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三十九話、衝撃

 疲れた。俺は果てしなく疲れた。このなんとか帝国のなんとかって首都は意外と大きかった。というか、名前が長くて覚えられ無かった。カタカナ名より東京とかって二文字の方が覚えやすい。日本人だ。こんなところで昔を少し思い出した。

 やっとのことで見つけた宿屋は、果てしなく豪華だった。キッチン付きの宿屋なんて技術とかが中世レベルのこの世界はあまりないが、さすが首都ということだろう。一応あった。問題は、ハンパなくお値段が高い。明日あたりに宝石を換金しにいかないと、金が尽きるな、と思いながら、とりあえず今日はこの宿屋に泊まることを決定。そして、疲れたから酒場で一杯……

 したら食料かった意味がないということに気づく。残念だ。

「見つかったのに何で残念そうなんですか…………?」

 ソラが俺に聞いてくる。

「一杯飲みたかったなぁ、と思って」

「別に明日も好きなだけ飲めるんですし、今日だって決して飲めないことは無いんですから、元気だして……」

「それもそうだな」

 俺はあっさり開き直った。いや、ソラのことだから、部屋から出さないとか言いそう…………もないな。気のせいだ。


「食った食ったぁ」

 料理は(面倒だったので)全てソラに任せて、俺はほぼ食うだけだった。少しは手伝ったけどね。

「お粗末様でした」

 ソラは律儀に言ってくる。にしても、満腹だな。ソラももう動きたくなさそうだ。

「酒を飲む気もでねぇや。今日は部屋でゆっくりするかねぇ」

 元の世界のホテルとは比べるべくもないが、この世界では殆ど野宿だった俺たちにとって、キッチンがあるような高級な宿屋は天国のようだった。ベッドも大きめでなおかつふかふか。しかも部屋に飾られている調度品の数々も風情がある。

「いい部屋だなぁ」

 いい部屋。それにいい飯。いい寝床。微妙にかぶっているな。まぁいいや。俺はこの世界にきてからの中でもトップを争う夜に感謝をした。そして眠りについた……


 新しい朝がきた。希望の朝だ。以下略。

 ということで、次の日が朝が来た。窓から射し込む朝日が清々しい。完璧な朝だ。自然に起きれたことから眠気もあまりない。フカフカベッドの実力は折り紙付きなようだ。

「最高だな」

 思わず呟いた。それで、満足したので、傍らというか、もう一つのベッドで寝ているソラに目を向けた。寝ていた。当然だ。

「今何時だろ……」

 フカフカベッドの魔力で昼まで寝ていたとかだったら目も当てられない。といっても、時計はないのだが、そこは勇者。勇者補正で何とかする。

「《時間<クロノス>》」

 軽く魔法を唱えると、時間が頭に浮かび上がってきた。朝の七時半前。意外と上出来だ。

「ソラ、朝だぞ、起きろ~」

 のんびりとソラを起こす。

「むぅ……朝ですかぁ……?」

「あぁ、朝だ」

「そうですか……」

 眠そうな目を擦りながら、ソラが起きてくる。

 それから数十分……

 俺とソラは、諸々の準備を終え、階段を下っていた。下り終わった。


「博信君……!!!????」



 衝撃。視界が暗転。理解不能。様々な文字が頭を踊る。漢字に直してたかが三文字、されど三文字。その言葉は、俺の元の世界での本名だった。くらりと、意識を手放しそうになるのを何とか寸前で押しとどめる。そして、その言葉を放った彼女は、朱里…………俺の彼女だった……

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