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とある少年達の日常  作者: 蝶佐崎
第一章:4月
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第5話



 |俺(彰)は公園で砂場にしゃがみこんで、未だ冷めない興奮とおぞけを言葉にしていた。隣に晶子、暁もいる。

 しばらく経って、空野先生が走って現れた。


「彰、暁、晶子! 大丈夫か!?」

「亮!?」


 何故か、先生の背中から亮が現れた。


「空野先生に背負ってもらったんだぜ」


 にっと笑った亮はそれで、と表情を引き締めた。


「変なものを見たんだって?」


 確かに、変なものではあった。でも俺達が騒いでいるのは変なものだからじゃなくて、


「塔のなかに人間がいる、とでも思っているのか?」


 空野先生がそばの自動販売機でコーヒーを買いながら、俺の考えを一発で当てた。


「安心しろ。あの谷は死んでも底には着かん。よって有り得んからな」


 まるで試したことがあるような口振りだ。対抗するように、暁が彼を睨んだ。


「じゃあ、僕が見た着物の袖や、こいつらが見た手はどう説明するんですか!?」


 暁の実家は寺だ。そのせいなのだろうか、暁にはよく幽霊が見える。暁は着物が幽霊の見せる何かだと考えているんだろう。寺の長老である祖父には反抗するけど、その反面、その場に居る幽霊を放ってはおかない。

 空野先生は暁をじっと見て、居心地が悪そうに目を夕焼けの方向に逸らした。


「……あの塔だが、文献には江戸時代に囚人らによって建てられたと記されている。塔の使用目的は、その囚人らの収監場所だ。建てられた当時は谷でも何でもなかったが、数年後大地震であの一帯のみが地盤沈下のように凹んだ。塔だけは崩れずに落ちたが……」

「じゃあ、収監されていた囚人達は」

「全員お陀仏だ」


 暁が泣きそうな顔をして黙り込む。それを見て気遣わしげな様子を見せた先生は、彼の頭に手を乗せた。


「安心しろ。仏は皆、綾瀬、お前の祖先が送った」

「じゃあ大丈夫ですね」


 コロッと暁が笑みを見せる。呆れた空野先生は表情を改め、だが、と口を開いた。


「死体は塔の中に放置されたまま、火葬されることも埋葬されることもなく、在る」


 暁の笑みが凍り付くように、俺の背筋に何かが這い上った。

 そのとき、


「…………何だ?」


 気付く。公園の周りに黒い服の男達が立っている。皆一様に、黒光りする何か……形はまさに銃のようなそれを俺達に向けている。

 小さく声を上げてしまったけど、幸い(・・)誰も気付かなかった。

 男の一人が俺達に何かを呼び掛ける。でも、言語が分からない。俺達四人で、唯一分かりそうな空野先生を見ると、苦り切った顔をしていた。


「……せめて英語話せ。訳が分からん」

「分からないの!?」

「当たり前だ俺は日本人だ!」

「先生アンタ教師よね!?」

「それぐらい習えってか!? ふざけるな!! 何故外国語教師でもない俺が、教員採用に必要な英語以外の言語を習わねばならん!?」


 ちょっと逆ギレ気味の先生に押される。まぁ、今まで元気が無くて黙ってた晶子が元気になったからいいか。


「……それで?」


 亮が呆れたように聞く。


「どうすんだよ、この状況?」


 空野先生がむう、と口を尖らせた。


「あまり心臓によろしくない方法ならあるが……失敗したら全員お陀仏だぞ?」

「「「「是非それは回避する方向で」」」」


 四人でハモった。

 先生がまた頭を悩ませたそのとき。


「あー………………ごめんなさい」


 いつの間にか人が滑り台の手すり腰かけていた。


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