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四十四話、檻

 レジスト。魔法対抗技術。眠りに誘う火は、彼女の魔法耐性との、競い合いになった。彼女は俺を止めようと、全力で抵抗する。俺も火に魔力を流し続ける。

 数秒が、数分にも感じられるような、時間の流れの中、抵抗に成功された。

「ちっ……」

 俺は舌打ちをする。新たな魔力を練ろうとするが、彼女が迫りくる。

 右手には剣を持ち、心には意志を持ち、左手は空を掴み、足でこちらに駆ける。右手が後ろに引かれ、剣をこちらに振るおうとする。俺も先程みたいに打たれる気はないので、余裕を持って回避の準備動作に入る。それと同時に、腰から剣を抜く。剣には、まだ緋色の光が宿っていない。が、宿らせたら彼女に危害を与えるだけだ。剣は防ぐ為に使う。

 彼女の剣がこちらに振るわれる。余裕を持って回避し、詠唱を開始する。向こうはまだこちらの戦闘に慣れていないのかもしれない、詠唱できる間というのは、呪文次第で一瞬で十分なのだ。

「英雄殺しの檻<イロアススコトノケルヴィ>!!!」

 対象の範囲を少なくすることで、魔力量を極限まで減らす。この魔法に込めた意味は……封。

 彼女の頭上から、荘厳な雰囲気を纏った檻が降りてくる。ただ、それには殺意などの悪意という感情はなく、対象物に対する慈愛に満ち溢れていた。鉄は装飾により、華麗に彩られている。

「朱里、異世界初の、プレゼントだ」 気障な調子で言う。

「!?」

 声にならない叫びが彼女から出る

 それと同時に、彼女の頭上……檻の中心部から、一つの小さいものが落ちてくる。俺が作ったそれは、指輪だった。

「俺はおまえを封じた、屑みたいな王様を今から殺しに行ってくる。朱里には悪いが……そこで待っててくれ。後でもっと良いプレゼントやるからさ」

「え……? 私の……為?」

「あぁ、後、俺がこの世界の街を壊しているのは……言うのなら、八つ当たりだ。おまえみたいな良い女性(ヒト)と巡り会えたのにさ、こんな世界に飛ばされて……世界を恨まないわけがないだろ。家族……母、父、妹、近所の幼なじみ。よく遊ぶ友達。ネット世界での友達。好きだった本。ゲーム。先生。行っていけばキリがない。そんな元の世界でのすべてのものを、この世界は俺から奪ったんだ。だからさ……

八つ当たりでも、俺はやってよかったと思っているよ。そうでもしないと、今じゃ廃人だな」

 狂っていただろう。元の世界に依存していた俺は。この世界での新しい生活なんて無理だ。なら……せめて、鬱憤を晴らせるような生活。そんなの、復讐しかないだろう。

「でも、無関係の人間が……」

「あぁ、俺この世界の人間は、人間じゃないと思っているから。朱里が、奴隷的立場になったことで、それは増したよ。じゃぁ、朱里のための、復讐に行ってくるな」

 後ろから声が聞こえる。だが、俺は気にせず走り出した。さぁ、殺そうか。朱里を奴隷にした王様とやらを。

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