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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
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【79】異世界でのジョブが見えた


「す、すぐ戻します!」


俺は、王家の宝物庫に戻れ!と念じながらスモールサイズになるライトを異次元ポケットの中に突っ込んだ。


すぐにスッと手元から離れて消えた。

ちゃんと戻っているのか不安になる。


「た、ためしてみよう…筋肉増強のアンクレット!」


筋肉増強のアンクレットと念じてポケットから取り出してみたら、手の中にパッと現れた。


「ぐわぁっ!重い!」


川口は急に元の普通体型に戻ったらしく、調子に乗って着込んでみた鋼の全身鎧が重くて動けなくなってしまったようだ。



元のガラスケースに戻れ!と念じてポケットに突っ込むと、ちゃんと室内の展示ケースにアンクレットが現れた。


「ふーっ、よかった…ちゃんと念じれば戻るみたいだ。」

「ああ、このぶんならきっと、先程のライトも何食わぬ顔をして宝物庫に戻っている事だろう。」


イブがフウッと息を吐いて、言った。

安心したようだ。


「当てずっぽうに引っ張り出してしまうのは、控えたほうがいいかもしれないな。それぞれの宝物庫を管理してる者の所に訪れて説明できれば、勇者の息子だとわかってもらえるだろうけど…」


そうですよね、何も言わずに持ち出したら窃盗同然ですもんね。


「簡単に訪れることができない場所─例えば遠くの国の王城とか─に保管されているものの場合、大騒ぎになる可能性がある。」

「そうですね…今の一連で、理解できました。」

「まずは、この宝物庫から持ち出すものを決めようじゃないか。ここなら、支配人も今の出来事を見ているから安心だ。」


白髪の支配人の方を見ると、コクリと頷いてくれた。


「川口くんと福田くんも、聖女のお供として認定されてしまっているようだから、いざという時の装備を決めた方がいい。」


お供として認められた者しか異世界には同行できないから、こうして来れてるってのはユーリに必要とされてるって事だよね、きっと。


「ごめんなさい、二人共…迷惑じゃなかった?」


ユーリが少しシュンとして、川口と福田に問いかけた。


「だ〜いじょ〜ぶだよ〜!ユーリちゃん。オレたち、むしろ好きこのんでついてきたようなつもりでいたもん!ね、川口!」

「ウム、そうだ…お供をするぞ。し、しかし…」


川口はフルフェイスの兜の中で、モゴモゴ苦しそうな声を出した。


「誰か、さっきのアンクレットをどうにかしておれの足首につけてくれないか…!身動きがとれん…」


ああ、そうだった。


イブが一時的に力が増える魔法をかけてくれたので、なんとか彼は鎧を脱ぐ事ができた。


そして、ガラスケースの中に戻ってしまった筋肉増強のアンクレットを取り出し、再び着けた。

ムクムクとドラゴンボール化する川口の体。


「あれ?力を増やしてもらうだけでも重いもの持てたね、さっき。力の指輪とか、そういうアイテムでもいいんじゃないの?」

「馬鹿言え、外見もマッチョになれるならなる方がいいに決まっているだろう。」


パンパンにパンプアップした胸を叩いて、川口はニコニコ顔だ。


そうか、ならまあいっか。


「じゃあ二人は筋肉増強させた上で、装備を決めるわけだよね?何にする?もちろん、使う時だけポケットから取り出すので、普段は持ち歩かなくていいよ。」


俺は、下腹をポン!と叩いた。


「そうか、じゃあおれは片手剣と盾だな。現実的に考えると、盾無しは怖い。防御力を増やす指輪なんかも欲しいぞ。」


わかった、とイブが返事をし、ガラスケースの中から物色しはじめた。


「オレはねぇ、鞭使ってみたいかなあ〜。あと、俊敏性は少しある方なんで、ヒョイヒョイ逃げれる装備かなあ〜」


福田はバスケ部だったんだよな、高校の時。

素早さの指輪とかあったら、物凄く機敏になりそうだな。


「私は──」


ユーリが何か思い出しながら、ゆっくり喋りだした。


「私は『治癒師の杖』がほしいです。」


イブが、ほう…と声を出した。


「よく覚えていたな。魔力を使わなくとも回復魔法の効果を出せる杖。まだレベルの低い君には、助けになることだろう。─渚よ」


急に呼ばれた俺はビックリした。


「はっ、はい?!」

「ポケットから『治癒師の杖』を出してはくれないか。安心するといい、ソルベリーの私の宝物庫にあるものだ。」

「はい!」


俺は、今度は特にわさびチックな声を出さずに、っていうか無言で頭にその単語を思い浮かべただけで、ポケットの中から取り出した。


なんだ、声出さなくっても構わなかったのか、これ。



俺は、ポケットから出てきた1メートル程の木製の杖を、ユーリに手渡しながら、聞いてみた。


「ユーリってさ、スキルで治療してくれたじゃん。あれだけじゃ足りないの?」

「あれは…生活魔法と同じ規模というか、火傷や擦り傷、軽い切り傷、捻挫、二日酔いくらいのごく軽症なものなら治せますが、大怪我となると治せません。」

「そうだったんだ…。」

「でもこれがあれば、戦いで受けたそこそこの傷や、病気も治せます…!私の魔力が上がったらまた違うとは思うんですが─」


イブは、コクリと頷いた。


「そうだな、魔力が上がればスキルパワーも上がるだろうし、なにより回復魔法が使えるようになる。これ無しでは、強い魔物との戦闘は無理だ。」


やっぱそうかー。

ヒーラーがいないと、小物としか戦えないもんなんだな。


「まあ私の場合は回復魔法はないが、やられる前に殺る、といった形だがな。」


魔導師は後衛。

遠隔攻撃に強いもんなんだな、やっぱ。


「川口くんのような戦闘スタイルの者と組むと、非常に丁度いい。」



ふと後ろを振り返ると、いつの間にかイブに渡してもらっていた大きめの盾を背中に背負い、さっきより重苦しくない白金色の金属でできたフルアーマーの鎧を着た、川口が立っていた。

手には、研ぎ澄まされた片手剣を持っている。


─なるほど、騎士ナイトのスタイルとの相性がいいのか。


一方、福田は全身黒いなめし革でできた、ボンテージみたいなジャンプスーツに身を包まれている。

ちょっとフェティッシュなイメージだ。

頭部は帽子や兜ではなく、額部分に輪っかをつけている。

ファンタジーの衣装で出てくる、サークレットというやつだろうか?

手には、トゲトゲの沢山ついた鞭を持っている。



あれ?

俺は何を身につければいいんだろう。



まさか、ポケットだけ、なんてことないよな…?

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