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S級冒険者エンドレス組み手


「ゼンターー! 死んだらこの戦いはゼンタの負けだからねー! 負けたら修行は終わり! 約束通り残りの4人の修行も受けられないから!」


 この修行の発案者である、未来から来たアルがやや離れた位置からゼンタに叫びかける。


「死なねえけどな! 要はそれ相応の攻撃を喰らうなって事だろ!」


 ゼンタとディッパー2人の戦闘を残りの面々は傍観していた。その様子を見ながらレイが未来から来たアルに問いかける。


「そもそも実力はゼンタの方が上なのに、格下の奴らと戦う意味あるか?」


「勿論! ゼンタの方が強いって言ってもそこまで大きく実力差があるわけじゃないからね。魔王1人と戦い続けるより、沢山の人間と戦って色んな技や戦い方を経験した方が、神殿での戦いの役に立つよ。1人と戦い続けると変な癖もついちゃうし、色んな人と戦うとそれだけ対応力も上がるうえ臨機応変に戦えるようになるからさ」


「それにしてもゼンタの野郎、全然剣を使いこなせてないな」


 槍の連続の突きをゼンタは必死に剣で塞ぐ。反撃する余裕もないようである。

 

「なんだいあれ……あんな凄い剣を持っているのに剣の扱いは訓練兵以下じゃないか」


 ザックがもどかしいと言った面持ちでゼンタ剣捌きを見る。どうもイライラした様子だ。


「剣のことは死神魔剣士の異名を持つあなたが色々教えてあげてね」


 アルがザックに向かってウインクすると、ザックは片膝をつき、こうべを垂れた。


「勿論だよ。マイスイートハニー。僕にできる事なら何なりと」


 ディッパーは表情を一切変えず怒涛の突きを浴びせる。相変わらずゼンタはそれを必死の表情で防ぐ。


「ゼンタの方が強いと言ってもかなりゼンタが押されてるな」


 レイはそう言ったもののどこかその言葉には余裕があり心配や焦りのようなものは感じられない。


「そりゃそうだよ。最終兵器の異名を持つS級槍騎士(ランサー)ディッパー。彼の実力は恐らくS級冒険者の中でも1番だと言われているんだから」


 大人アルの代わりに子供アルがレイに答える。


「しかもまだディッパーは本領を発揮してないよ。攻撃手段はまだ槍を使っての突きだけ。彼がスキルを使って立っていた者はいないって言われてるんだから」


「でも本領を発揮してないのはゼンタも同じだぜ?」


するとレイは両手で筒を作るとそれを口元に持っていき大きく叫んだ。


「ゼンタ! メタンゼルヴァテインの力使ってみろよ!」


「いや、そんな事したらこの人死んじゃうだろ?!」


 槍の攻撃を全く余裕を見せずに防ぐゼンタのその発言にディッパーの眉が少しだけ動いた。

 すると突きは止まり、ゼンタも剣を下ろした。


「なるほど……お互いまだ力を出してはいないようだな」


 ディッパーはそういうと、後ろへ大きく飛びゼンタと距離をとった。何が起きるのか予想する間もなく槍を上げ、振りかぶった。


「お前の力も見せてみろ……」


 そう言ってゼンタ目掛けて槍を全力で投げると槍は光線のように真っ直ぐと飛ぶ。竜巻のようにグルグルと回転し、あまりのスピードと回転にソニックブームが起き、やがて槍は燃えはじめた。


 前方から凄まじい勢いで襲いくる槍を今のゼンタは肉眼で捉える事ができた。

 しかし、それだけではなくゼンタは背後から迫り来る攻撃すらも察知し、後ろに顔を向ける。

 そこにはどこから現れたのか、ネイチャーバグより大きな砲丸が猛スピードで迫って来ていたのだ。その速度はディッパーが投げた槍とほぼ同じ。槍と砲丸が衝突する位置はちょうどゼンタが立っている地点だと推測される。


 これが最終兵器ディッパーのスキル。槍対砲台。

 このスキルを使用しながらディッパーが対象に槍を投げると、突如としてその対角線上に砲台が現れ発射される。放たれた背後の砲丸の速度は使用者が投げた槍の速度と比例し、攻撃対象がいる位置で必ずその2つの飛び道具が重なるといったクールなディッパーのスキルとはまるで思えないスマートさの欠片もないスキルである。

 

「ちっ! この威力受けたら死ぬか? わっかんねえ!」


 まずは迫り来る攻撃に対抗する事を考えた。殴って返すにしても両方向から来る攻撃を片方ずつ対処できるだろうか。最強のS級冒険者と言われるディッパーの切り札を生半可な攻撃で防げる自信はない。

 次に回避、避ける時間はそれほどないが今のゼンタであればできなくもない。しかし、もしこのスキルに追尾性能やディッパーがそれを見越して槍や砲丸が曲がるように放ったのであればその2回目の危機を回避する事はできないだろう。

 受けても死ぬ事はないが、それ相応のダメージを喰らえば1人目の修行で脱落となってしまう。

 アタナシアを撃って対抗しようにも発動する為の時間がない。仮にこの一瞬で死ぬ覚悟を固めたとしてもアタナシアが打てるのは一方向、どちらかの攻撃には当たってしまう。


 ゼンタは思考を巡らせるが必ずこの攻撃を防げる方法を選択できずにいた。


「小僧……我を使え」


 耳で聞こえた訳ではない。脳内に直接語りかけてくるこの声。間違いなく自分の思考の中にある言葉ではない。


「乗っ取ろうとしても無駄だぞ」


「なに……意味のない事はわかっている……我も少し暴れたいだけの話だ……」


 それを聞きゼンタは何かを決めたように剣を強く握り、目を閉じる。


 その瞬間とんでもない速度で斬撃を飛ばすと大きな砲丸は真っ二つに割れ、剣を振るった勢いを使って反対に振り返ると槍を剣で止め、弾いた。


 驚きこそしないが、その光景にディッパーは目を少し細めた。

 先程まで目の前にいた、黒髪の少年の面影は残っているものの、その少年の髪を真っ白に染まり、目つきも随分と悪くなっていた。


「小癪《こしゃく》な技だな。遠くで見ている奴らも全員まとめてかかってくるがいい」


 人差し指をクイクイと2回曲げ、遠くで見ていたアル達を挑発する。


 その姿や声はゼンタのものであるが、先程までと別人のような口調と態度に、アルとレイを除く、その場の人間全員が生唾を飲んだ。


ここまで読んでいただき誠にありがとうございます!もしよろしければ星5評価、ブックマークしていただけるとモチベーションに繋がり大変嬉しく思います!何卒よろしくお願い致します!

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