16泊目
朝霧が包む村の中を俺達四人は歩いていた。年中暖かい気候といえど朝は冷える、吐く息が白い。先頭を歩くのはスミカ殿、黒い布地と銀色の金属が所々に装飾されたコートに黒いブーツを履き、黒い手袋をはめていた。焦げ茶色の髪も相まって黒一色に見える。
その後ろにサーシャが続いていた。スミカ殿とは真逆で白いコートに銀色のガントレット銀色のレギンスを着けており、背中には大きな白いケースを背負っているし髪の色が白いので真っ白だ。俺とケインズは昨日着ていた騎士団の甲冑だ、しっかり磨いておいた。
宿を出てかれこれ1時間くらいだろうか、街を出て死者の祭壇近くのトッド村と呼ばれる村の中を歩いているが何かおかしい。
「この村は廃村なのか? 人の気配がしないぞ......」
「確かに、夜が開けたばかりの時間ですが家に灯りがついていないですね」
するとサーシャがいきなり止まり俺とケインズが急停止したが俺はサーシャの白いケースに顔をぶつけてしまった。
「す、すまない」
「......止まって」
猫耳をピクピクとさせるサーシャに俺は何だと辺りを見回す、スミカ殿も止まり辺りを見回すと一件の家屋に視線を止めると右手を振るう、一瞬にして家屋が切り刻まれただの瓦礫の山となった。
「な、なんだと!?」
「なんてことをするんですか! 村人を殺す気ですか!?」
俺が驚いているとケインズが瓦礫の山に向かって走って行き瓦礫をどかし始めた、が。
「うっ!」
ケインズは口を押さえて動きを止めた。それを見て俺も瓦礫の山を登りケインズが瓦礫をどかしていた場所を見ると。
「なるほどな......」
「......もう人じゃ無い、諦める」
瓦礫の下敷きになっては居るがかろうじて原形を残していたそれは紫色の液体を垂れ流した肉塊と臓物の塊。
「ゾル病、肉塊病とも言います、感染すれば致死率はとても高いです。紫色の体液に触れないで下さいね、感染しますから」
「ッツ!」
ケインズが飛び退き瓦礫の山を下りて隣の家屋の壁に手をついて息を切らしていた。ゾル病、通称肉塊病は感染すると高熱を伴った全身の激痛が襲い約一日で全身が膨れあがり肉の塊のようになりそして弾ける。その時、飛び散った体液に触れただけで感染するため患者を隔離するのが常識だ。
「だが、ゾル病はアンデット系の魔物しか媒介しないはずの物だ、村一つを汚染できる数のアンデット系の魔物が居ればこの時点で襲ってくるはずだぞ?」
瓦礫の山から下りながら俺が言うとスミカ殿がサイドポーチから黄色い液体の入った小瓶を取り出しケインズに歩み寄った。
「ゾンビやグールだけがアンデット系の魔物じゃありません、例えば―――」
ブンッ! という音がなりサーシャの方を見ると白いケースで何かをはたき落としていた。ソレに顔を近づける。 コウモリ?
「例えばアンデットの血を吸ったコウモリもアンデットになります。そして病気を運ぶ、ケインズさんこれを飲んで下さい」
「は、はい......」
そうか、コウモリもアンデットになるのか、実に厄介だな。寝てる間に噛まれたらそのまま発病か。黄色い液体の入った小瓶を受け取ったケインズの顔を見ると少し赤らんで―――
「ケインズ! お前、体液に触れたのか!?」
「瓦礫を退かしたときにガントレットの隙間から......」
「馬鹿者が!」
俺は怒りと動揺で震える右手を握りしめる、するとスミカ殿がケインズの紫が色に汚れた左手を手に取った。何をしているのだ!?
「『洗浄』『滅菌』」
紫色に汚れていたガントレットが新品同様になっった。
「「!?」」
上級洗礼魔法だと!? 宮廷神官が一日一回使えるかどうかの魔法を無詠唱だと? ケインズも驚いていたが小瓶を開けて中の液体を飲み干した。するとさっきまで赤らんでいた顔は一瞬で元に戻り荒かった息も直っていた。
「えっ? 身体の痛みと熱っぽさが消えた......?」
「......スミカ殿、何を飲ませたのだ?」
「......」
俺が質問すると何事も無かったかのように歩き出した。その後ろにサーシャが続く、俺は未だに驚いているケインズとの腕を掴んでついていく、何か不味いことを聞いたのか? 俺は。
サーシャに顔を近づけ耳打ちするように聞いた。
「サーシャ殿はアレが何か知っているのか?」
「......知ってる」
「教えてはくれぬか?」
「......言ったら驚くから言わない」
なんだそれは、これ以上驚くことがあるのか?
「......不治の病を治す薬なんてこの世に一つしか無い」
「不治の病を治す薬? エリキシルのことか?」
サーシャは首を横に振った。エリキシル以外に不治の病を治す薬なんてあるのか?
「......知らないなら知らない方がいい」
「団長、なんか身体が凄く軽いんですよ!」
はしゃぐケインズを横に俺は首を捻った。何か思い出しそうなんだがな。
うれしい感想がありました。ありがとうございます




