今はなき英霊たちの物語
「我等が王、ラビット様。同盟国が大量の魔族に奇襲を受けております!」
諜報軍団の頭領・服部半蔵の報告に、ピットを中心とした『円卓の戦士』たちが不敵に笑う。
「ほほう!俺たちの同盟国と知って仕掛けてくるとは、魔族の奴らもよほど死にたいとみえるな!」
「仕方ないよ『清正』ちゃん。あそこは昨日までうちの同盟国じゃなかったんだから、魔族も知らんかったんだろうし。ということで、今回はあたしが遊んでこよ~っと!」
「いけません『ツキノ』様!あなたが出て行ったら、一瞬で相手を全滅させしまうじゃありませんか!ここはこの『近藤勇率いる新撰組が、いい塩梅で成敗して参ります!」
「何方が行かれるにしろ、この『レオナルド・ダヴィンチ』率いる技術班が作った試作機は、必ず持って行ってもらいますのじゃ!」
「まぁまぁ、皆さま。今回は大尉・『黒田官兵衛』と、わたし『韓信』とで考案した策ですので、既に方針は決まっております」
韓信の一言で、円卓の戦士たちは一斉に官兵衛を注目する。
「今回の迎撃は、このラビット国と韓信殿が治める『韓ノ国』、他の同盟国と丞相・『孔明』が引き入れた新たな国が参戦予定となっております」
説明を終えた官兵衛の隣で、ピット王は力強く号令する。
「みんな、ここは全軍を持って出撃し、集結した魔族の兵団を打ち破るんだ!」
ここではない別の世界の物語。
この世界には、過去に存在した者や、物語の登場人物達が、過去の生き方をやり直すためにやってくる。
それはどの時代の者とは限らず、種族も人種も何も関係ない。
あるものは戦で討たれ、またあるものは病で倒れ、天寿を全うできた者もいる。
ただ、その全ては望んでいた退場ではなかったかもしれない。
そんなもの達が今一度この世界で生を受け、やり直せる可能性に賭ける。
「総司!ルクシル!準備が出来次第すぐに出撃だ!」
「りょ-かい!」
「あぁピット、僕に任せろ!」
席を立ったピットの一言に合わせて、全員が席を立ち拱手する。
ここでは過去にそんな生涯を駆け抜けた者達が、再びこの世界で新たな伝説を作る軌跡を御見せしたい。
今は亡き、過去の英霊たちに追悼の祈りを込めて…。