恋と仲
リンノは自室に戻る。
ベッドに横たわって今の状況を考えていた。
「…」
ファリダットに頼まれた華鈴の姉代わり。でも彼女は「余計なお世話だ」と言った。私はこのまま実行するべきなのだろうか。
するとクロウディウスが入ってきた。
「おや、とても悩んでいる顔ですね。何があったのです?」
「あ、クロウディウス。実は…」
……
中庭。華鈴は中央に黒瑠の姿を確認する。
黒瑠の方から声をかける。
「あら、華鈴。…どうしたの?」
「いえ、どうしたもこうしたも…何もありませんよ?」
「…にしては少し動揺してるわよ?」
「え?」
華鈴は驚いた。まさか。今まで一度も動揺を見せたことなどない。
「ふふっ、何か嬉しい事でもあったの?」
「いえ、そんなことは…」
「そう? いつもより明るい顔してるけど。まあいいわ。今日客がお見えになるから準備手伝ってもらっていいかしら」
「はい」
……
「へぇ、そんなことが」
クロウディウスは少し驚いた様子を見せた。
「華鈴の事何か知らない?」
「いえ…華鈴様は城の住人達にはあまり顔を合わせない方です。それに女の子とは思えない眼力で、黒瑠様とはまた別の意味で容易く近づける存在ではありませんでした。いつも堅い表情をなされて、口を歪ませる事は一切ありません。それに普段は自分から喋らないので素性がわからないのです」
「へぇ…でも、私にはすごい積極的だったんだけど」
「それはある意味ラッキーと言えましょう」
「そうなんだ…。どうすれば距離が縮むと思う?」
「フフフ、恋愛のようですね」
茶化すなよ、と強めに言うとクロウディウスは「はいはい」と、二つ返事で返した。
「そうですねぇ…華鈴様の好き嫌いはファリダットしか把握しておりません。とは言っても、食べ物の好き嫌いしか把握しておりませんが。それ以外の好みは恐らく黒瑠様しか知らないでしょう」
「じゃあ、黒瑠に聞けば…」
「華鈴様は大抵黒瑠様のお近くか、黒瑠様の部屋の前にいます。護衛、と言ったところでしょうか。絶対聞こえますね」
「え? じゃあどうすれば?」
「そっちから話しかければいいのでは?」
「…え?」
「姉代わりなのですから、話すことに躊躇など不要でしょう」
とんだ無茶振りを言うな、この狐…。
聖六道の城の前、三人の人影が現れる。
「久しぶりねー…」
「そうですね。レーニャ」
「華鈴ちゃん元気かな?」
三人は三姉妹で、長女がレーニャ、次女がクロノ、三女がムレイ。
クロノが口を開く。
「どうやら新人がいるそうですよ」
「へぇ、どんな感じの?」
「とても反抗的で、でも純粋な子…らしいです」
「ハハッ、そんな子うちにも欲しいなあ」
レーニャはふざけ半分で呟く。その発言にムレイはむっとしながら反論する。
「私だって純粋だよ! おねーちゃんが一番心が歪んでるんだ!」
「ムレイ、私にも一応傷つくという感覚があって…」
「早くお城入りたい! 華鈴ちゃんと遊びたい!」
「ムレイ! 華鈴だって忙しいのです!」
クロノとムレイが言い合いを始める。いつものことで困っているのだが、その様子がまた可愛らしい。
「ほら、もう城よ」
賀助がお出迎えをする。
「お待ちしておりましたレーニャ・セルス様、クロノ・セルス様、ムレイ・セルス様。お席は準備できております。さあ、どうぞ」
「わあ! 賀助だ! またおっきくなってるー!」
「ははは、お久しゅうございます。うわっ!」
ムレイは賀助を抱き上げる。
「私こんなにおっきくなったよ!」
ムレイは賀助の2.5倍ぐらいだった。おかしいな、前は2倍だったのに。
「とても大きくなられましたね。これは私めも負けておられませぬな」
賀助はムレイに抱かれながら中庭へと案内する。
そして、黒瑠と華鈴の姿が目に映る。
黒瑠がレーニャに向かって言った。
「久しぶりね、レーニャ」
「ええ、黒瑠」




