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四十三話、肘打ち

 走り、疾走し、駆け、逃げる。後ろから追いかけるは、確かな意志を持った俺の彼女。

「博信君! 何でこんなことを!」

 もう彼女の中で、街を壊したのは俺だとわかっているようだった。向こうも真贋判定<アリフィアブセマ>を持っているのかもしれない。

 彼女の問いかけに。俺は答えない。彼女に罪悪感を感じさせるという選択肢を、俺が選ぶはずがない。ソラは俺と駆けるのではなく、剣士を止めてくれるらしかった。だが、今はそんなことは、どうでも良い。

 逃げる。彼女を振り切らなければ、俺はこの世界で生きれない。そう、切に感じた。

「仕方ないですねっ……」

 なにが仕方がないのだろう。わからない。だが、気にすることもない。彼女も勇者補正持ちらしく、元の世界では俺より足が遅かったはずだが、今では普通に着いてきている。複雑な道や、緩急を使い、振り切ろうと画策するが、ことごとく失敗する。

「殺しの否定<スコトノアンフシュ>!」

 後ろから詠唱が聞こえる。解析する。結果、武器効果追加型魔法だと判断。効果検索……否殺。武器から殺害する要素を排除する魔法だと断定。

「!?」

 まさか……

 彼女は加速。とっさの加速と、先ほどの魔法結果への混乱から、俺は反応が遅れる。そして、

「せいっ!!!!!」

 彼女のかけ声と共に、剣が振るわれる。その剣は不思議と恐怖を纏っていなく、清純な輝きに満ち溢れていた。

 危機一髪。俺は自分の位置を強制的に左に移動させた。所謂回避だ。それにより彼女は、剣に重力を支配される。隙ができた。同時に、迷いが俺に生まれる。

 この状況で彼女を攻撃すれば、確実に俺は王城までたどり着くことができるだろう。だが、彼女を攻撃したくないという、純粋な意志も生まれていた。が、それなら何故この街を俺は攻撃できたのか不思議に思う。彼女が巻き込まれる可能性も否定できなかったではないか。自分の昔の思考に疑問点を持ちながら、喉に骨がつっかえるような感覚を持ちながら、迷う。

 剣で攻撃するなど以ての外。肘……俺は肘打ちをした。

 が、俺の肘は、悲鳴を上げた。理由、彼女が予想以上に堅かったのだ。当然のことだ。彼女は鎧に包まれている。それに肘打ちをしても、効果などなく、俺がダメージを受けるに決まっている。そこに考えが至らなかったほど俺は迷ってたのかと、頭の中では自嘲するが、肘の痛みからか体は動けていない。

 動けていないほんの僅かな時間……そこで彼女は動けるようになった。やばい、直感的にそう思う。彼女は重力に任されていた剣をもう一度自分の支配下に置いて、俺に攻撃をしてくる。受けた攻撃は、手加減されていたのか、俺を少しの距離吹っ飛ばすだけで、終わる。

 が、俺だってただで吹っ飛ばされるわけではない。彼女に対して剣で攻撃できるわけはないが、別の方法で、攻撃を止めることなら容易とは言わないまでも、できないことはない。

 吹っ飛ばされている間、魔力を練る。そして、起きあがった瞬間、詠唱を開始する。彼女は剣で攻撃した俺が起きあがれることに驚いたようだが、すぐに魔法を使われると判断して、止めようと動き出す……

「お休み……《眠りの火<キマメフォティア>》!!!!!!」

 睡眠を誘発する火が、彼女の眼前に灯った。

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