中を取り持つ的なことを言ったらしいんだが、それは彼女の抜群に上手な距離のとり方でリーダー格が満足する程度に、俺が迷惑がらない程度に調節してもらった。
会社に出て営業やらなんやらをするようになった今ならよく分かる。
彼女の距離のとり方は本当に少し不自然なくらいに上手だった。普通学生だったら慌てるところも、おちゃらけた振りをして実は見事に彼女がリーダーシップをとっていたり、喧嘩の仲裁も喧嘩をとめたと思わせない程自然に、していたり花梨には不思議な雰囲気があった。
おちゃらけているようで実は周りを一番見ている。
そんな人だった。
そして、俺が彼女への恋心に気づいたのもそのリーダー格の女子についての出来事がきっかけだった。
彼女に好きな人がいると聞いて、彼女にとっての特別な人は誰なんだろうと気になって、彼女が1人でリーダー格の女子をおさめたときいて、彼女1人さえも守れないことに不甲斐なさを覚えて、いつも1人で何かと戦うようにいる彼女をみて俺は、彼女を守りたいと思った。
それからはずっとさり気なくアピールしていたけど彼女に気づいた様子はなかった。
本当にあいつ、そういうところは鈍いんだよな・・・。
自分のことになると極端に鈍くなる。
あ、でも1度だけ彼女の特別な人についての話を聞いたことがあった。女性か男性かはわからないがクリスマスか何かの日に花梨の機嫌が妙に良くて理由を聞いたら嬉しそうにある人からプレゼントを貰ったと話していた。
その時の花梨がいつもより年相応の女子に見えて俺はジェラシーを燃やしたのを覚えている。
まぁ、本人に「すげぇ嬉しそうだな」と言っても「え?いつも通りだよ」と返されたので自覚はなかったみたいだけど。
卒業式の日、俺は告白しようと思ったが花梨はいなかった。
卒業式が終わってすぐに帰ったらしい。
その事実を聞いた瞬間、俺は花梨にこの学校にはなんの思い入れもないと言われたような気がして悔しかった。
そんな出来事から数年の月日が流れた俺はある日突然、会社で花梨と再会した。
俺と花梨は同級生から同期になった。
花梨は学生の頃となんにも変わらなかった。
ただ、少しだけいつも花梨が纏っていた孤独な雰囲気が薄れた気がして俺は直感でいつか話されたあの人がそうしたんだろうな、と思った。何も出来ない自分が歯がゆかった。
そして―――――――
花梨が居眠り運転のトラックに轢かれたと知った。
葬式にどことなく花梨に似ていた綺麗な女性が「ごめんね」と言いながら大泣きをしていたのを見て俺は花梨がいつも嬉しそうに話していたのはこの人だと悟った。
俺は結局、彼女に何も出来なかった。いつだってこうしたいと思うだけの俺とは違って彼女は何時だって考えを行動に移していたのに。
葬式が終わり、家に着いた俺は大人気なく泣いた。
スーツがシワになるのも構わず泣いた。
人生で初めてここまで後悔した。
彼女に何もしてあげられなかった。
葬式で初めて彼女の両親のことを知った。
彼女の昔の友達も、クラスメイトも、もちろん俺も、誰もその事実を知らなかった。
彼女は誰にもその事を話していなかった。
そこで俺は気づいた。
彼女のことを俺は何も知らないと。
花梨がどこに住んでいるのか、花梨は学生時代何が楽しかったのか?好きな食べ物や、嫌いな食べ物。趣味についても、なんでこの会社に入ったのかも、何も知らなかった。
悔しかった。不甲斐なかった。情けなかった。
いつも凛としていて強かった彼女は本当は酷く儚いものでは無かったのか?
そんな疑問がぐるぐると頭の中を巡った。
泣いていると彼女の明るい笑顔が蘇る。
神様、彼女が少しでも楽しんで人生を送れるように、偽物の笑顔なんて浮かべなくていいように、
――――――来世は幸せになれますように。
泣きながら、暗い部屋の中でそう、願った。
◆◇◆
「矢野宮!」
「なに〜?」
「何ぼーっとしてんだよ、矢野宮らしくねぇなぁ。」
訝しむクラスメイトに俺は笑いながら「ごめん、ごめん」と謝った。
「ったく、何でこんな男がモッテモテなんだか・・・。」
「モテてないよ。」
「バレンタインデーにクラスの女子全員+何十人からチョコもらう男子のどこがモテてないだよっ!嫌味かっ!
お前はどこぞの乙女ゲームの攻略対象かってーの。」
「何そのたとえ」
俺がクスリと笑うとクラスメイトは顔を真っ赤にさせて「お前のそういうところ。女子の前で不用意に笑うんじゃねぇぞ。」と答えにならない答えをもらった。
なんで笑っちゃダメなんだ?
分からなくてついコテンと首を傾げると「それもだよッ!」と怒られた。
「まったく、あざといのに犬属性で・・・ゴニョゴニョ」
ちょっと何言ってるかわからないので無視した。
「で?なんか用事あったの?」
そう言えば、彼から俺に声をかけたんだ。
そう思った俺はクラスメイトに声をかける。
「あ、そうだ!さっき教室の近くにいた女子なんだけどさ、超美人なわけ!!もう美人なんて言葉じゃ済まないくらい美人!!名前聞いたらその人が噂の鉄の女、北条 すみれらしい。お前も見てみろよー!マジで美女だぜ?」
無理やり腕を引っ張られて俺は廊下に出た。
と、髪の長い綺麗な女子と目があった。
とんでもなく美人なのでおそらく彼女のことだろう。
彼女は呆気に取られたようにポツリと「本当にいた、あの3人以外の攻略対象・・・」と呟いたのが聞こえた気がしなくもなくもなかった。
俺は北条さんを見た瞬間、彼女だ、と強く思った。
心臓がきゅっとする。俺の、探していた人だ。間違いない。
ほんの数秒だけ見つめあった俺達は彼女があっさり目をそらしたことでそれぞれの教室へと戻った。
なぜだかよく分からないが確実なことは一つ。
俺は彼女が困っていたら、いや困っていなくても俺に出来るのなら助けていきたいと思った。
彼に前世の記憶はありません。




