表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強相棒(トカゲ)と極上丼で異世界無双〜世界を滅ぼすバケモノを巨大エビフライとして使ったら、神や魔王が賄い目当てで住み着いた〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/20

第一章 ルナイーツの配達員伝説

「拙者の浪漫砲と、関西弁の相棒トカゲでござる」

「闇に飲まれよ……カウント、スタートでござる!」

 誰もいない夕暮れの路上。拙者、佐須賀良樹(さすがよしき・20歳)は、見えないレバーを引き、存在しないセーフティを解除する『エア操作』にひたすら勤しんでいた。

 右肩に担いでいるのは、タローマン(一般向けからガテン系職人向けまで揃った超大型ホームセンター)のジャンクコーナーで安く買ったドワーフ製の『竜撃砲』。アンカー固定もセーフティ解除の物理レバーも一切付いていない、ただの無骨な筒である。

 だが、本人の気合とポーズで威力が変わるという、浪漫溢れる代物だ(と拙者は信じている)。

 前世の拙者は、日本の牛丼屋で深夜のワンオペ夜勤を続ける、しがない現代の奴隷アルバイトだった。過労死して気付けば、このアナスタシア世界へと転生していたのだ。

 神様に望んだのは、ただひとつ。「争いのない、静かなスローライフ」。

 その結果、与えられたユニークスキルは『丼マスター』。善行ポイント(DP)を貯めれば、地球のあらゆる最高級の丼物を召喚できるという、完全に生活特化・戦闘力ゼロの能力だった。

 現在はルナミス帝国の誇る巨大デリバリーサービス『ルナ・イーツ』の専属配達員として、魔導車(という名の電動アシスト自転車)を漕いで日銭を稼ぐ平和な日々を送っている。

 とはいえ、ここは剣と魔法の異世界。いつ、どこで柄の悪い輩に絡まれるか分からない。根が極度の小心者である拙者は、こうして夕暮れの辺境で中二病全開の『一撃必殺浪漫砲(という設定のポーズ)』の練習をして、チンピラに対する威嚇の術を磨いているというわけだ。

「ふぅ……今日のエア操作は完璧でござるな。隙がない。さて、帰る前にひと仕事するでござる」

 拙者は竜撃砲を背負い直すと、魔導車のカゴからホウキと塵取りを取り出し、道端の側溝に溜まった泥や落ち葉を掃き始めた。

 この『丼マスター』の能力は、善行を積むことでシステムが起動する。皿洗いで1ポイント、溝掃除で50ポイント、親孝行なら100ポイントといった具合だ。

『ピコンッ。地域への貢献(溝掃除)により、50DPを獲得しました』

 脳内に響く無機質なシステム音。よしよし、これで今夜の夕食を召喚するポイントが貯まった。

「お疲れさん。ワテも今日の配達終わったで。あー、腹減ったわ」

 背後から、コテコテの関西弁が降ってきた。

 振り向くと、そこにはルナ・イーツの四角い専用配達バッグを背負い、首に魔導通信石をぶら下げた一匹のトカゲ……いや、二本足で立つジオ・リザードがいた。

「おお、ロード氏。今日のノルマは達成できたでござるか?」

「ぼちぼちやな。昼飯は配達先の裏手で拾った廃棄弁当を、ちょちょいと巻き戻し魔法で新鮮な状態にして食うたから、食費は浮いたわ。ホンマ、覇権争いとか疲れるだけやし、こういう堅実な生活が一番やで。支配したその後とか、どないすんねん。寒っ! きっしょいわ!」

 首を振りながら愚痴る彼こそが、拙者の最高の相棒にしてペットの『ロード氏』である。

 拾った時はただの大きなトカゲだと思っていたが、火を吐いたり、ちょっとした時間を巻き戻したり早送りしたりできる『賢竜種』という珍しい生き物らしい。過去に何かあったのか、やたらと達観したおっさんのような喋り方をするが、ニーチェの『ツァラトゥストラはこう語った』を愛読する、知的な良い奴だ。

「なら、今日は拙者が夕飯を奢るでござる。さぁ、拠点に帰る……ん?」

 家路につこうと魔導車を押した拙者の足が、ピタリと止まる。

 目の前の街道を、小山のように巨大な岩――いや、岩山そのものが崩落してきたかのように、完全に道を塞いでいたのだ。

 周囲は薄暗く、不気味な静寂が漂っている。

(や、ヤバいヤバいヤバい! 絶対この岩の裏に、獲物を待ち伏せしてる柄の悪い野盗とかが隠れてるパターンでござるよ! どうする!? 回れ右して逃げるか!?)

