今はなき英霊たちの物語
「我らが王、ラビット様! 同盟国が魔族の大軍に奇襲を受けました!」
諜報軍団を率いる服部半蔵の報告が、広間に鋭く響く。
その言葉を受け――ピットを中心とする『円卓の戦士』たちは、揃って不敵に笑った。
「がはははは!……我らの同盟国を狙うとは。魔族どもも、よほど死に急ぎたいらしいな」
豪放に笑うのは、戦士・清正。
「仕方ないよ、清正ちゃん。昨日まで同盟じゃなかったんだし、魔族も知らなかったんでしょ?」
ひらり、と。ツキノが扇子を広げる。
「――だから今回は、あたしたちが遊んできてあげる」
その一言に、彼女の“双璧”が待ちかねたように声を上げる。
「おっしゃあ! 出番だぜ! 遅れるなよ、小松!!」
血気盛んな巴が、獣のような笑みを浮かべる。
「……相変わらずですわね、巴さん。戦の匂いがすると、見境がなくなる」
冷ややかに返す小松。
「何だって? やんのかテメェ!!」
「ほんと、うるさいですわね。滅しますわよ」
二人はツキノを挟み――火花を散らすように睨み合った。
「ちょっと、あんた達。黙っていてくれる?」
ぴたり、と空気が凍る。
「「失礼しました!!」」
ツキノの一瞥に、二人は反射的に背筋を伸ばし――そのまま一歩下がる。
「お待ちください、ツキノ様!」
その緊張を断ち切るように、新撰組を率いる近藤勇が一歩前へ出る。
「あなたがたが出れば、一瞬で敵が全滅してしまいます! ここは我ら新撰組が――ほどよく成敗してまいります!」
「どなたが出陣されるにしてもじゃ――このレオナルド・ダ・ヴィンチが作った試作機は、必ず持っていくのじゃぞ!」
技術班の天才が、自信満々に言い放つ。
その場を収めるように、韓信が静かに口を開いた。
「皆さま、落ち着きを。今回は――官兵衛殿が立案した作戦です。すでに方針は決まっております」
その一言で、場の空気が引き締まる。
全員の視線が、黒田官兵衛へと集まった。
「今回の迎撃戦は、ラビット国、韓ノ国、そして各同盟国に加え――丞相・孔明殿が新たに引き入れた国も参戦予定です」
説明が終わるや否や、閉じていたピットの目が開く。
そして――
ピットはゆっくりと立ち上がった。
ざわめきが、すっと静まる。
「全軍、出撃だ」
静かに、しかし揺るがぬ声。
「魔族の軍勢を――打ち砕け!」
掌で机を打つ音が、号令として響き渡る。
――戦の幕が、今、上がった。
――――――――――――
その動きを、遠くから見守る者たちがいた。
『おー! いいねいいねぇ! 君の信者、やる気満々じゃん!』
酒を片手に、無責任な声援を送る、どこぞの女神。
……いや、ぶっちゃけ事を大きくしてほしくないんですけど?
てかあんた、新品の絨毯の上でワインこぼすなよ!!
ほうきを片手に、散らかされた部屋を必死に片付ける男の姿があった。
――――――――――――
ここは、かつて存在した者たちが――
再び「やり直す」ために集う、もう一つの世界。
時代も、種族も、人であるかどうかさえ関係ない。
ある者は戦場に散り、
ある者は病に倒れ、
ある者は静かに生涯を終えた。
だが――その最期は、本当に望んだものだったのか?
その答えを求めるように、魂は再びこの地へと導かれる。
そして彼らは、もう一度生を受け――己の道を歩み直す。
この世界は、彼らに与えられた「第二の舞台」なのだ。
――――――――――――
「総司! ルクシル! 準備はいいか!」
「りょーかい!」
軽い返事と共に、総司は愛刀「菊一文字」に手を添える。
「ああ、ピット。君の護衛は任せておけ!」
双剣を腰に携えたエルフの女戦士は、静かに腕を組み、目を閉じたまま応じた。
ピットの号令に応じ、全員が立ち上がる。
やがて一行は、十万の兵が待ち受けるテラスへと姿を現した。
どよめきが、波のように広がる。
ピットは一歩前に出る。
その瞬間、広場のざわめきがすっと静まった。
右手を天へ掲げ、叫ぶ。
「皆の者――時は来た!」
「大神・ジャスティスよ! 我らの勝利を――御照覧あれ!」
「「「御照覧あれ!!!」」」
歓声が爆ぜ、広場を揺らす。
――戦いは、すでに始まっていた。
――――――――――――
『いいぞー! やったれやったれー!!』
……だから酒瓶とグラス振り回すなって!!
だいたい、俺、そんなの御照覧したくないし……もう、ほんとーに、やめてくれない?(涙)
――――――――――――
神になった男のもとに、英霊が集う。
――伝説は、もう一度始まる。
彼らが刻む、新たな創世の物語を――見届けよ。
今は亡き英雄たちに、祈りと敬意を込めて。




