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ダイナマイトジョー


 バットゲットカンパニーの幹部であるとダイナマイトジョーが自己紹介し、ゼンタが戸惑うより早く、チヨメはスキルを発動していた。


 ゼンタ達が構える間もなく、男の目の前で刀を抜くとその切先が首元目掛けて振われる。


「インセキ」


 ダイナマイトジョーがそう呟き、咳払いをすると、その咳払いの衝撃で爆風でも吹いたかのようにチヨメは後ろに吹っ飛ばされた。


「くっ! 貴様! 冗談でその組織を名乗った訳ではないでごじゃろうな!」


 地面に膝をつけ、チヨメはダイナマイトジョーを睨みつける。


「ああ、間違いない。記憶にないがどこかであっていたか?」


「お前が所属している組織の手によってABCエリアにあった故郷は無くなり、同胞達は無惨に殺された………拙者はそこの生き残りでごじゃる」


「なるほど。だがそれは俺じゃない。聞くにガムシロップスタンガンの手口だろ。俺も奴のやり方は好きじゃない」


 男はすました顔でそう言うも、チヨメの怒りが静まった様子はない。しかしそれをダイナマイトジョーにぶつける様子もなく、怒りの矛先を探しているように見える。


「とはいえ、お前の持ってる物は譲ってもらうのに話し合いで済ませる気はないんだろ?」


 ゼンタは聞いた。


「話し合いか……のらりくらりと自分が何も失わない勝負しかしない……そんな二流との話し合い……覚悟のない対立……そんなもの無駄だって事だよ」


「そっちがその気なら覚悟はできてるよ。お前を倒す!」


 ゼンタが拳を構えると続いてアルとルイドも戦闘に入る準備を済ませた。ルイドはスッとゼンタの横に立つ。


「戦い好きの戦闘狂……さらに実力もあるときた。一筋縄じゃいかねえぞ」


「別に戦闘が好きな訳じゃない。不毛《ふもう》な事をしたくないだけだ」



 ゼンタを先頭にレイ以外の全員がダイナマイトジョー目掛けて走った。


「なら、死にたがりか?!」


「死にたいとは思わない。ただ常に自分を殺す気持ちで生きている」


 男はポケットに突っ込んでいた両手を出した。


「意味わからねえ事言ったんじゃねえよ!」


 ルイドは走った勢いを殺す事なく、それを利用し飛び蹴りをする。ダイナマイトジョーの位置まであまりに遠い場所で地面を蹴ったが、徐々にスピードは上がっていき、そのつま先はいよいよ男を捉えようとした。がその蹴りは中指1本で止められてしまう。


「お前じゃ俺に愉悦《ゆえつ》を感じさせる事はできない」


「くっ……ムカつく野郎だな…」


 物理的にあり得ない体制で宙に浮くルイドの様はまるで足先がゆびに突き刺さっているようにも見える。


 ロリィが出した使い魔がルイドを抱え、ダイナマイトジョーから引き剥がす。

 その後ろからアル、チヨメ、カースが3人がかりで攻撃を繰り出すも、それも全て塞がれた。


「遊び感覚で戦ってんじゃねえよ! そのロザリオよこせ! ボケ!」


 拳を止められたカースが、顔をぐいっと近づけ血走った目で脅す。


「遊び? そんなつもりはない。 ただスリルのない人生ならいらない……それだけさ」


 その後も続く3人の連打を全て澄ました顔で避け続ける。一向に当たる気配はないが、その攻撃を止めるつもりは3人から見受けられない。


「待たせたな」


 ゼンタが少し離れた位置でそう言うと、3人はニヤリと笑い地面を蹴ると大きく後ろに後退した。


「喰らえ! アタナシア!」


 のけぞった体勢から叫んだゼンタは口を大きく開け、顔を前に突き出した。


 その瞬間、耳をつんざく音と目も開けれない程の光に包まれ、ゼンタの口から大きな光線が放出された。

 味方すらも命の危機を感じるその魔法がダイナマイトジョー目掛け飛んでいく。


 アタナシアの威力に誰もその光景を見ることはできはしなかったが、やっと目を開けた頃には塔の最上階は吹き抜けとなり、屋上となっていた。


「マジかよ……アタナシア……こんなに威力のある魔法だったのか」


 ルイドは自分の顔の痣を撫で、アタナシアの威力に度肝を抜かれる。ロリィは口をパクパクさせ背筋を凍らせていた。


「やったでごじゃるか?」


 ゼンタ達は辺りを見渡し、ダイナマイトジョーの生存を確認する。目の前に姿は見えず、安心した時だった。


「ククククク……正直今のは最高だった」


 後ろから聞こえた笑い声に全員が慌てて振り向く。

 ダイナマイトジョーはレイの隣を陣取っていた。

 澄ましていた顔が初めて微笑に変わった事に驚いたが、それよりも片腕が吹き飛び肩より先が無くなっている事に誰しも目がいった。

 いつの間に横に立たれたのか、まるでわからなかったレイは驚きのあまり一瞬膠着《こうちゃく》する。


「ただ、お前は気に食わないな。 命懸けのやりとり。真剣勝負。かたや安全圏で高見の見物」


 そう言うとダイナマイトジョーは残った方の腕で持っていた腕輪をレイにつけた。


 その一瞬の出来事を認識するより早く浮遊していたレイは勢いよく地面に尻もちをつく。


「な!! ま! 魔封じの腕輪!」


 その言葉を聞きレイが無力化された事を察すると同時にゼンタは間髪入れずに2人の元に走り出した。


「さっきの魔法……あれしか使えないのならお前達とやり合う道理はもうないな」


 ダイナマイトジョーはその言葉と共に片足でガンガンと何度も地面を蹴り始めた。


「大富豪ゆすり」


 その地団駄にも似た足踏みはやがて床を揺らし、間もなく大きな地震に変わった。


 ゼンタ達は立っている事もままならなくなり、気がつけば体中が悲鳴をあげる程のダメージを受けていた。


 揺れによる肉体的な攻撃を受けた事などなかったゼンタ達はどう言った法則で痛みを感じているのか、この体の激痛が一体誰の攻撃による物なのかすらも判断できずにいた。


「あまり好きな言葉じゃねえけど……次会うことがあれば俺に限界を味合わせてくれ」


 ダイナマイトジョーは両膝を曲げ大きく跳躍すると、その場から離脱した。


 おさまらない揺れになす術《すべ》なく這いつくばっていたゼンタ達だったが、崩壊していく塔を見てより焦りと恐怖を感じる。


 塔が崩壊し、このまま落下すればゼンタ以外は間違いなく死ぬ。現時点でダメージをおった体、転落死、塔の瓦礫に押しつぶされ圧死。

 しかし、逃げ場も打開策もない。


 策を弄《ろう》するも解決策など出てくるわけもなく、ただ諦めないと言う気持ちだけで思考を巡らせた。


 が、そのゼンタの思いも虚《むな》しくとうとう塔は崩壊した。



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