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東京駅占拠  作者: 日比野晋作


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5/5

世界を敵に回しても・・・・・・

 第五話です!


 今日もよろしくお願いいたします!

1


 広池は寝不足の頭で目の前の東京駅を眺める。


 機動隊の車両で、ライトアップされているが、突入はまだ、行われていない。


「中に何があるか、分からない状況で突入ですか・・・・・・」


 副官の八木がそう言う中で、広池は「警察の管轄だから、好きなようにさせておけ・・・・・・俺たちは知らん」とだけ言った。


 問題は二色との通信がジャミングで出来なくなったことだ。


 一人で戦わせるのは心苦しいな・・・・・・


 増援として、SATが突入できれば、良いのだが・・・・・・


「おい! まだか!」


 警備一課長の藤本の怒号が飛ぶ。


「もうすぐです! もうすぐ、突入できます!」


 そう、SATの隊員が言い放つが、あまりにも時間がかかり過ぎた。


 すると、広池のスマートフォンに着信が入る。


 情報保全隊司令官の神橋だった。


「俺だ、警察がダメだったら、自衛隊を投入するとのことだ、早急に準備してくれ」


「総理は警察を諦めたんですか・・・・・・」


「プランBだな、中には何がいるかは分からないが、軍隊の方が分が良いだろう」


 もはや、東京駅を舞台にした戦争だな。


 広池は禁煙に成功したはずだが、急にタバコを吸いたい衝動に駆られていた。


 ストレスのかかり過ぎか・・・・・・


 寝ていない影響もあるかもしれない。


「二色一尉はどうなっている?」


「ジャミングが急に行われたので、通信が途絶、現在、連絡が取れません」


「急にジャミングを始めたか」


「理解に苦しみますね」


「まぁ、良い、とにかく、警察とは適度な距離を取れ、情なんか移すなよ」


 そう言って、神橋との通話は切れた。


 情なんかは移さない。


 管轄が違いすぎるのだ。


 とにかく、今は二色の安否が気になるのだ。


 時刻は午前四時四十七分。


 東京駅占拠から十時間四十分が経過。


2


「隊長は駅長室にはいないぜ」


 そう言い放ったのは防大の同期である、茶谷だが、村木はすぐに「まだ、政府との交渉は済んでいないから、脱出ルートは確保できていない、探せ」とだけ言った。


 必ず、奴は東京駅の構内にいるはずだ・・・・・・


 あんな小心者に限って、冒険など出来るわけはない。


 そう思っていた時だった。


「有街はどうなっている?」


「有街、カラスよりゴミバコへ・・・・・・聞こえるか?」


(ゴミバコよりカラスへ! 現在、敵のソルブスと交戦中! 相手が強すぎる!)


 ソルブスが相手か・・・・・・


 生身ではきついな。


「・・・・・・茶谷、大矢は隊長を探す部隊を頼む」


「お前・・・・・・有待の救援に向かったら、死ぬぞ!」


「そちらの方がハードだから、俺が出る、それに・・・・・・菅原を死に追いやった、あのマシンを許すことは俺には出来ない」


「情に囚われるなよ・・・・・・お前が死んだら・・・・・・」


「俺でなくても、ピースメーカーの悪行を世界に伝えることは出来る。それに俺たちはもう、捕まっても死ぬし・・・・・・どっちみち、死が俺たちを待っている」


 一瞬の沈黙の後で、俺は走り出す。


「頼んだぞ!」


「まだ、了解していない! 一人で決めるな!」


「村木・・・・・・菅原によろしくと言っておいてくれ」


「大矢・・・・・・お前、村木を殺すつもりか」


 大矢は顔を背けた後で「村木なりの覚悟だよ、俺もあのマシンを許すことは出来ない・・・・・・隊長は俺たちで始末する」とだけ言った。


 その顔からは涙が伝っているように思えた。


「行ってきます」


 そう言って、俺は走りだした。


 数奇な人生とも言えるのだろうか・・・・・・


 菅原とセックスが出来たのだから、もう、俺は死んでも良いかと、自分を納得させた後で、最愛の人を殺した、悪魔のマシーンが放つ銃声が響く、東京駅の在来線通路構内へと向かう。


