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第13話 官兵衛の見識

官兵衛は戻ると、ピットへ帰参のあいさつを簡単に終え、


「明日地図を使い、皆にご説明いたします」


と報告し、自宅へ戻った。


次の日の昼、直属のもの9名を集め、新参者とのあいさつを終え、早速会議に入る。


「今回の偵察で、この森の大まかな概要が掴めました」


官兵衛が地図を広げて説明を始めた。


「この森の形は直径20㎞程の円形をしており、それを3つに分けるように各勢力が治めています」


「まず、北東を治めます、赤熊の『レッドキャップ』、北西を治めます、白イタチの『イワイ』」

「そして、私たち住む南を治めている金狐の『ナインテール』」

「この三つ巴で拮抗しておりました」


「おりました?」


卑弥呼がそう問いかけると、官兵衛がうなずき話を続ける。


「そうです、少し前までは…。しかし2週間前、レッドキャップが突然西側に攻め込んでまいりました」


「虚を突かれたナインテール、は一気に勢力範囲を奪われ、実にその4割の領地を失っております」


皆にどよめきが走る。


「さらに息を合わせたように、イワイの勢力もこちらに侵攻をするべく準備を進めているとのこと」

「ナインテールは圧倒的不利な状況となっております。」

「そして…現在われわれの領域はレッドキャップの主力勢力と隣接しております」


「「なんだってー!!」」


一斉に皆が叫ぶ。


なんだってー!!って、俺も思わず叫んでしまった。


「…こんな状況じゃ、ナインテールは打つ手もなく…だから静観してしまっているのかしら?」


ツキノが心配な顔をして話す。


しかし、官兵衛は首を横に振る。


「いえ、そうとも言えません。確かに最初はレッドキャップの奇襲を受けて被害が出ておりましたが、現在領土は奪われつつも、すでに領民や戦士は後方へ退却しており、思ったほどの被害は受けてはおりません」


「それに、イワイのほうの動きも気になります。攻め込む準備はできているようですが、まだ進軍の様子はないなど、どうも腑に落ちません」


「現状、イワイの国の情勢はほとんどわかっておりませんので、引き続き調査を進めてまいります」


皆、一斉に頷き、官兵衛は話を続ける。


「それで…これは私の推測なのですが、ナインテールは意図してここまで退却したと考えます」

「あえてここまで退却させて、突如出現したこの村を最前線にしたのではないかと…」


ここまで話し、官兵衛はピットを見つめる。


ピットは少し考え、官兵衛に自分の意見を述べた。


「…つまり、ナインテールはレッドキャップの兵を使い、我々の実力を試そうとしている?」


ピットの意見を聞き、皆はハッとし官兵衛は嬉しそうに頷く。


「はい、私もそのように考えております。恐らくナインテールは、我々の危機の対処法を見て仲間に引き入れる、もし敗れても失った領地のあちこちに忍ばせている伏兵を利用し、補給ラインを断ちつつ敵を殲滅させる腹なのでしょう」


官兵衛が話し終えると、清正が話す。


「要はレッドキャップの兵共を撃退すればいいだけの話であろう?我らの戦力ならそうそう敗れることはあるまいて!」


清正が意気揚々に話し終え、皆も鼓舞している中、官兵衛は静かに告げる。


「敵の兵力は『ゴブリン』2000体、うち巨体な『ホブゴブリン』が20体、魔法を使う『シャーマンゴブリン』4体、そしてゴブリンを統べる『ゴブリンロード』が確認されております」


ゴブリン?ってことは、この世界ってファンタジーだったの?

しかも魔法もあるの?

えっ、うちの子たち魔法なんか使えないと思うんですけど大丈夫なんですか?

落ち着かない自称「神様」の俺は、あまりの情報に会議の上をうろうろと飛び回っていた。

少し前まで小動物や昆虫やっていた皆にファンタジー概念なんかわかるわけないでしょ?

心配そうに皆を見てみると…


「なるほど、ゴブリンたちですか…ホブやシャーマン・ロードもいるとなると、多少の被害は覚悟しなければいけませんね…」


「うむ、ホブだけであれば俺たちで簡単に討ち取れるのだが、魔法を使われると面倒ではあるな…」


「ロードもいるのでは統率も取れているでしょうな…」


ツキノとボウイと清正は困った顔で話す。


はい、知らないの俺だけでしたー!

みんな余裕で分かっているよ。

そりゃ、こいつら生まれてずっとここにすんでいるんだから知当然っていや当然か。


そんな中、官兵衛は話す。


「その件に関しましては心配いりません。すでに策は決まっておりますので」


そう言いながら官兵衛は卑弥呼を見る。


「はい、官兵衛殿、すでに作戦の準備は整っております。」


えっ、俺知らないんだけど?ずっと上から見ていたけど全然わからないのだけど?

霊体の俺はアタフタしながら会議を見つめる。


「おそらく、数日のうちにゴブリンからの使者が参るでしょう」

「その対応が終わってからのゴブリン掃討となるでしょうから、ナインテールに関しては…10日後に話し合いましょう」


官兵衛が締めて会議は終了した。


続いてピットに、官兵衛が進言を行う。


「この度の偵察を行っておる際、新たな人材の確保に成功いたしております。」


「此度の戦いには欠かせない者たちです。明日にでもこちらに参りますので、謁見のほどよろしくお願いします」


「わかった、楽しみにしてるよ。いつも官兵衛に無理をさせてしまって本当に済まない。今日はゆっくり休んで」


ピットの言葉に官兵衛は頭を下げ、皆と一緒に部屋を後にした。


誰もいなくなった部屋で俺はつぶやく…

こいつら…すげーな…と。


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― 新着の感想 ―
みんな頭いいわー。神様の気持ちわかる。 てか、作者の知識もまじ凄い!!
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