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第三充話 甲斐性無しじゃねェんでな

誤字に非ずです。

大事なことなのでもう一度言います。

誤字に非ずな三充話です。

それではこの作品を読む時は部屋を明るくして、画面から約47.3cm位離れて読んで下さいね?

 始まりは俺の一言だった。

 そう、何気ないただの一言がこの状況を生み出したのだ。

 部屋には一本の木が色々なイルミネーション的なナニカで彩られ、部屋の天井はもこもこしたナニカをつり下げており、窓硝子には赤い帽子を被った少し太ったお爺さんをデフォルメしたものが貼ってある。

 そう、クリスマスだ。

 クリスマスは今年もやってくる、らしい。

 クリスマス用の飾り付けが施してある『俺の』部屋はなんというか目がちかちかしてしょうがない。

 クリスマスまであと15日もあるのにどうしてこうなった。

 いや、まァ楽しみではあるんだが。

 寧ろ楽しみすぎて遠足前日の夜の眠れない少年少女達……とまではいかなくともそこそこはワクワクしている。

 年甲斐もないということは俺自身理解はしているんだが、やはり楽しみではあるのだ。

 大嫌いな冬ではあるが、このイベントだけは昔からずっと大好きだった。

 冬で良い物と言えば、『クリスマス、ガ○使、紅白、正月』だろうと俺は思う。


 「で、楯無。テメェは此処でなにをしている?」


 【いやー、最近構って貰ってないから暇でしてねー】


 「……ン?昨日もお前を振ってたんだが」


 【いえ、コチラの話です】


 ……?

 まァ、コイツが可笑しいのは今に始まったコトじゃねェし気にしなくても大丈夫だな。

 そもそもコイツがまともであることが珍しいし。


 「あ、爺さんと話すか?」


 【いえ、結構です!!】


 「……お前、爺さんのこと怖がりすぎだろ」


 まァ、解らなくもねェけどな。

 俺も最初は爺さんが怖くて怖くてしょうがなかったしな。

 ……色々あったなァ。

 森の奥に置いて行かれて、強制一週間サバイバル生活をさせられたこともあったなァ。

 アメリカに置いて行かれて、強制一週間一万円生活もさせられたこと、あったなァ……。


 「……え、えと葵様」


 「ン?あァ、ユリアか。どった?」


 「いえ、今日の報告を……と思ってノックをしたら反応がなかったのでドアを開けてみると遠い目をした葵様が」


 「あァ、悪かった。ン、報告貰った。……そう言えばユリアはクリスマスどっかに誰かと行くのか?」

 

