ep 35
【いざ、デュフランへ!】
アルトゥンの南門をくぐり、リューネ、ラビィ、ドラゴ、そして依頼主のワカバと積荷を載せた荷車の一行は、デュフランへと続く街道を歩き始めた。荷車は頑丈だが馬がおらず、主にドラゴがその竜人族の怪力で押し引きし、リューネとラビィが補助する形で進んでいく。
街道の両側には緑豊かな草原が広がり、遠くには森や山々が見える。天気は良く、旅の始まりとしては上々だ。しかし、三人のガーディアンの表情に油断はない。ワカバと貴重な積荷を守るという責任が、彼らの肩に重くのしかかっている。
「モンスターの脅威は、私たちが身をもって知っている。ゴブリンやワームだけじゃない、ブルホーンのような強力な魔物や、リザード族のような知性を持った敵もいる。油断は禁物よ」
リューネは、改めて気を引き締め直し、剣の柄を握る手に力を込めた。
「ああ! モンスターは強いダゴ! 特に群れで来るとヤバいダゴ! 油断したら一瞬でやられる!」
ドラゴも、以前のブルホーン襲撃でのギルドの惨状を思い出したのか、真剣な表情で頷く。
「了解! ボクが先行して警戒にあたるね!」
ラビィは、パーティーの目となり耳となるべく、一行の少し前方を、軽やかな足取りで進んでいく。時折立ち止まっては、自慢のウサミミを様々な方向へ向け、神経を集中させて周囲の音や気配を探っている。
「……よし、今のところ異常なし! 安全確認! このまま進むよ!」
ラビィの合図を受け、一行は再び歩き出す。リューネは荷車のすぐそばでワカバを警護し、ドラゴは力強く荷車を押し続ける。
【休憩タイム】
太陽が中天に差し掛かる頃、ラビィが安全な開けた場所を見つけ、一行はしばしの休憩を取ることにした。ドラゴが荷車を止め、額の汗を拭う。
「ふぅ、少し休憩しましょう。皆さん、お疲れでしょう? 特にドラゴさん、荷車をありがとうございます」
ワカバは、水筒を取り出しながら、労うように三人に笑顔で話しかけた。道中、彼女は不安な様子を見せることなく、むしろ明るく振る舞おうとしているように見えた。
「ありがとうございます、ワカバさん。では、少し休憩させていただきます」
リューネは礼儀正しく答え、周囲の警戒を怠らないようにしながら腰を下ろした。
「ぷはーっ! 喉渇いたダゴ!」
ドラゴは巨大な水筒をごくごくと飲み干し、持ってきた干し肉を大きな口で頬張り始めた。
「ボクも、携帯食を食べるね。ニンジンバーが入ってるといいなー」
ラビィはリュックから、ギルド支給の少し味気ない携帯食を取り出し、もそもそと食べ始めた。
リューネも、携帯用のパンを手に取り、軽く食事を済ませる。和やかだが、どこか緊張感の漂う休憩時間だった。
【ゴブリン出現!】
短い休憩を終え、一行が再び歩き始めた、その矢先だった。
先行していたラビィが、血相を変えて駆け戻ってきた!
「リューネ! ドラゴくん! 大変! ゴブリンだよ!」
ラビィの緊迫した声に、リューネとドラゴは即座に臨戦態勢を取る。ワカバも息を飲み、荷車の陰に身を隠した。
「数は!?」リューネは冷静に尋ねる。
「5体! すぐそこの茂みから! こっちに向かって来てる!」
(5体なら、今の私たちなら!)
リューネは即座に判断を下し、指示を出す。
「ドラゴはワカバさんと荷車の護衛を最優先! 絶対に近づけさせないで! 私とラビィで迎撃する!」
「了解!」ラビィは素早く弓を構える。
「任せるダゴ! ワカバさんはオレが守る!」ドラゴは両手斧を構え、荷車の前に立ちはだかる。
指示と同時に、茂みから棍棒や錆びたナイフを振り回し、奇声を上げる5匹のゴブリンが飛び出してきた!
「させない!」
リューネはゴブリンたちの前に立ちはだかり、剣と盾を構えた!
【ゴブリンとの戦い】
ゴブリンたちは、小柄ながらも数は5匹。油断すれば、すぐに囲まれてしまう。リューネは冷静に相手の動きを見極め、盾で巧みに攻撃を受け流し、剣で的確に反撃していく。数ヶ月の訓練で身につけた剣盾術は、確実に彼女の血肉となっていた。
ヒュン! ヒュン!
後方からは、ラビィの援護射撃がゴブリンたちを襲う! 彼女の矢は、ゴブリンたちの足元を狙って動きを止めたり、武器を持つ手を狙って攻撃を妨害したりと、リューネを効果的にサポートしていた。
「ギャウッ!」
「チクショウ!」
連携の取れたリューネとラビィの攻撃に、ゴブリンたちは徐々に数を減らしていく。しかし、追い詰められたゴブリンも必死だ。
一匹のゴブリンが、ラビィの矢をかいくぐり、雄叫びを上げてリューネに飛びかかってきた!
「危ない!」
リューネは、迫る棍棒を盾で受け止め、衝撃でわずかに体勢を崩すが、即座に足元のゴブリンを力強く蹴り飛ばした!
「うぐっ!?」
体勢を崩して無防備になったゴブリンの胸に、リューネは渾身の突きを叩き込む!
「これで……終わり!」
ゴブリンは短い悲鳴を上げ、地面に倒れて動かなくなった。
残ったゴブリンたちも、リューネとラビィの勢いに完全に押され、次々と討伐されていった。
【戦闘終了】
辺りに静寂が戻る。リューネは剣についた血を払い、鞘に納めると、周囲を素早く見渡し、他の敵がいないことを確認した。
「よし……これで全部みたいだね」
彼女は仲間たちに声をかける。
「ラビィ、ドラゴ、怪我はない?」
「大丈夫だよ! ちょっとびっくりしたけど!」ラビィが弓を下ろして答える。
「オレも大丈夫ダゴ! こっちは誰も近づけさせなかったダゴ!」ドラゴも胸を張る。
リューネは荷車の陰から顔を出したワカバに向き直った。
「ワカバさん、ご無事ですか?」
「は、はい……おかげさまで……」ワカバはまだ少し顔が青いものの、ほっとした表情で頷いた。「ありがとうございます……。皆さんがいてくださらなかったら、どうなっていたことか……」
彼女は深々と頭を下げた。
「どういたしまして」リューネは笑顔で答えた。「私たちガーディアンは、依頼主の方と荷物を守るのが仕事ですから。まだ道中は長いです。気を引き締めていきましょう」
こうして、リューネたち「戦乙女・ローズ」は、最初の襲撃を無事に退け、ワカバ一行の護衛任務を続行することになった。しかし、これはまだ旅の始まりに過ぎない。この先、どのような困難が待ち受けているのだろうか? 三人は、気を引き締め直し、再びデュフランへの道を歩き始めた。




