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第3話
下校中の俺達もちょうど揺れを体験していた。かなり強い揺れだ。
揺れに我慢できず、晶子が座った。
「今、かなり揺れて……」
「地震にしては、奇妙な揺れでしたね」
本屋に寄ったところだ。今、鉄柵のそばにいる。しばらくじっと待っていても何も起きないのでまた歩き出した。
が、晶子が立ち止まった。
「……何か、聞こえない?」
男二人も止まり、聞く。
低い声。地を這うかのような、叫び声。怨念が籠るかのように。
オオオオ大オオオオおおおおooおおおおオオオオおおおOOオオオoおオオオオオおオオオオオオOおoおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!
背筋の毛がぞわりと逆立つ。嫌な汗が吹き出す。暁が辺りを見回し、呟く。
「誰もいない」
その時、|俺(彰)は見た。
鉄柵の向こう、谷に聳える塔の隙間から、手が不自然な角度で突き出ていた。
天に救いを求めるが如く。寝転がって手を出さなければいけない角度で。
俺の視線に気付いた晶子も見て、凍り付く。暁も、眼を見開く。
俺達の耳元で、誰かが囁いた。
「彼女ヲ、寄越セ」
誰からともなく、俺達は駆け出した。