1話:魔王城の日常と、ちょっとした秘密
【前書き】
ご覧いただきありがとうございます!
本作は、ちょっとポンコツで可愛いツンデレ魔王様と、そんな彼女に恋をして手作りお菓子持参で攻め込む勇者様、そして周りの賑やかすぎる仲間たちが織りなす「勘違い&ラブコメファンタジー」です。
【登場人物】
・マオ(魔王): ぶどうジュースと甘いものが大好きなポンコツツンデレ魔王。
・ネコ(メイド): マオ様を温かく見守る(?)優秀な獣人族(猫)の専属メイド。
・ユウ(勇者): 敵である魔王に恋をして、剣を捨ててケーキを焼き始めた人間族の男。
・シェーフ(シェフ): 料理の味には一切妥協しないダンディーな魔族の総料理長。
・セイ(聖女): ユウを追いかけて魔王城の裏門を爆破する人間族の暴走幼馴染。
・ジィ(執事): 二人を引き離そうと裏で暗躍しては胃を痛める獣人族(狼)苦労人。
ほっこり笑えてキュンとするお茶会ストーリー、ぜひお楽しみください!
「世界を今すぐ、滅ぼすわ」
漆黒の玉座に深く腰掛け、氷のように冷たい瞳で眼下を見つめながら、彼女――魔王マオ様は静かに呟いた。
流れるような赤髪に、地獄の業火を思わせる漆黒のドレス。その背後に佇むだけで息が詰まるほどの圧倒的な覇気。数々の冒険者たちを震え上がらせてきた「恐怖の象徴」である。
だが、そんな恐ろしい魔王様には、誰にも知られていない秘密があった。
グラスの中でゆらゆらと揺れる深紅の液体を、彼女は満足そうに口へ運ぶ。
「……うん、甘い。美味しいわ」
……それ、今日のおやつの100%ぶどうジュースである。
さらに言えば、晩餐のハンバーグの端っこには、彼女が子供のように嫌ってこっそり避けたピーマンの残骸が転がっている。
そんなマオ様のお世話を一手に引き受け、日々盛大に頭を抱えているのが、専属メイドの私――ネコだ。
「クールな魔王のメイドは楽じゃないの!」と言いつつも、雷が鳴れば袖にしがみついてきて「怖くないもん!」と強がるマオ様のギャップに、私のハートは完全にひれ伏している。
しかし、平和(?)な魔王城の日常は、ある日を境にガラリと変わり始めた。
窓の外の城門をドカァァァンと派手に吹き飛ばし、傷だらけになりながらも懲りずにやってくる――「光の勇者」のせいで!
◇
「また来たのね、傷だらけの懲りないやつが」
ある日の夕暮れ。魔王城の厨房では、腕利きのダンディーなシェフが、暗黒のフルコースの仕込みをしながら渋く溜め息をついていた。
「また城門が壊されたか。……まあいい、今日もあのお方の胃袋を最高の一皿で満たしてやろう」
メイドのドジも、スパイスの効いたハーブも、すべてが最高のディナーの隠し味。魔王城のグルメな日常は今日も健在だ。
一方その頃、地下の暗い廊下では、執事が静かに不敵な笑みを浮かべていた。
(ふむ……聖女が勇者を慕っているという噂ですね。これは好都合。あの軟弱者をそちらへ誘導し、魔王様から遠ざけてしまいましょう)
真面目な顔をして一番の黒幕――もとい、勝手なマッチポンプを企む執事の暗躍により、物語は思わぬ方向へと転がり出す。
勇者は城門を叩き、メイドはぶどうジュースを注ぎ、シェフは極上の料理を焼き、執事は裏で糸を引く。
そして、勇者を追い返すはずの魔王様の心にも、なぜか小さな波風が立ち始めて……?
光と闇、恋とドタバタが入り混じる、ちょっとおかしな世界征服(?)の幕が、今、静かに上がろうとしていた。
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