「有街ぃ!」


「村木! 何で、ここに来た!」


「俺はあのマシーンを許さない! だから、お前を助ける!}


「バカ野郎・・・・・・隊長を何とかするのが先だろう!」


「それは俺でなくても、出来る! 状況は!」


「B幹の部隊、十六人が死傷、使い物になるのは俺とお前を含めて、五名だ」


 そんなにやられているのか・・・・・・


「こりゃあ、俺たちの腹切り場だな」


 腹切り場・・・・・・すなわち、ここは最終防衛線だ。


 ここを突破されれば、間違いなく、次は大矢や茶谷の元へと、あのマシーンは向かう。


 東京駅にいる民間人は助かるかもしれないが、俺たちは・・・・・・極悪人。


 しかし、国家の敵となった、俺たちにも矜持がある。


 だからこそ、こいつだけは刺し違えてでも、殺す。


 さぁ、始めようじゃないか・・・・・・


 国家の存亡をかけた、殺し合いって奴を!


 目の前のソルブスという殺人マシーン目掛けて、M4アサルトライフルの銃口を放つ。


 時刻は午前四時五十分。


 東京駅占拠から十時間五十分が経過しようとしていた。


3


 その後に沖縄での勤務の最中で、菅原は新型機動兵器ソルブスのテストパイロットへの公募に応募をして、見事に通ってしまった。


「マジで、通ったのかよ・・・・・・」


「凄いよね、とんとん拍子だよ」


 那覇市内の沖縄料理店でそのような会話をしているが、辺りは観光客しかいない。


 俺たちもここに来て、数年経つのにまだ、外様気分が抜けないという証拠だが、沖縄という土地は元来、内地出身者には厳しいものだった。


 俺の先祖代々は恐らく、曾爺ちゃんは戦争に行っていたが、沖縄には関与はしていないのだが、それでも、沖縄に対して、償いをしないといけないのだろうか・・・・・・


 全ての罪を内地出身者が償えというのは現実的ではないと、村木には思えた。


 それに自分たちは低所得のまま、働かずに嫁さん、子どもにDVを行う、貧困家庭が大半のくせにまともに働いている連中に対して、何を偉そうに被害者面をしているんだとも思えてくる。


 村木は沖縄に住み始めて、そのような現実を痛感したので、愛着どころか、ますます、この土地に関する憎しみが増してきているような感覚を覚えていた。


「村木ぃ、私がアメリカ行くの寂しい?」


 目の前の菅原は怪しく微笑む。


「大丈夫か? 何か、何度も言うけど、人体に影響とか出ないか?」


「まぁ、死ぬのは織り込み済みでしょう、軍人なんだから」


 そう言いつつ、菅原はゴーヤーチャンプルーを食べ進める。


 菅原のお気に入りだ。


 ちなみに俺はソーキそばが好きだが、沖縄に赴任すると、沖縄料理が毎日のように続く。


 和食を食べたくても、和食がほとんど県内に無いのだ。


 あれには閉口した。


「・・・・・・今更ながらだけど、沖縄料理、飽きるよな」


「いや、食っている最中に言うなよ、私は年中食べても平気だし、結構、好きなんだよ、沖縄」


 こいつ、神経が図太いというか、何と言うか・・・・・・


 俺がナイーブ過ぎるのか?


