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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
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【81】異世界で淡麗生と柿の種


どこにでもいけるドアを通って、俺たちは地下3階の宝物庫から1階のメイド部屋まで一気に戻った。



もちろん、先程の戦闘装備のままなので、フルアーマー姿で武器を携帯した川口が現れた時は、さすがのアペルも少し怯んでいた。


だが、さすがはプロ。

我々が戦闘装備を着込んだだけだとわかると、すぐに持ち直して、


「皆様、もう結構なお時間ですので、お風呂の準備をいたしましょうか?」


と、告げてきた。



腕時計を見ると、0時をまわってる。

風呂入って、ちょっと酒飲んでスマホでなんか見て寝ようかな、って時間帯だ。


「じゃあ用意してもらおうかな、アペル。他の2つの部屋も。」

「承知いたしました。」




風呂待ちの間、俺の部屋でイブとスキルについて少し話す。

ユーリも一緒だ。


川口と福田は、お湯を入れるところが見たいと言うので与えられたツインの宿泊室へ。

先に彼らの部屋から風呂を用意してもらうよう、アペルには伝えてある。


─あいつら、自分でフルアーマーと革のジャンプスーツ、脱げるかな?ま、いっか…




俺とイブ、ユーリは、窓際のソファに座って話し始めた。


窓を開けてあるので、天井の扇風機で夜風が流れ、気持ち良い涼しさだ。



「俺のスキル─両親は知ってたんでしょうか」

「どうだろうな。」


イブはソファにゆったりと体を沈め、腕を組んで話した。


「他人のスキルを見る事はできない。ただ勇者と聖女は、君に戦闘スキルも魔法スキルもないということを知っていたのではないかと思う。」

「どうやって知ったんでしょうか…」

「私は、神に告げられたのではないかと考えている。」

「神に──」



─俺が生まれた時、勇者にも魔法使いにもなれない「才能のない子」だと、神は判断したのかな…?


そうだよな、俺がもし勇者みたいに戦えるっていうなら、わざわざ50歳の親を転生させなくても、俺を召喚転移させればいいんだもんな。


「俺にあるのは、両替と袋で金を増やすスキルだけ…か。」


俺はちょっと、ションボリしてしまった。


「そう暗い目をするな。」


イブが頭をポンポンしてくれた。

くっそ、相変わらず美女なのに行動がイケメンのそれだな。


「この世界は生まれた時の才能が全てだ。魔力に恵まれているか、戦闘に優れたスキルを持っているか、貴族や王家の生まれか─なにもない者は、なにも守られず、貧しく死んでいく。」


俺の頭に、ユーリを捕まえようとしてきた奴隷商人の手下の少年達の姿が浮かんだ。

あの子達は、学び盛り、働き盛りの若者なのに、食べるものもなく痩せ細り、親方に怯えていた。


あれが、なにもない者─


「─勇者と聖女は、戦いに巻き込んでも君には苦難を強いることになるだけだと悟り、普通の日本人として育てることを選んだのではないか?」



そうか……そうだよね。


異世界で育ててくれれば…とか思ったけど、戦う才能がなかったら勇者の子供って辛いだけだもんな。

拐われて人質になったりしたら、両親にとって「弱点」にもなりかねない。


「…でも結局、異世界に巻き込まれちゃいましたね。俺。」

「まあ、聖女が能力を取り戻し、覚醒した勇者を見つけるまでは、最低限守ってやらないとな。神もそう判断したのだろう。」

「ユーリのためだし頑張るけど…俺なんかにできるのかな…」


イブは、励ますように俺の肩をポンと叩いた。


「先程も少し話したが、商人のラナンはお前と同じような金銭系のスキルだったからな?60歳は過ぎているというのに、数々の魔物と戦い抜いたんだぞ。ポケットの道具で。」



老いたドラ、もとい、商人・ラナン。


そうかあ、おじいちゃんでも頑張れるんなら、俺も覚悟を決めてシッカリしなきゃな…。


俺は、そっと下腹のポケットを触った。



「ラナンさんは──彼は今、どうしてるんですか?」

「彼はもともと家族とともに細々と商いをしていたから、そこに戻ると言っていたのだが…」


そうか、ラナンじいちゃんには家庭があったのか。


魔物軍を討伐した宝の分け前で、お店を大きくしたりしてるのかもしれない。



「行けそうだったら、訪ねていきたいものだがな。ラナンの店へ。」

「遠いんですか?」

「遠いな。船で相当旅をしなければならない。」



船か。


異世界での船旅─馬車の旅以上にアウトだな。

NG出させていただきます。こわすぎ。


ラノベに出てくる転移した人たちはスゲー勇気あると思う。

だって、元世界の外国で、電車や乗合バスに乗るのだってなかなかの勇気いるぜ?!


あ、でも父さんと母さんみたいに、もう戻れないかも的な転移させられたら、諦めて異世界の常識に乗るしかないんだろうな…。




その時、アペルが部屋に入ってくるなり


「お風呂の準備が整いました。」


と告げてきた。



どうやら、イブとユーリの部屋の風呂にもお湯を入れてくれたようだ。


「では私達も部屋に行くか、聖女よ。」


イブがそう言って立ち上がると、ユーリがおずおずと、


「あの…私、まだろくに回復もできないし、聖女だなんて恐れ多いので、ユーリでいいです。」


と言ってきた。


イブはフフッと笑うと、ユーリの背中をポンと軽く押した。


「わかった、ユーリ。しかしその内、我々全員が頼りにするくらい、君の魔力は強くなるだろうがな。」

「は…はい!」


ユーリは、パッと花の咲いたような笑顔になり、イブの後をついて部屋から出ていった。




パタンと閉まるドアを見ながら、俺は腕を組んだ。


「イブ、本当に女なのかなあ…?」


变化の指輪で今の姿になったし、親の手記にも今の姿で書かれてるけど、变化できるって言うならあの姿が本当なのかどうか、結局わからない。


もし中の人が男だったら、どうしよう?


男は男同士、女は女同士、みたいな感じで部屋分けして、ユーリと同室にしちゃったけど──



「いや、女だからって別になにもないとは限らないぞ、よく考えたら。」



しかしそれを考え始めるときりがないというか、想像をこえたピリオドの向こう側にある世界のような気がするので……


俺は考えるのをやめた。



「テレレレッテレー!淡麗生〜!」


腹のポケットの中から、恵比寿のマンションの冷蔵庫に入ってる缶ビールを取りだす。

もちろん声はわさびチックな感じだ。

誰も見てないけど。



こんな時はビール飲んで風呂入って、寝よう。


そうだ、Switchも取り出そう。

オフラインゲームなら遊べるはずだ。


ツマミは戸棚の中に入ってる、亀田の柿の種だ。


「あーっ、便利!もしかしてすげー便利なんじゃね?異次元ポケット。」



この、部屋を持ち歩ける感覚。


もしかして、最高なモノ手に入ったんじゃないですか…?


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