始まりと、終わりの日
彼女は生まれつき空を飛ぶことが出来て、それは言わずもがな、自慢できる特技となった。
鳥のようにツバサを広げなくとも、高く、青い大空を自由に飛び回ることの出来る彼女は、それが当然のことではないことを知っていた。知っていたからこそ得意になり、見せびらかすようにして街中を飛び回った。
彼女は幸せだった。
皆が遠回りをしなければならない道のりも、彼女は一直線に進む。渋滞知らず。
ちょっと失敗したり、失礼な発言をしても、誰も彼女を無視しない。尊敬の的、羨望の的。
天使、妖精、魔法使い、女神様。全てのあだ名が彼女をさらなる大空へ飛び立たせた。
彼女は幸せだった。
けれど、そんな夢のような毎日は、キラキラと輝かしい光の結晶によって、無残にも引きちぎられ、彼女は難なく地上へと落下した。
「あれです!皆さんご覧下さい!空を飛ぶ少女です!」
パシャッ。カシャッ。カシャカシャパシャカシャッ。
光の結晶は、カメラのフラッシュ。
もげた鳥は、小さな少女。
今日、この日。8月8日のお昼過ぎを切欠に、彼女は全世界に名前を知らしめることに成功した。
翌日の朝刊の一面は全て、宙を舞いながら笑う彼女の姿で埋め尽くされた。
国中の誰もが彼女を一度でいいから目にしたいと考え、そして瞬く間に彼女の自宅は多くの人間に囲まれた。
両親は初めはのうちは驚き、戸惑っていたが、次第に笑顔になり、さらには饒舌になった。
そして――幸せな笑顔が広がったその街で、彼女は笑顔を失った。




