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The Poilot    作者: 銀川プリムラ
第3部
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12/15

第4話 バスガス爆発

 クリンクは大木と外を見た。見たところで、目視は難しい状況だが、それでも見らずにはいられない。エディからの報告だから、間違いない。大臣のバスがないということは、理由はいくつか考えられる。

「消えたわけでないなら、どこかに停まっているか、船に帰ったかだ」

「まだ帰れの合図がないわ」

「あ」

 と、大木が気づいて、クリンクも前方から走ってくる一台の車の影に気づいた。

「大臣の車が」

 猛スピードでこちらへ向かってきている。

「あの大臣は本当におかしいな」

 と笑いかけ、ふと様子がおかしいことに気づく。

 大臣の車は何かから急いで逃げているかのようだ。東の空の下から、慌てて逃げてくるということは・・・クリンクらも異変に気づいた。

「クリンク!急いで出発だ!」

 大木が声を掛けるまでもなく、クリンクはバスを走らせていた。

「うわわわわ」

 よく見ると、東の空の色が妙だ。どんどん明るくなってきている。

 大臣の乗った車は一瞬後、クリンクらのバスを追い抜いた。

 向こうもレッドロースター号に急いで帰還しようとしているのだろう。

 大臣の乗った車とロードレースのようになった。土煙を舞い上げながら、我先に非難地域へ向けて走る。

「危ない!」

 お互い悪路にハンドルを取られながらの運転で、同じタイミングで車が風に流される。

 何度も何度もタイヤが滑る。

「ああ!」

 と、毎回耐えていた強風にとうとう吹き飛ばされ、大臣の乗った車がくるくるとスリップした。

 そのまま動かない。

 よく見ると、運転席の人間が下を向いてうつむいている。ずいぶんスピードが出ていたから、その分衝撃が強かったのだ。

「大変だわ。助けないと」

 クリンクはバスを止めた。

「でも、どうする?」

 大木に言われて、クリンクもどうしたらいいのか行動しあぐねた。

「外はものすごい砂嵐だし、東の空からガスバーストが近づいて来ている」

「だから、早く行かなければ」

「もう駄目だ。外へ出れば君も危ない」

「でも、私達だけが帰還するのは・・・」

「もう猶予がない」

 その時だ。なにか空気がおかしいのは肌身で感じられた。

 今まで濁った水のように渦巻いていた砂嵐の流れが変わっていく。一定方向へ向かってどんどん引き寄せられるようだった。

 クリンクらは、恐る恐る外の空の彼方を見上げた。

 白かった空は、どんどん明るくなっている。

風が空へ向かって巻いている。引き寄せられる大気の循環に、クリンクらの魂も吸い上げられるようだった。

 やがて炎が空から生まれた。大空の隣縁から、赤と黄色の雲海が次々とつながり、赤い火柱となって地上まで達した。天井が割れて、地獄の溶岩がなだれ込んで来たかのようだった。

