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●「学院の禁忌」

 各地の魔法学院には、魔法使いしか管理ができないような、魔法の禁忌がいくつも保管されている。

 厳重に封印されてはいるものの、賢い生徒の中には監視をかいくぐり、試験や悪だくみに利用する者もいるようだ。

 

 しかし学院とて、長年の歴史と、数多くの生徒を抱えた経験がある。

 生徒がこっそりと持ち出すことも、ある程度は想定済みだ。

 力が弱く、生徒が喜びそうな品であれば、腕試しにちょうどいい試練を設置した部屋など、あえて手の届きやすい場所に保管する。

 そうして最も危険な禁忌のみを人目から遠ざけ、厳重に守ることで、学院と生徒とが互いに守られているのである。


 だが、数年に一度くらいは、学院の想定を超える生徒がいるものだ。

 そのような人物が禁忌を望んだ時、学院の平穏は打ち破られるだろう。

 教授たちすら持て余し、封印するしかないものが、才あるだけの未熟者に扱い切れるはずもないのだから。



「でもね……三人じゃ駄目なのよ、アンバー。私一人じゃなきゃ……駄目なの」

 ――光の魔法使い見習い、アルト



 北の魔法学院、ある魔法使い見習いたちの、卒業試験。

 その最中に、事件は起こった。


 とある生徒が試験中に禁忌を使用し、だが制御できず、魔法の暴走を起こして(いばら)の怪物を生み出した。

 その怪物は、降霊と炎、二人の魔法使い見習いによって倒され、学院が半壊する以上の大事には至らなかった。

 しかし、この事件は不可解な点が多く残されている。


 禁忌を用いた生徒は、そのようなものを使わずとも、試験を一位で突破できるほどの実力の持ち主だった。

 二人の見習いもまた、怪物との戦闘中に崩落した床から落ちた先、学院地下から脱出するまでの様子を語ることはなく。

 事件の大部分は謎に包まれたまま、幕を閉じた。


 事件の記録は、当時の状況からすると奇妙なほど厳重に秘匿(ひとく)され、学院でも高位の者のみが閲覧可能な場所に保管されている。

 当事者である生徒たちも(かたく)なに口を閉ざし、誰にも語ることなく卒業していった。

 学院の地下で起こったことも、そして、禁忌を使った理由も、知る者は数少ない。



「私は……失敗してしまいました」

「いいえ、失敗などではありません。貴方は確かに、星の一筋に触れたのです。さあ……共に参りましょう。星の導く道へ」

 ――光の魔法使いアルト、『星海』マリステラ・コール

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