 「……ふふ、私がモテるとお思いになって?部下に笑われるほど魅力がないのですよ?……ふふふふ」


 ……う、うわ~。

 要らないところ掘り返してしまったどころか地雷踏み抜いたみてェだな……。

 こ、此処はフォローしておくか。


 「お前は魅力に溢れてるからな?髪も綺麗だし、肌も綺麗だしさ。大丈夫だって」


 「はうっ?!」


 【そんなことしてたらいつかレイナールさんやリアさんに背中から刺されますよ、きっと】


 楯無の言っている意味不明な言葉は右から左へ聞き流して置いて、だ。

 実際問題どうしてコイツがモテないのか解らないんだよなァ……。


 「楯無よ、どうしてだと思う?」


 【スルーしましたね。普段着とかじゃあないですかね?】


 「……うっせ。……そうだ。偶然俺は暇だし、服でも見に行くかァ?ま、ユリアも暇なら、だがなァ」


 「え、えぇ!?」


 「何をそんなに驚いてんだァ?別に良いよな?リアにレイナール」


 「気づいてるなら最初から声かけてよっ!!」


 「別に良いんじゃないかな?不倫とかそんなのじゃあ無いんだし」


 ……なんか言葉に刺を感じた気もしないでもないが、大丈夫か。

 何故かリアの視線がユリアの胸に……って、あァ、なるほどなァ。


 「リアはリアだろうが。それに言うほど小さくねェだろ」


 「……どうしたって気になるモンなんですぅ」


 どう反応していいのか本当に困るよな、うん。

 リアはリアで良いところがたくさんあるし、先ず胸小さくないしな。

 そこそこあるし、そこそこあるし。

 周りのヤツがとてつもない母性に溢れた物を持っているだけだからなァ。

 レイナールとか、ユリアとか、観察対象の巫女とか。


 「ま、行ってくるわ。留守番……は俺の分身にさせるか」


 「……!?旦那ってば、そんなことまで出来るようになったのっ!?」


 「俺の魔力を半分つぎ込んだ分身だから基本的には全てのモノに対応できる。対応できないとすれば、上位魔術は使えないって所位じゃあねェかな」


 割と何でも対応できる俺BちなみにBは分身のBだ。

 ま、俺が上位魔法を使わなければいけない相手なんて絆達位だからなァ……。


 「あ、一応絆にも連絡入れとくわ。……んじゃあ、行くぞ」


 「あ、はい」


 【私も行きますー!!】



 よ、漸くお目当てのものが見つかった。

 そう、りんごジュースだ。

 とは言え、値段がエグかった。

 なんで下級貴族の一生の間の給料に値する値段がするんだよ……と、思いつつそのりんごジュースを見てみた。

 すると、なんと言うことだろう。

 中には『不死鳥の涙』『竜王の血』『水精霊の雫』といった伝説レベルのものが含まれていたのだ。

 ……コレには流石の二人も声を揃えて『そんな馬鹿な』と言っていた。

 これだったらリンゴを買って自分で搾った方が早いんじゃあ無かろうか……。


 「と、言うわけでリンゴジュース(俺製)でいいかな?」


 「……うん。りんごじゅーすがのめたらそれでいいよ」


 「ゴメンな、お兄さんが甲斐性無しで」


 「……そんなことないよ。お兄さんはすごいよ。あんなふたりを連れてずっとたびをつづけていられるかいしょーがあるんだから。わたしだったらとちゅうで関係をかいしょーしちゃうよ」


 ……舌足らずで見てるくれだけなら可愛いのに言ってることがえげつないな。


 「んじゃあ、ちょっくら搾ってくるから待っててね」


 「……うん」


 さて、あの女の子の為にも頑張ってリンゴを搾りますかねぇ!……30個ほど。

 旅の途中で気づいたが、あの娘身体小さいのに物凄い量身体にはいるのだ。

 うん、どこぞの英霊か、と突っ込みたかったが解ってくれる人などここの世界にはいないわけで。

 なんというかモヤモヤ感が残ったな。

 こういうときはあのとげとげしたボールを投げまくり、投げ終わった後に『スッキリ』と言えばモヤモヤがスッキリするんだろうか……?

 なんて無駄なことを考えてる暇は無かったな。

 ……さぁ、リンゴ達よ。果汁の貯蔵は十分か?



 「こんなのはどうだ?」


 「わ、わたしに似合います?」


 ……そんなこんなでショッピング中だ。

 ユリアは割と外の世界つまり今の流行の服や、色んな情報に疎いみたいだ。

 商品を見て回ってるときのユリアの目の輝きようと言ったら比べる物がないほど光ってるからな。

 ま、俺としてはこんだけ喜んで貰えるなら連れ出してきて良かったと思える。


 【私にあう鞘はないかな~?】


 「ねェよ」


 ……コイツは割と外の世界つまり今のはやりの物に詳しいみたいだ。

 つか、日本刀にあう鞘が此処にあったら吃驚するっつゥの。


 【あ、あった】


 「あんのっ!?」


 【いえ、ユリアさんに似合う服があったんですよ!!】


 「……紛らわしいわッ!!」


 ……ふむ、ガチで似合いそうだな。

 赤いYシャツに白いミニスカートか。

 だが、今は冬だしなァ。


 「……お前コレ今の時期に着れるか?」


 「……?えぇ、着れますよ」


 「……!?寒くねェのか!?」


 「えぇ、あの服には温度調節機能がありまして、自分の周りの空気の温度を調整することが出来るんですよ」


 【でも、お高いんでしょう?】


 「いえ、今なら銀貨一枚分ですね」


 「なら買いだ。俺がテメェに奢ってやんよ」


 「そ、そんな、悪いですって!!」


 「こんな程度のコトも出来ない甲斐性無しじゃあねェからなァ、俺は」


 ……それにしても喜んでるなァ。

 なんというか、好きな片思いをしている男性に初めて貰ったプレゼント的な。

 ……ま、喜んで貰える分には良いことなんだがな。

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