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善と悪

惨殺の現場を逃げるように離れた三人は二階堂ケイの豪邸に一旦身を隠すことにした。正確に言うと逃れる場所がそこしか思いつかなかった。


豪邸の客間にあるヨーロッパ調のベッドにアオイを寝かせ、ケイとミツメは、これもヨーロッパ調の長椅子に腰を下ろす。


二階堂ケイは冷静さを取り戻し、今しなければいけない行動を分析する。


まずはアオイを治療しなければならない。

緊急用の救急キットの使用でいのちの危険はないが、医師の治療は必要だった。


次にあの現場の後処理だ。

通報するのが正当なのだろうが、ミツメがあの気味悪い男を殺してしまった。心情的に通報は出来ない。



ケイが思いにふけっていると

横たわるアオイが汚れてしまった白いライダースジャケットのポケットをまさぐり、取り出したイヤホン型の通信機からケイの通信機に情報を送り、絞り上げるように声をあげる。


「ここに連絡して。」


拷問屋のゴンタの連絡先だった。


「金さえ払えば何とかしてくれる。」


ケイは自分の家にゴンタを迎え入れるのは多少ためらったが、背に腹は代えられない。金に糸目はつけないとゴンタに伝える。


ゴンタは正式な医者ではないが、人体に精通していて、闇医者としても腕は確かだった。


そして、闇の社会には色々な繋がりがあり、惨殺現場の処理も卒なく行われた。



ゴンタの高度な医療行為のおがけで体力がかなり回復し、ゴンタは多額の報酬を確認し陽陽と帰ってゆく。



アオイの無事に安心したケイは喜びも程々に、自分がどれ程心配したか、もう危険な事をするなとアオイの耳元で説教をはじめた。


ケイが放つ言葉を浴びながら、アオイはヨーロッパ調の長椅子に座る男をじっと見つめている。


「お前は誰だ?あの変態ヤローとはどんな関係だ?」


問いに男は答えようとしない。


その緊急した雰囲気にケイがミツメの事を説明し始める。それは上辺だけの説明だった。ケイにしても、ミツメの事をほぼ何も知らないのだから。


少し黙っててとアオイはケイに視線を送る。


重い沈黙が続いたあとに男が口を開く。


「あいつと俺は正義を行っているんだ。聖戦だよ。」


アオイは激怒する。


「ふざけるなよ。あの化け物は人殺しだ。」


アオイは蟲が赤髪をどうやって殺したか、自分にどんな卑劣な行為をしたかを叫ぶ。それにたいして、反応の少ないミツメに怒りが収まらない。


あまりの発狂ぶりに心配したケイが制止に入る。ケイのなだめる手が、不可抗力にアオイの顔に当たり、取れかかっていた。鼻のピアスを跳ね飛ばしてしまった。

嗅覚調節器を失ったアオイは部屋中に立ち込める血生臭異臭に息が詰まる。


「お前、今まで何人殺した。」


アオイは男を睨み冷たく言葉を突き刺す。


アオイは自分が殺人者を嗅ぎ分ける能力がある事を男に伝える。まっ常人ならそんな事は信じられない。


しかし、男は違った。


ミツメははじめて自分と同じ人間に出会った。

その病気なのか能力なのか。苦悩する力を理解する人に。


ミツメの感情は複雑だった。


ここ同じ境遇の人間に出会った事、起こった出来事に何か意味があるのではないかと感じた。


ここで自分が囚われている聖戦を話すことに何か意味があるのではないか?


しかし、この二人の事を何も知らない。

そして、ジョンドゥと老人にたいしての裏切りになるではないか?


ミツメは長い沈黙の後に、口を開く。


「俺も、君と同じなんだ。それで使命を持って………」


ミツメは自分のことを語りだした。その語りが進むにつれ興奮していたアオイとケイは男の話に入りこんでゆく。


三人の人生は絡み合ってゆくのだった。










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