第6話 新・進化論
大ウサギに進化してから二日――
この領域は、まるで嘘みたいに平和だった。
変わったことといえば、ピットが全身筋肉痛で二日間まったく動けなかったくらい。
リミッター解除の代償ってやつだ。
今ではすっかり回復して、元気に兄姉と駆け回っている。
あの狼も深手を負って逃げたままだし、しばらく戻ってくることはないだろう。
森は静かで、穏やかな風が草原を揺らしていた。
……こうして見ると、平和って、案外退屈だな。
観察していて分かったのだが、大ウサギになったことで生態そのものが大きく変わった。
まず、穴で生活しなくなった。
体が大きくなりすぎたせいか、もう入れないらしい。
代わりに、日なたの草の上でごろ寝をするようになった。
なんというか……ウサギというより、休日のおっさんだ。
次に、食生活の変化。
以前は草しか食べなかったのに、今では昆虫も食べている。
どうやら筋肉の維持にタンパク質が必要らしい。
進化って、ほんと容赦ないな。
そして極めつけは――二足歩行。
立った。
まさかウサギが立つ日をこの目で見るとは思わなかった。
ダーウィンも驚きの進化だろう。
空いた時間に、自分のアイコンをいじって新しい発見をした。
どうやら「解説」と念じると、ちゃんと説明が出てくるらしい。
――最初から言えよ、佐藤。
たとえば「領域」について。
どうやら俺の行動範囲を限定的にしている結界は、領域と呼ばれるものらしい。
【領域】とは神自身の行動範囲であり、信者にも影響を与える。
・信者の身体能力+15%
・受けるダメージ-15%
・ランクに伴い領域は拡大する
……なるほど。
つまり、俺の存在範囲そのものが“加護”になるってことだ。
そう言えば、ランクが上がったおかげで川の方まで行けるようになっていたな。
そう考えると、この世界の使用はよく出来ているともいえる。
風にそよぐ草原で、三羽の大ウサギがはしゃぎ回る。
ラビット・ピットが跳び、ツキノが笑い、ボウイがその後を追う。
その光景を見下ろしながら、俺は思う。
「――さて、次はどう成長していくんだろうな」
彼らの進化はまだ始まったばかり。
この静かな森の奥で、少しずつ“国”の種が芽吹こうとしていた。