 村木は泡盛を呑むことにした。


「今度の休み、東京に戻るけど、菅原は・・・・・・あっ、そっか、アメリカに行くんだもんな・・・・・・」


「まぁ、休みの時ぐらい、十分に帰京しなよ・・・・・・というか、東京出身なんだね?」


「珍しい?」


「軍隊は地方出身者の方が適合し易いんだよ、都会っ子はナイーブなのと、恵まれすぎていて、ハングリー精神が無い」


「菅原は東京の下町だもんな」


 菅原は「ふふ」と怪しく笑う。 


「前から思っていたけど、両親はいるの?」


 菅原はグラスに注いだ、泡盛を見ながら、笑う。


「父子家庭でね・・・・・・トラックの運転手だったけど、良い父親だったよ、だから、家事は大体出来るんだ」


 菅原の部屋に泊まると、分かるが、こいつは妙に家庭的なところがある。


 良い嫁さんになるだろうなとは思ったが、そういう背景があるのか・・・・・・


 菅原の家庭環境が予想通り、あまり、裕福では無かったので、少し、気の毒に思えた。


「あんたは? 実家どうなの?」


 俺は若干、沈黙した。


「・・・・・・両親ともに教師の家庭」


「うわっ! 日教組じゃん! そりゃあ、両親とは関係が悪いわ」


「防大に入る時に縁を切った。俺には元々、無関心で平和活動にご執心だったから、別に屁でもないだろう」


「でも、よく、自衛官になれたよね、しかも、幹部だし」


「それだけ、自衛隊が人材難なんだろう。それと、ウチの両親は逮捕歴は無いし、共産主義者というわけでもなく、デモに参加して、俺を含めた、生徒に自明党粉砕とかを訴える程度で、今になって、思えば、そのぐらいの反政府活動で済んで、助かっているよ・・・・・・もっとも、昇進を考えると、ウチの両親が変な思想に傾倒しなければ、良いけどさ」


「・・・・・・うん、ウチの父親の方が良心的だね、私の防大の卒業証書を未だに母親の仏壇にお供えしているし」


「悪かったなぁ・・・・・・」


 そう言って、俺は泡盛を飲み続ける。


「・・・・・・今日、部屋来る?」


「・・・・・・今日は中出し出来る?」


「さすがにテストパイロットの任務に支障を来たすから、それは勘弁・・・・・・でも、帰国したら・・・・・・子ども、作ろっか?」


 それって・・・・・・プロポーズかよ!


「えっ・・・・・・結婚ってこと?」


「いや、別に結婚とは言っていないよ? 気持ちの良いことをして、出来ちゃったならば、籍を入れれば良いし・・・・・・ピルを飲んでいても、中出しは推奨されるものじゃないし、あの頻度でよく妊娠しないよなと思うよね、私たち」


「というかさ・・・・・・」


「なぁにぃ?」


「俺たちって、そもそも論として、付き合っているの?」


 菅原は「ふふ」と笑い出す。


 セフレとも違うし、かと言って、交際しているわけでもない。


 友達と言うには一線を超えすぎているし、戦友や同僚に同期と言うにしても、あまりにも俺たちは交わりすぎてしまった。


 よくよく考えたら、俺たちはどういう関係性が正しいのだろうか・・・・・・


「凄い大人な関係ということで良いんじゃない? あと、私はあんたの自衛官としての能力に好意を抱いているんだよ」


 菅原はサディスティックに笑う。


「どういう意味? 俺は至って、平均的な数値しか残していないけど?」


「根性は数値では測れないよ・・・・・・あとは意外と真面目だし」


「・・・・・・そうなのかな」


「いや、いや、アメリカから帰ったら、私を孕ませて、籍入れるんだろう」


「・・・・・・それって、結婚だよな」


「うん・・・・・・」


 菅原が白い歯を見せて、微笑を浮かべる。


「私と結婚してください」


「・・・・・・おう」


「態度が生意気だなぁ・・・・・・まぁ、いいや、今日は残念だが、エッチは無しで、部屋で映画を観よう!」


 飯を食っている最中なんだけどな・・・・・・


 西暦二〇二五年三月。


 その日が来るのは二か月後のことだった。


4


 その後に四月に入り、菅原は渡米をした。


 その後のゴールデンウィークでの休みで帰京して、東京の銭湯に入り続けて、居酒屋で一人、飲み続けて、沖縄の部隊に帰投した時にその知らせを聞いた。


「村木・・・・・・残念な知らせだ」


 俺は上長のその知らせが何なのか分からずに、担当する小隊の部下たちの資料を眺めていた。


 こいつもこいつもなぁ・・・・・・ぬるいなぁ、今度、米軍の海兵隊部隊と訓練だから、この調子じゃあ、陸自が舐められるぞ。


「村木・・・・・・聞こえているのか?」


「すいません、仕事中でした・・・・・・残念な知らせって何ですか?」


「菅原が訓練中の事故で死亡した」


 俺は一瞬、時が止まる感覚を覚えた。


「・・・・・・はっ?」


「お前も仲が良かったとは思うが、一応は訓練中の殉職ということで葬送式(自衛隊における殉職した隊員の部隊葬)が行われるらしい、お前らの同期全員集まるかな・・・・・・俺も残念でしょうがないよ」


 菅原が・・・・・・死んだ?


