16
とりあえず、私は保留にされた。
聖水をガブ飲みした私は、悪魔とはいいきれず、そうとはいえ血を飲む私は悪魔のはずで。
私を討伐しにきた男の人は、どうやら新人らしく私の扱いに困っている。…本当に頭を抱えて苦悶の表情を浮かべている。…なんかすみません。謝りたいが私に謝られても困るだけだろうし。うーむ。
ふと見ると、身の置き場が無いシスターがウロウロしていた。そうだ。私、シスターにお願いがあったんだ。シスターの服をつまんでみる。…もしかしたら私を怖がっているかも知れないし。それに、私も怖いのだ。…人を見て一番に思ってしまう、食べたいという感覚が怖い。
だけど、シスターは当たり前のように、私に視線を合わせるためにしゃがんでくれた。…普通の子供と同じように。私は、目が潤むのを止められなかった。優しいのだ。こんな生き物にさえ。あの子も。シスターも。
「どうしました?どこか痛いところは?」
目元にシワをよせ、心から心配している。その優しさがうれしい。反対に、私にかけていい優しさでは無いとも、思う。
「……。あの子は、だ…大丈夫ですか?」
不安だった。私が、血を飲んだ量がわからない。私は、血の匂いに酔い、血の味にまどろんでしまった。そして、記憶が飛ぶほどに歓喜したのだ。…今、私は後ろめたくて仕方がない。真っ直ぐに視線を合わせるシスターの目を見れず、まぶたをふせた。
髪を柔らかく撫でられて、顔をあげる。
「大丈夫ですよ。」
その一言に、心からホッとした。そして。
「…ごめんなさい。」
手で顔を隠す。指と指の間から涙がこぼれる。
「ごめんなさい。」
私に言える言葉は、それ以上ありはしなかった。




