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呪物コレクターの女は


 ゼンタ達は丸一日歩き続け目的地である、ドロップアウトに到着した。


 街に入ると宿屋を取り、ジャスティンパーティーと一緒に宿屋近くの酒場に来ていた。


「はん、不得意な属性などない。まあ強いて言うなら炎を使えば私の右に出る物はいないだろうな。禁忌や個人が応用して編み出した魔法以外であれば全て使えるぞ」


「さすが魔術の大精霊様! 流石です!」


 レイが自慢気に話すと、ジャスティンの仲間の魔法使いが目を輝かせる。


「それにしても不老不死なんてスキルを持っているなんて……ゼンタさんが清き心を持っていて本当に良かったよ」


 ジャスティン達に自分の力を説明した事で、また一目置かれるようになった。


「その身体能力も一朝一夕で身につくような物じゃない……本当に君達なら勇者になれるかもしれないね」

酒の席だというのにほろ酔い気分のジャスティンはただひたすらにゼンタ達を褒めちぎっていた。

気分の悪い物ではなかったが、こうも持ち上げられると反応に困る。


「いや、この身体能力はこのアイテムのおかげなんだ。生命力の指輪って言う、寿命と引き換えに身体能力を向上させる呪いの装備」


 とゼンタが指を見せ、説明した時、ガタガタと後ろの席に座っていた客が勢いよく椅子から立ち上がると慌てた様子でこちらのテーブルににじり寄って来た。


「せ、せ、せ、生命力の指輪?! それ生命力の指輪なんですか?!」


 酒臭く、ひどく酔っ払った様子の女がゼンタの手を突然掴み自らの顔の前に持ってくると指についてる指輪をマジマジと見つめた。


「うわ! 急になんだよあんた!」


 すると、女は我に帰ったようにゼンタの腕を離すと、怯えたように姿勢を正した。


「こ、こ、これは失礼致しました! こんなところで生命力の指輪を拝見できるとは思わず、取り乱してしまいました!」


 黒いローブに、怪しい装飾品をつけた赤髪の女は後退りをする様に距離を取る。長い前髪のせいで表情はわからないが、怯えてる雰囲気は感じ取れる。


「お姉さんがつけてる、その装備も呪いのアイテムだよね?」


 アルがテーブルに肘をつき、質問すると女は自分の腕につけたブレスレットを撫でた。


「え、ええ、生命力の指輪などに比べると大した物ではございませんが…………失礼致しました! わたくし呪いのアイテムには目がない物で!」


 呪いのアイテムには目がない。何とも悪趣味な思考だ。不老不死である自分以外がつけるとどんな災いやデメリットが降りかかるかもわからないと言うのに飛んだ物好きがこの世にはいるんだなあとゼンタは軽蔑とも感心とも言えない気持ちで女の装備を見た。


「あ、あ、あの、もしよろしかったらほんの一瞬でもいいので指輪をつけさせていただけませんか?」


「いやいや、やめとけ、寿命が削られるんだぞ」


「そんな事は覚悟の上です! こんなスーパーミラクル、ダイナマイトウルトラ級にレアな呪いのアイテム、もう二度とお目にかける事はないと思いますので!」


 ゼンタはレイをチラリと見た。


「別にこいつがつけたいって言ってんだからいいんじゃねえの? ただ忠告しておくが大体人間だと1分で1年くらいの寿命をもっていかれるから本当にすぐ外した方が身の為だぞ」


 女は頷くと、ゼンタは懇願してくるその女の迫力に負け、指輪を外すと女に渡す。その女は生命力の指輪をマジマジ眺めると、口の端からヨダレをたらりと流し、惚れ惚れする眼差しで指輪を天井にかかげた。


「あああ……生命力の指輪を、わたくしみたいな人間のこの指につけれるなんて……」


 おもむろに指輪をつけた女の体はビクビクと痙攣けいれんし始め、女は立っていられなくなったのか、ペタリと床に尻をつけた。


「おい! 大丈夫か?!」


 ゼンタは急いで指輪を女から取ったが、女は放心状態でうつろな目をして天井を眺めていた。


「おい、これ大丈夫か?」


 ゼンタがレイを見る。


「寿命を食う以外のダメージはねえよ。お前も知っての通り、寿命を喰われてる事も自覚できない程、痛みや疲労もねえ」


「じゃあこいつはどうして」


 すると女は手のひらを頬に持ってくるとニヤケ顔でまたヨダレを垂らした。


「あああ……生命力の指輪にわたくしなんかの寿命を食べていただけた……たらない……これはたまらない快感……」


 女が腰砕けになった理由はまた別のところにありそうだ。


 ゼンタを含むその場にいた全員がその女は軽蔑の目で見ていた。


「大丈夫なのこの子」


 アルが引きつった顔で問いかける。


「人の趣味をとやかく言うつもりはごじゃらんが……これは中々……」


 チヨメまでもが、青冷めた顔をしている。


「ま、まあ悪い子じゃなさそうだし。みんな今の事は忘れてあげよう」


 ジャスティンはあからさまに作った笑顔で優しい声をかけるが、その胸の内を知るのは難しくない。


 すると女はハッとしたように立ち上がると、服の袖でヨダレを拭き、慌てた様子でスカートの埃をパンパンと払った。


「申し遅れました! わたくしの名前はカース! 発掘師です! みっともない姿を見せてしまってすみません!」


 自分も今の姿は異常だったと言う自覚があるようでカースと名乗る女は顔を赤らめ自己紹介をした。


「そんな事よりこんな経験をさせていただいたからにはお礼をしなければいけませんね!」


 女は今のことを忘れてくれとでも言うように話を変えると、ゼンタ達のテーブルの椅子に腰掛けた。



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