「ちょっと、待ってください・・・・・・菅原が死んだ?」


「現実を受け入れられないのは分かるが・・・・・・どうする? カウンセリングでも受けるか? それとも、休むか?」


 俺は膝から崩れ落ちるのを感じた。


「村木・・・・・・・」


「嘘だろう! 何でだよ! つい最近もテレビ通話では元気だったじゃねぇかよ!」


 俺は頭をかきむしる。


「嘘だ! 嘘だ! 嘘に決まっている! そうですよね! 隊長! 菅原に限って、死ぬなんて・・・・・・」


 隊長は俺の胸倉を掴んで、強制的に立たせる。


「俺だって、そう思いたいよ! だが、死んだんだよ! あいつは! 俺もどうしていいか、分からんよ」


 その一言が村木を絶望の淵へと陥れる。


「嘘だぁぁぁぁぁぁ!」


 村木は崩れ落ちて、泣き崩れた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ! あぁぁぁぁぁぁ!」


 同僚たちが気の毒そうな顔で眺める。


 菅原・・・・・・何で!


 帰ってきたら、一緒に結婚するって、言ったじゃねぇかよ!


 気が付けば、業務が出来ないほどに泣いていた。


 西暦二〇二五年五月下旬。


 菅原香二等陸尉が殉職。


 村木の所属する部隊では悲しみが広がっていた。


5


 その後、菅原の葬送式が部隊内で執り行われ、防大の同期と当時の教官たちが集まり、式は盛大に行われた。


 事前に菅原の死に顔を眺めた、村木はただ、泣き続けていた。


 上長の訓示の中、制服姿で敬礼をするが、まだ、涙が出そうで、耐えるのが辛かった。


 ここにいる、防大の同期や先輩に後輩たちが皆、同じ気持ちだった。


 菅原は当時の防大関係者の中では永遠のアイドルだったのだ。


 そのアイドルは帰国したら、俺と結婚をするという夢のような展開が待っているはずだった。


 なのに・・・・・・何で・・・・・・


 菅原は殉職により、二等陸尉から三等陸佐へと昇進をすることになったが、本人は俺よりも階級が上がったことを何と言うだろうか・・・・・・


 そう考えると、悲しみが深くなり、どうにもならなくなる。


 そして、葬送式が終わり、有休を使い、部屋で引きこもっていると、手紙が届いた。


 差出人は不明だった。


 誰だ・・・・・・


 とりあえず、開けてみる。


 そこには一言だけ書かれていた。


ー彼女の死の真相を知りたければ、六月十日の午後二十時に沖縄のおでん屋でー


 死の真相・・・・・・


 菅原の死は事故のはずだが?


 何が分かるというのだ?


 村木は指定された日時に沖縄にある、おでん屋へ向かった。


 すると、そこには有街や大矢に教官だった、坂城もいた。


「何で・・・・・・」


「お前もか・・・・・・あの手紙、貰ったか?」


 村木は黙って、手紙を取り出す。


「何なんです? これ?」


「知らん、だが、分かっていることは全員が村岡の死を悲しんでいることだ」


 坂城はそう言って、酒を煽る。


 すると、そこにアロハシャツ姿の男が店に入ってくる。


「いやぁ・・・・・・沖縄は暑いですね、ここが南国だということを痛感する、私の本国は寒くてね・・・・・・」


 何だ・・・・・・こいつ


「皆様は北京には行ったことはありますか?」


 こいつ、中国の関係者か!


「何だ・・・・・・お前、人民解放軍か?」


「いえ、統一戦線工作部のリー・ミーチェン大佐とだけ言っておきましょうか、あっ、本名ですよ」


 リーと言われた、男は流暢な日本語で泡盛と沖縄のおでんのメニューを頼みだす。


「・・・・・・彼女の死の真相を教えましょう、その後にあなたたちは自分の処遇を決めれば、良い」


 そう言って、リーは泡盛のグラスを置く。


 西暦二〇二五年六月。


 村木たちに悪魔の契約が迫ろうとしていた。


6


 リーの話の話しの詳細はこうだ。


 アメリカ陸軍で最新鋭高機動兵器、ソルブスの実験が行われており、菅原の駆る、最新鋭機、アダムは訓練ではトップクラスの成績を誇っていたらしい。


 しかし、それを問題視したのはアメリカ国防総省であり、アメリカ大統領のアロン・マクドナルドにもそれが知れ渡り、模擬戦で、東洋の軍人がアメリカの軍人を撃破され続けるのは、とても、印象が悪いと言い放ったらしい。


