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はっきり言って混乱している。
目の前で起きた事が、正しく認識できない。
聖水には毒の強さがあり、まず、一番はじめに弱い聖水をかけてみた。これだけでも、低級の悪魔ならば、数滴で苦しみはじめる。だが、聖水は人間には何の効力もない。悪魔にのみ反応するモノだ。
聖水の瓶が空になっても、何の反応もない。
銀髪の人形はだだ、ジッと僕を見ていた。
抵抗することもなく、表情ひとつ変えることなく。銀髪を青く染めながら。
不意に、目をそらし、手にたまる青く清浄な聖水を見つめていたかと思えば、聖水に浸った指先を舐めた。
は?毒を舐める?
僕の通っていた学校でもそんな事はしなかった。手を浸すぐらいしか。えっ食えるモノなのか?
信じられない光景に言葉が出ない。口に人差し指を入れて…ジャムでも食べるように味わっている?悪魔を弱らせ殺すための、聖職者にとって命綱ともいえる毒。効果がある事は、先輩との討伐により確認済みのはず。頭からかければ煙をあげ焼かれるモノもいれば、噛みついてきた悪魔の口に入れれば、歯も口の内部も溶けたモノもいた。
それなのに。この子は?
悪魔としての耐性の強さなのかと、もう一段階強い聖水を出すと、こちらを見る瞳が輝き出す。頬をピンク色に染めて手を伸ばしてきた。
ウエストポーチから出された聖水を奪うように手に取り、もどかしげにコルクを抜くと、一気飲みされた。は?いや。あれ?えっ?
二本目を飲み終えた子供のキラキラした目は、雄弁に感情を語り僕に伝えてくる。美味しいと。そして、もう一本と。
「君は…聖水を。」
驚き、細い肩をつかみ、すぐに離す。言葉は喉につかえて何も言えず、僕は一番強い漆黒の聖水を取り出した。この毒は、悪魔を骨さえ残らずに消せるほどの毒性を持つ。僕は一度しか使用した事がない。…それほどの毒のはずなのに。
僕が見のは、腰に手を当て上体をそらし酒をあおる酒場のオッさんのように、喉を鳴らして呑み干す子供の姿だった。
人形が、酒場のオッサンになった姿に、呆然とする。
血を飲む。それは悪魔。
聖水を飲む。そんな事ができるのは人間。
この子は、本当に、悪魔なのか?それとも、人間なのか?