 内心ガクブルしながらも、ロード氏の手前、ダサい姿は見せられない。

 拙者は震える膝を必死に抑え込み、背中の竜撃砲を再び構えた。

「ふっ……どうやら、拙者の浪漫砲が火を噴く時が来たようでござるな」

「……おん? ヨシキ、またそれやるんか?」

「セーフティ解除……リミッター全開放……ターゲット・ロックオン……!!」

 拙者は目をギュッと固く閉じ、存在しないダイヤルを回す『エア操作』に全神経を集中させた。3分間のチャージ時間が、浪漫砲の威力を高めるのだ(という脳内設定)。

 ――その間。ロード氏は呆れたようにため息をついていた。

「しゃーないな。あんなデカい岩、自転車で越えられへんし。ちょっと邪魔やから、サクッとどかしたるわ」

 ロード氏は軽く咳払いをした。

 次の瞬間、彼の小さな口から、光り輝く『極小の火炎球』がポンッと吐き出された。

 それは岩山に触れた瞬間、音もなく膨張し、空間そのものを歪めるような凄まじい熱量と閃光を放った。本来ならば大陸の地形すら変える【水爆級のブレス】。それをロード氏が巧みな時間操作で岩の内部だけに極限圧縮し、風化時間を一気に早め、文字通り『一瞬でチリ一つ残さず消滅』させたのである。

 空気が微かに揺れただけで、爆音すら鳴らない、神業のような力の行使だった。

「よしよし、これで通れるな」

「……充填率、120パーセント! いざ、ファイアァァァァッ!!」

 カッ! と目を開き、拙者は力強く叫んだ。

 するとどうだろう。さっきまで道を塞いでいた巨大な岩山が、跡形もなく消え去っているではないか。

「ふっ……今日の浪漫砲は、恐ろしいほどキレが良いでござるな」

「せやな。ヨシキのエア操作、今日もキレッキレやったで」

「相棒に褒められると照れるでござる。さぁ、脅威も消えたことだし、ご飯にするでござるよ!」

 拙者は意気揚々とシステムを開き、本日の労働と溝掃除で貯まったポイントを全投入した。

「『丼マスター』発動! 来たれ、究極の飯!」

 淡い光と共に現れたのは、お盆に乗った二つの特大どんぶり。

 本日のメニューは『特上・炭火焼き肉椎茸のワサビ醤油丼』だ。

「おおっ! ええ匂いすんなぁ!」

「肉の代用品どころか、本物の肉すら凌駕する肉椎茸の厚み……さぁ、冷めないうちに食べるでござる!」

 道端の倒木に腰掛け、拙者とロード氏はどんぶりを掻き込んだ。

 分厚くスライスされた肉椎茸は、炭火で香ばしく焼かれており、噛むと肉の暴力的な旨味とキノコの芳醇なダシが口いっぱいに弾ける。そこに、ツンと鼻を抜ける爽やかなワサビと、濃厚な醤油草の香りが絶妙なアクセントを加え、下に敷かれたホカホカの米麦草のご飯が無限に進む。

「美味い! 美味すぎるでござる!」

「アカン……この分厚い食感、たまらんなぁ……! ワサビの刺激で脳がシャキッとするわ。ヨシキ、お前ホンマに最高の飯炊き係やで。ワテ、もうお前の作る飯なしじゃ、生きていかれへん体になってしもたわ……」

 ロード氏は尻尾をパタパタと振りながら、恍惚とした表情でどんぶりに顔を突っ込んでいる。

 かつては世界を震え上がらせたであろう野生のトカゲが、すっかり餌付けされてデレデレになっている姿は、見ていてなんとも微笑ましい。これほど美味そうに食べてくれるなら、明日もルナ・イーツの配達と善行を頑張ろうという気になれる。

 拙者たちは大満足で腹をさすりながら、星空の下を拠点へと帰っていった。

            * * *

「報告します! 国境付近の『ガウェル岩山』が……丸ごと蒸発しました!!」

 深夜のルナミス帝国・国境警備隊本部に、血相を変えた伝令の絶叫が響き渡った。

 デスクでポポロ・コーヒーを飲んでいた警備隊長は、あまりの報告内容に口から黒い液体を盛大に噴き出した。

「な、なんだと!? 岩山が蒸発しただと!? 魔導兵器の暴発か、それとも大規模な地滑りか何かか!」

「い、いえ! 魔法観測班の報告によれば、極大の熱量と魔力反応、さらに『空間の位相ズレ(時間操作)』が同時に発生し……岩山そのものが、塵一つ残さず無に帰したとのことです!」

「時間操作に、極大のブレスだと……? 馬鹿な、そんな芸当ができる存在など、この世界には……」

 隊長は青ざめた顔で、壁に掛けられた古文書の写しを見た。

 そこには、かつて古代大戦で世界を滅ぼしかけた絶望――時間を自在に操り、水爆級のブレスを一吹きで放つ、突然変異の『始祖竜クロノ』の姿が描かれている。

「ま、まさか……神話の怪物が目覚めたというのか……!? 急ぎ、マルクス皇帝陛下に急報を入れろ! 非常事態宣言だ!!」

 ルナミス帝国の中枢が、得体の知れない強大な脅威の出現に、恐怖のどん底に叩き落とされた瞬間であった。

            * * *

 翌朝。

 ルナキン(24時間ファミレス)のふかふかなソファ席で、いつもの朝食Aセットを食べていた拙者は、テーブルに置かれた『ルナミス新聞』の一面を見て首を傾げた。

『特報! 国境の岩山が蒸発! 神話の怪物の仕業か!?』

「へぇ、一晩で山が消えるとは。この世界の土木工事は、随分とダイナミックでござるな」

「せやな。世の中、物騒なこっちゃ」

「まぁ、我ら小市民には関係のない話でござる。おっと、もうこんな時間か。ロード氏、今日もルナ・イーツの配達に行くでござるよ!」

お読みいただきありがとうございます!


評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