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マリアの独り言  作者: 藤高 那須
第一章 始まりは産声から 幼少期編
19/40

詳細不明

今回短め。


 ルシファーは焦っていた。

 考えが甘かった。

 マリアとしか話していなかったせいで、自分は周りからどういう目で見られるのかを頭入れていなかった。

 黒い髪に赤い眼、さらに背中には黒い羽。まず間違いなく頭から浮かんでくるものは悪魔の類だろう。

 だからこの部屋の中にいる――マリアを除く――全員はルシファーの姿を見た途端に警戒の色を示した。マリアの保護者達は隙あらば攻撃しようとしている。もしかすると、いや間違いなくマリアをこうしたのはルシファーだと思っている。

 ルシファーはまずその誤解を解こうとした。


「オイオイそんな殺気プンプン臭わせんなよ。それにこんなところで暴れてみろ、マリアもただじゃ済まないぜ」

「うっ、そうだ」

「この、卑怯な……」


 しまった、悪感情を抱かせてしまった。このままだと余計に状況が悪化してしまう。


「違う違う、勘違いしないで欲しい。別に俺はマリアに危害を加えようとか考えてない。逆だよ、俺はマリアを助けたいんだよ」

「そ、そんなの信用できるか!」

「信用? 信用ってのは何だよ? まさかお前、『貴方を信用するために、その気持ちを見せて下さい』なんて言うんじゃないだろうな? 見えないものは見せられないのに、お前は、目に見えないから信用しないと言う。それじゃあ一生相手を信用できないぜ」

「ぐっ、この」

「やめなさい、あなた」


 悔しそうな顔をするジルシュを止め、クレアが前に出た。ようやく話ができる相手が現れたと、ルシファーはほっとした。


「それじゃあ、貴方は何者か、そして何故貴方がマリアを助けたいのか、理由を教えて下さい」

「どちらも答えは同じさ。俺はマリアのパートナーだからだ」


 それを聞いて、ハッシュ以外の全員が目を見開いた。


「そ、それってもしかして」

「そうだよ。俺はあの時の洗礼でマリアと契約した。だからマリアが今こんなことになっている状況で、助けないわけがない」

「悪魔ではないのね?」

「ああ、悪魔寄りじゃない」

「名前は?」

「……それを言うには、俺達はまだお互いを知らない。そうだろ?」


 ルシファーは自分の名前を言うのを避けた。これでは余計怪しまれるが、ルシファーにとっては名前を言う方が危なかった。

 ルシファーは神に戦いを挑み、そして敗北した天使だ。それが人間界に伝わらないはずがない。神に歯向かったことが知れれば自分も、そしてマリアの身も危ない。さらに天使という部分も入れれば、前列がないことと、神より格下である天使と契約したと世間に広まり、肩身が狭くなる。マリアの保護者達なら大丈夫だが、ここにはハッシュがいる。噂となって広まらないとは言えない。


「ええ、そうね。でも、もし違っていたら――」

「本当だ! 俺は嘘は吐かない! というより、窓を割ってマリアがここにいると知らせたのは俺だぞ! マリアを助ける気がなかったらそんなことはしない!」

「割った? 窓を?」

「ホントすいませんでした!」


 いきないクレアの殺気が膨れ上がり、ルシファーは条件反射気味に頭を下げた。空中でだが。

 あの夜、淫夢を見せたのは俺だ。なんてことは言わないでおこうと心の中で誓った。


「そう。あなた、お義父様、シュトール、彼は敵じゃないわ」

「そ、そう、クレアが言うなら」

「ま、今そいつをどうこうしてもどうにもならんからな」

「そうでございますね」

「ふぅ、それで、マリアが何故気絶したかなんだが、もよくわからん」


 ルシファーは後ろ髪を掻いて言った。


「だが、熱の原因はわかった。たぶんだけど」

「なんだったんだい?」

「なんというか、頭の使い過ぎというか。普通そんなんで熱は出ないんだけどなぁ」

「じゃ、じゃあどうすれば目を覚ますんだ?」


 状況に混乱していたハッシュはやっとの思いで質問した。


「残念だか、俺達にはできないようだ」

「なんで?」


 ルシファーはマリアの顔を見ながら言った。


「目を覚ますには、マリアが自力で起きなきゃならないからだ。まあ、やるとしたら、できるだけマリアの熱を下げることと、マリアの手を繋いで無事を祈ることくらいだな」


 結局は、彼らにできることはほとんどない。

 このよくわからない症状には、さしもの彼らも打つ手はなかった。

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