 待つまでもなく、生まれ出た火炎地獄は、クリンクらを襲った。

 一瞬だった。

 目を開けると、

 変わりばえのしない車内の中だった。

 大木君と床に身を伏せていた。

 ゆっくり体を上げる。何ともない。バスも損傷してない。

 ただ先程と違うのは、バスの窓の外が鋼鉄の壁に塞がれていて、暗くなっていることだった。

 外は静まっている様子。

 クリンクは安全を確信して、外へ出た。

「あ・・・」

 クリンクらが乗ったバスの横に、大きな宇宙船が二機停泊していた。

「はあい、彼女、かーいいね。大丈夫?」

 一方から、ひょろりと背の高い赤い髪の男が降りてきた。

「レッド」

 世界救出部隊からレッドだ。戦闘兵士ファイブのリーダー。本人はいたって真面目らしいが、こういう軽薄なところが誤解を生んでいるんだろう。

「私を舐めてたら承知しないわよ」

 反対側の宇宙船から、ピンクのスーツに身を包んだ女性が、ヒールをかつかつと鳴らして降りてくる。

「二つの宇宙船でシールドを張ったの。あなたのバスと、大臣の乗った車は無事よ」

 褒めて褒めてというように、長い睫毛をぱちぱちさせて、上目使いに見るので、クリンクは仕方なしにでも褒めるしかなかった。

「あ、ありがとう。おかげで助かったわ。それで、大臣は」

 クリンクは近くの車に近づいて、覗き込んだ。中には誰もおらず・・・

 周りを見回したとき、ごうっという空気がうねる音が聞こえた。

 次に何が来たのかと訝る間もなく、離れたところに一隻の宇宙船が下りてきた。

「大臣はあ、す、こ」

 ピンクが指を刺す。

 輸送船が下りてくる真下に、元気な外務大臣一行の姿があった。

 中型の輸送船が着座すると、中からずいぶん年季が入った中年の男達がぞろぞろと降りてきた。

「コロンビア政府の要人だよ」

 大木がそばに来て、放心したように言った。

「じゃあ・・」

「来たんだ、彼らも」

 クリンクらがあっけにとられている間に、大臣たち一団は連れ立って、開いた地下施設の中へ入って行ってしまった。

「階段場所はここで間違いなかったんだ」

 クリンクと大木は呆然と彼らを見送った。

「これで解決したね。コロンビア政府との会談はセッティングできたわけだ」

 大木が言うと、救出部隊のレッドは軽くウィンクした。

「良かったね。僕らは全世界の人々が危難の時には、いつでも駆けつけるよ」

「じゃあ、もう行くわね。まだまだコロンビアの町の人たちを救いに行かなければならないから」

 そういうと、レッドとピンクは颯爽と船に乗り込んだ。

「あ、ありがとう」

 驚いて、ろくに礼も言えぬまま、彼らは行ってしまった。

 船が飛び立つ軽い風がふいて、クリンクは浮かび上がった船の底を目で追った。

 助かった・・・おかげで。でも、レッドとピンクはどうやってこの窮状を知ったのか。

 考えると、いろいろ考えられるので、クリンクは今は考えなかった。

 地球の外務大臣を輸送するという任務は、これで完了できた。

 大臣も無事。大木君も、レッドロースター号のみんなも、おそらく大丈夫だろう。

 自分も無傷でここに立っている。

 助かったのだという安堵感が、ふつふつと湧き上がってきた。

 戦闘戦隊のピンクを見たといえば、ヴェガの男達はうらやましがるだろう。

 レッドは意外と細身だった。聞けばライラックと女子達は、悲鳴を上げるだろう。もっとと、話を聞かせてとせがんで来るだろう。

 クリンクはつまらぬものを見たような笑いがこみ上げてきて、顔がゆるゆるになってきた。

「危ないところを助けられた」

 大木は先の任務からの緊張が続いたせいで、安堵したのと、疲れ果てた様子だった。彼らが来なければどうなっていたか分からない。命拾いしたことに、本当に感謝しているようだった。

「まあ、良かったね」

 クリンクは言うと、大木はうなづいた。

「でも・・・」

 なんだか、お互い吹き出しかけた。すんでのところをよく助かったものだ。

 嬉しいやら、おかしいやら、泣き出したいような気持ちだった。

 生きていることの大事な重みがあることだけは、実感していた。

「任務ご苦労。無事で良かったな」

 気がつくと、背後に男が来ていて、クリンクは驚いて振り返った。

 大きな目と大きな鼻が特徴的で、年齢は不詳。長い髪を後ろで一つにくくり、ふわりと頬や背中に垂らしている。背は割合低く、体つきは細身で華奢だった。

親しみやすい愛嬌があるも、大胆で、自分に自信のあるタイプに見えた。ただ、他の誰にも見たことがない聡明そうな目がクリンクはとても好ましく思えた。

「ええ、私達は大丈夫です」

「そうか、俺は今日急にパーカー指令からコロンビア政府首相を運んでくれと言われて、参ったよ。しかし、どうやら、ここに借り出されたのは、俺だけじゃなかったようだ」

「あなたは?」

「俺はレッドバトラー号の船長だ」

 同じ会社の人間であるようだ。

 しかしまだ、その船の名も船長の名も聞いたことがなかった。ただ船長と聞けば、クリンクには尊敬の対象だった。

「そうですか。助かりました。ありがとうございます」

 彼は静かに笑みを浮かべてうなづいた。笑うと、意外と魅力的だった。

「機会があればいずれ、また会おう」

 彼はそう言い、背を向けた。クリンクは少しの間に、彼に魅了されていたことに気づいた。

レッドバトラー・・・

クリンクは心の中でつぶやいた。何だか、ずっと暗く重かった胸の中の霧が晴れたようになった。会社にはまだまだ知らぬ人間と世界があるようだった。

彼の船が、コロンビア政府の要人を運んできた輸送船が、飛び立つ。

クリンクは空が雲ひとつない快晴になっていることに、初めて気づいた


この章は、あとから付け足したので、妙な雰囲気になりました

下調べもなく作ったので、SF的根拠はかなり怪しいものになっておりますが、こんなものかと思ってもらえれば・・・

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