 そこで、大統領に忖度をした、レインズ社とそれを配下に収めている世界的秘密結社である、ピースメーカーの要員が彼女のマシーンのОSに細工をして、実弾を伴った、訓練で回避が出来なくなるプログラムを意図的に仕込み、それが起動して、菅原は射殺されて、訓練中の不運な事故として、片づけられる形となったそうだ。


 マクドナルドはそれを知った上で立石総理大臣には哀悼の意を評したそうだが、ピースメーカーは裏で暗躍して、ソルブスシステムへの評判を下げない工作をしているらしい。


 ソルブス・・・・・・あんなものが無ければ、菅原は俺の元へ帰ってきていた。


 そう思っていた時だった。


「皆様は復讐を考えますか?」


 リーはそう言う中で、皆が動揺した。


「あんた・・・・・・俺たちに国を裏切れと言うのか?」


「あなたたち、幹部自衛官の職務に対する忠誠心が試されていますね? しかし、同時に彼女を殺した、巨悪を許すことは出来ますか? あなたたちに?」


 村木の心は決まっていた。


「部隊を用意することは出来るか?」


「村木!」


「志願者が一人出たそうですね・・・・・・どうされます?」


「俺も志願する、だが、一週間は皆に時間をくれないか?」


 坂城がそう言う。


「一晩ですね、それ以上は待てない・・・・・・ただ、お仲間が増やせれば、万々歳ですがね」


 そう言うと、村木は店を出ようとする。


「連絡は貰えるんだろうな?」


「我々はプロの工作員です。仲間集めは得意なのでね」


 それを聞いた後に村木は会計を済ませて、那覇の街を走り出した。


 気が付けば、天候が悪くなり、スコールが降り始めた。


 土砂降りの雨の中で走り続ける。


 俺は・・・・・・国を裏切る。


 最愛の人を殺した、アメリカやそれに追従する、自分の祖国に復讐する為に・・・・・・自分のキャリアを・・・・・・・家と言ってもいい、職場を裏切る。


 菅原は怒り出すかもしれないが、全てはお前があんな、ゲテモノ兵器なんかのテストパイロットなんかに志願するのがいけないんだよ。


 ごめんな・・・・・・だけど、俺は許すことが出来ないんだ。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 周囲の目も気にならずに叫びながら、スコールが降り注ぐ、那覇の街を走り続ける。


 西暦二〇二五年六月十日。


 村木は自衛隊を辞める決心を固めていた。


7


 その後、自衛隊を辞めた、村木はリーの手引きによって、同期のB幹の隊員たちが大量退官することを確認した後で、東南アジアに渡り、同期の元B幹や闇バイトで集められた素人どもの混成部隊が築き上げられたと同時に訓練キャンプに身を投じた。


 オペレーションステーションストライクス。


 それが今回の東京駅占拠の正式な作戦名称だが、隊員の間では名称は東京駅占拠の名称で通っていた。


 東南アジアでの訓練キャンプは中国側が用意した、西側の武器を用いて、東京駅を模した、巨大な訓練施設で、ひたすら、制圧の訓練を行い、素人どもに中国側がスパルタな軍事訓練を課す。


 この流れが一年半、続き、西暦二〇二六年十月に俺たちは日本へ帰国して、国内の中国シンパが経営する大企業の敷地内に拠点を張り、訓練を行い、その日が来るのを待っていた。


 しかし、ここに来て、坂城が俺たちを欺いて、自明党の残っていた、裏金を強奪する形で、政府に交渉をしだしたので、俺たち、防大組は大いに憤慨をした次第だ。


 そして、今、俺は菅原を死に追いやった、新型機動兵器ソルブスを相手に生身で戦っている。


 強すぎるぜ・・・・・・こいつ。


 村木は銃撃戦に興じるが、相手が強行突破をすれば、いとも簡単に粉微塵になることを知覚していた。


 すると、ソルブスは驚異的な速度で、接近をすると、ナイフでB幹組の同期たちの頸動脈を次々と切りつけ始めていった。


 同期たちの首から、血しぶきが上がる。


 死ぬのか・・・・・・俺は。


「村木ぃ!」


 硬直をして、立ち尽くしていた、村木を有待が押しのける。


 有街がナイフで心臓を一突きにされ、絶命した。


「有街ぃ・・・・・・」


 何なんだよ・・・・・・こいつ。


 化け物め!


