↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正しい吸血鬼のなり方  作者: 冬月 葉
PR
89/89

疑問編 3

 お皿を舐めるように、いや舐めてたな。白いお皿がに入っていた食べ物がペロリと消えていく。

 すごい。こんなにも入るものなのか。私は無言で驚嘆している。…黒チーター君、育ち盛りだったね。テーブルに前足をついてお皿に顔を突っ込んでいる。立ち上がって爪先立ちになっている後ろ足がかわいい。


 「すっごいいい食べっぷりだね!はい、はい果物もあるからねぇ!あらら、一気にガブっと!うんうん。おっきくなるな〜、この子!」


 宴会でお酌をするように、ザクザクと料理を出す。私が肉だなと思った瞬間には口の中で噛みちぎられている。…匂いを嗅いでからと言ったはずなのに。あー。うん。空腹に耐えられるなかったのか。…わかるけど。私もやったので。何にも言えない私をよそに皿ごと食べ尽くす勢いでがっつく黒チーター君。


 「あれ?君は食べないの?君、小ちゃいんだから食べないと大きくなれないよう?ほれほれ。」


 梨によく似た果物。大きさがメロンぐらいあるのだが…皮付き丸ごと出されても。黒チーター君と一緒にしないで欲しい。私の口では丸ごと噛み付くなんてできないだろうよ。後ずさりして回避する。


 「いえいえ、私はけっこうです。お腹空いてませんので。」


 「えー?そうなの?君、全然食べて無いじゃない〜。おっきくなれないよう?」


 二回も言わなくていい。年の割に小さいのをちょっと気にしているのだから。ちょっとムカっときつつ当たり障りのない作り笑いで乗り切る。これぞ大人の対応。


 「そっか〜。お腹いっぱいか〜。」


 残念そうに言う。


 「いっぱい飲んだのかな?血を。」


 さらっと言われて、何を言われたのか理解出来なかった。


 「あれ?隠しているつもりだったの〜?君、ひどい格好だよ?ぼろぼろの服に赤黒いシミ。唇の赤さがはっきりとしている。あごにも血がこびりついているし…。」


 森の中に、鏡は無い。血の匂いに慣れすぎて服に顔に血がついていたなんて思いもしなかった。

 事実を言い当てられて固まった私を観察している。…吸血鬼がいるのに恐怖が嫌悪が見えない。ただ、子供が一途に初めてのものを見つめるように、私の顔を動きを見ている。ああ、そうか。


 「教えくれてありがとう。鏡があったらお借りしたいです。」


 にっこり笑う。吸血鬼だと見破られた焦りも戸惑いももうない。思考が一周回って落ち着いた。


 この女の人に害意はない。ただ、いままで出会えなかった生き物への強烈な関心と知りたいという欲求が女の人の大きな目にあふれていた。


 食事をするための大きなテーブル。そのテーブルの上にも本が置かれて食べるための面積が侵食されている。食べて満足したのかいつの間にか黒チーター君はテーブルの下に丸まって眠ってしまっている。


 ここには、私と女の人だけ。


 女の人は、私に疑問と興味を。


 私は、自分がなんなのか、疑問と真実を。


 本の山の中に、私の求めるものがあるのか。


 知りたいと思った。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。