共通の知り合い
19牢。この数字を聞いてわかるのは今の自分が戦っても確実に勝てないという事だった。
3304牢のサンゾウと自分が倒した中で最も強かった2000牢の実力差ですら天と地ほどの差があり、サンゾウが何人いても2000牢には勝てないだろうと両者と戦ったゼンタは確信できる。
この痣の男、ルイドが倒した315牢ですら、間違いなく自分1人では全く歯が立たない強さを持っていた事だろう。
それが更に19牢となると一体どれほどの強さを持っているのかまるで想像できなかった。
レイやアル。更にはチヨメやカースと共に戦ったとしても全員が無事で勝利をもぎ取るのは至難の業。
上階へ上がる事を躊躇せざるを得ないほどの不安と戸惑いがゼンタのなかで渦巻いていた。
「どうだ? ここは俺とお前達のパーティで一時的に手を組んで倒さねえか?」
ルイドがそう提案した。
「そうね。あたし達のパーティーとあんた達のパーティーが力を合わせればグッと勝率は上がると思うわ」
「馬鹿! 俺がいつお前とパーティーを組んだよ」
偉そうにゼンタ達に協力を促したロリィの頭を上から押さつけ、ルイドは2人パーティーである事を否定する。
「それで言うとわたくしもゼンタさん達に同行させていただいているだけでパーティーメンバーという訳ではありませんが……わたくしのお願いでここまで来ていただいたのですから協力は惜しみません」
長らく行動を共にした事で錯覚していたがカースが小さく手を上げるまで同じパーティーメンバーという感覚で戦っていた。
「随分弱腰だな。私がいるんだ。19牢だろうがなんだろうが最悪私1人でぶっ殺してやるよ」
謙遜という物を知らないのか、その甘い見積もりに注意をしようと考えたが、たしかにレイであればそれは可能なのかもしれない。
「いや……俺たちだけでやってみるよ。サポートは頼みたいが、この戦いは俺にとっても大きな成長に繋がる気がする」
ゼンタが静かにそう言うと、レイは特に何も言うことはなかった。そのかわりここぞとばかりにゼンタの腕に噛みつき食事を始めた。
「よし、なら交渉成立だ。この塔を制覇した時に揉めないように色々決めておこうぜ」
「ああ……」
たしかに何か大きな報酬があるなら一つのパーティーにしかそれを譲渡してもらえない可能性がある。その他にも一次試験を突破できるなんて事があればどちらのパーティーにとってもそれは必ず手にしておかなければならない。
「報酬分配の為にお前らが勇者試験を受けた目的、そしてこの塔に挑んだ理由を聞いておこう?」
ルイドはタバコを地面に擦り付け火を消すと、もう1本咥え、指先の小さな火で着火した。
「勿論、勇者になる為だ。そして強くなる為。塔に来たのは強くなる為というのもあるが、この女の頼みでここにある呪いのアイテムを手に入れる為だ」
「呪いのアイテム? そんなものがあるってのは初耳だ。それはお前達にくれやるよ」
ルイドは呪いのアイテムの情報を聞いても全く興味を示さず、2つ返事でそれをゼンタ達の取り分とすることを了承した。
「うちの目的はゼンタを勇者にする為だよ。ゼンタには恩があるしパーティーメンバーだからね。それ以外の目的はって言われると特に思いつかないけど、ちょっとでも長くゼンタと一緒にいたいかな。あと楽しそうだし」
アルがここまで同行してくれた事にゼンタはずっと感謝していた。脱獄させたという見返りだけでこんな厳しい旅に同行してもらってるのだから、いつパーティーを抜けると言われても文句をいう筋合いはない。
しかし、アルの目的や行動原理を聞き、実はゼンタは涙が流れそうになるほど感動していた。
まさか、アルが自分を勇者にする事を最終目標にまだしてくれているという事実を知り、胸が熱くなる。それを聞き何があっても勇者にならねばならないと再度胸に誓った。
「私も概ね同じだ。こいつについて行かないとまたひもじい生活に逆戻りだからな」
腕にかぶりついたレイはこう言ってはいるが、ここまで旅を続け、本当に自分の事を腹を満たす為の食材というだけで一緒にいる訳ではない事には薄々気づいていた。そうであるなら強くなる為、勇者になる為のアシストをここまでしてくれる訳がない。レイにはアル同様感謝の念が耐えない。
「拙者も強くなる為というのは目標に掲げてはいるでごじゃるが、復讐の為、強い方々の力を借りる必要がごじゃった故ゼンタ殿に同行してる次第でごじゃる」
「わたくしはゼンタさんが言ったようにこの塔にある呪いのアイテムを一目見て、一度でいいから装着する為に勇者試験、ひいてはこの塔に参った次第でございます」
「なるほど、じゃあ修行とその呪いのアイテムが目的って事だな……一応お前にも聞いておいてやるよ」
ルイドはロリィの方に目線を向けた。
「あたしは別に勇者になりたいなんて目標はないわ。欲しいものがあるの。小さい頃からずっと欲しかった憧れの宝物。深紅のバレッタを手に入れる為に来たのよ」
深紅のバレッタ……ゼンタはそのお宝の名前をどこかで聞いていた気がした。
どこで聞いたか思い出そうしている間にロリィがルイドの目的を聞いた為、それを思い出す事を中断する。
「最初に言っておくが俺には時間がない。俺は身内がスワンプリズンに収容されてるんだ。俺の罪を被って捕まっちまったそいつを助ける為に一刻も早く勇者になる必要がある。俺がそいつは無実だと訴えても犯罪者の俺も一緒に監獄にぶち込まれるだけだからな…………勇者になってその功績と権限でその罪を帳消しにする」
それを聞き、ゼンタはまたしても聞き覚えのある話だと思ったが次は考える暇もなく、それが誰の話かを思い出した。
「ロイド……」
ゼンタがボソリとそう呟いた時、ルイドは勢い良くゼンタの方に顔を向けた。
「お前! 兄貴を知っているのか?!」
「ああ、俺もスワンプリズンに収容されていたからな」
「は?! あそこから抜け出したって事か? 一体どうやって……いや、そんな事より兄貴は?! ロイドはまだ生きていたか?」
柄にもなく慌てた表情で捲し立てるようにゼンタに質問をぶつける。
「ああ、安心しろよ。ロイドは俺達と一緒にスワンプリズンを脱獄した。今頃、安全なところでのんびり暮らしてると思うけど」
それを聞き、目から生気が亡くなったようにルイドはボーっとすると、ゼンタの肩に両手を置き、頭を下げた。
「本当か?」
「ああ、信じてくれていい。俺のパーティーメンバーのアルはあのS級盗賊のアルセーヌ。こいつを脱獄させるのが目的でスワンプリズンに入ったんだ」
「小太りで声を変えるスキルを持ってるロイドでしょ。一緒に脱獄した事はうちも保証するよ」
ゼンタとアルの言葉を聞き、わなわなと震えるとゼンタの肩に置いた手にも力が入る。
「ありがとう……」
ルイドはボソリと呟いた。
「いや、あいつがいなきゃ俺達も脱獄なんてできなかった。礼を言うのは俺の方だよ」
「いや、戦闘力が皆無に等しい兄貴がスワンプリズンから脱獄なんてできる訳がねえ。お前達がいなかったらな」
ルイドはゼンタの肩から手を離すと真面目な表情でゼンタをジッと見た。
「俺の目的はお前達のおかげで無くなっちまった。これから先、どんな事があってもお前達に協力する。この命をかけてな」
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
何卒星5評価、ブックマークよろしくお願いします!
していただくととても嬉しいです!!




