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「飲み会やるから来い」
突然、高校時代の同胞から呼び出しのメールがあった。どうしようかと迷ったが、久々に会う連中だったし、昔話に花を咲かせるのもいいものだと思ったので、おれは仕事が終わるとすぐ、飲み会をやっている居酒屋に向かった。
「おう、久しぶりだなぁ!」
座敷に座っている5人ばかしの連中におれはあいさつをする。それなりに飲んでいるらしく、数名の顔はすでに赤い。
「遅いぞ、おめえ」
一番赤い顔をした隆がおれに云う。若い頃は痩せ形だったが、最近になって中年太りが顕著になってきた。
「すまん、仕事が今、やっと終わったところなんだ」
内心、お前らが急に呼び出したんだろ、と思ったがそれはあえて云わないことにする。
「まあいいや、飲めよ」
隆が云って、周りの連中もおれにスペースを譲ってくれた。おれは、その場所に座りながら、
「すまん、おれ今日、車なんだわ。酒は飲めない」
と返した。
「何だよ、テメェ、車なんかで来んなよ!」
と難色を示されたが、これも当然、こいつらが急に呼び出したせいなのだ。おれは自動車出勤だ。だから、仕事場にいる時に連絡があれば、家に帰っている余裕もなく、車でここに来るしかないだろうが。おれだって、飲めるものなら飲みたいものなのに。
「悪い、この埋め合わせは必ずするから。今日はノンアルコールで頼む」
だが、ここは空気を読んで、おれが悪者になってやることにする。
「しゃーねーな……」
と、場はそれで収まった。
「――それにしても、こうやって集まるのも久しぶりだよな」
おれの隣に座っていた聡が云った。天パと黒縁の丸メガネがトレードマークの奴だ。
「そうだな。あの頃が懐かしいよな」
おれは聡にそう返した。すると今度は隆がぽつりと云った。
「あの頃は、透も一緒だったよな……」
ほんの一瞬、誰も喋らなくなった。しかし、それは本当に一瞬だけで、一同はしみじみとした口調で喋り始めた。
「そうだな、透もいたよな」
「今でも一緒だったらよかったのにな」
ふと聡がおれに云った。
「お前は見てるんだよな。透の最期を」
「ああ――」
とおれは答える。そうなのである。透はすでにこの世にはいない。おれにとっては、小学校から連れ添った一番の親友であった。そんな透は、高校のころにバイクで事故って死んでしまったのだ。
あの時のことは、今でも覚えている。細かなところまで、鮮明に――。