 そう思いながら、その鋼鉄の装甲を相手に特攻を仕掛けたい心情だったが、冷静さを保ち、今は逃亡をすることを俺は選んだ。


 今は状況が悪い・・・・・・


 とにかく、絶対的な状況であいつを殺さないと、ダメだ・・・・・・


 全速力で逃げるが、ソルブスは何故か、追っては来なかった。


 逃がすのか・・・・・・


 屈辱感が胸に滲んでくる。


 村木は涙を流していた。


 俺は復讐も出来ず、同期を殺されて、何をやっているんだ・・・・・・


 村木は敗走を続けたが、すぐに復讐の対象を変えた。


 隊長を殺そう・・・・・・


 あいつは金で俺たちを裏切った。


 あいつだけは許さない。


 村木は残り少ない、弾倉を拳銃に装填して、安全装置を外した。


 時刻は午前五時一四分。


 東京駅占拠から十一時間が経過していた。


8


 二色瑞穂は職員用の通路から、駅長室を目指して、歩いていた。


 途中、改札の方面から、轟音が響く。


 同士討ちをしたり、何だか、変なことまで起きていたりで、忙しいな・・・・・・


 ふと、スマートフォンを眺めるが、ジャミングが継続されたままだった。


 吉希君との連絡は取れずじまいか・・・・・・


 向こうもノーマークだから、適度に戻らないといけないと思うのだが。


 すると、奥の方から西洋人の顔をした女がやって来た。


「止まれ!」


 英語でそう声をかけられて、二色は手を上げる。


「民間人か・・・・・・」


 英語の主は白人の女だった。


 キレイな青い瞳をして、鼻の高い、金髪のショートカットだった。


「あなたこそ、誰?」


 瑞穂も英語で答える。


 英語は民間の大学ではトップクラスの成績だったので、自信はあった。


「答える義務は無いが、あんた、何者だ?」


「いや、先に答えるのが義務でしょう・・・・・・」


「日本のルールは分からない」


 そういう、女だが、敵ではない感覚を覚えさせた。


「私は二色瑞穂、一応は自衛官よ」


「・・・・・・その軍人さんが何をやっている? ダイハードの真似事をしているのか?」


「まぁ、成り行きでね? あなたは?」


 女は答えづらそうにしている。


 だいたい、人質ならば、騒動が収まるまで大人しくしていると思われるが、その状況で、この従業員用の通路に来た、この女。


 さっきの騒ぎの震源地たる存在か?


 ならば、味方にしておいた方が良いだろう。


「私は・・・・・・今回の東京駅占拠の主犯格を全て、処刑する為に派遣された、処刑人だ。あんたが仮に現役の自衛官ならば、協力をする必要があるな」


「処刑人・・・・・・所属は?」


「言えない。ただ、先ほどから、何人もの武装グループの男たちを殺し続けている、そして、私は敵の首領核が駅長室にいることを知っている」


 こいつ、本物だ。


 何が本物かはこの際、放っておいても、敵の首領核の位置を知っている時点で、

信用における。


 こいつは味方にしておいた方が良い。


「それは私も知っているけど、どうやって、ここまで、生き延びたの?」


「知っているのか・・・・・・本物の反逆者だな。まぁ、私が生き延びた理由としては新機動兵器ソルブス、そのテストパイロットである、私が処刑人として、この国に派遣された、あとはこの兵器の実証実験の側面もある」


「それは良いけど・・・・・・あなた、名前は?」


「マリアン・フロスト」


「じゃあ、マリアンって、呼んでい良いかな? 何処を目指しているの?」


「主犯格の犯人を殺す為に駅長室を目指している、しかし、逃亡をしている可能性はある」


 確かにジャミングをされている、今となっては敵が駅長室に固まっているという確証は無い。


「でも、東京駅は包囲されているから、中からは出られない」


「そうだな、だが、決まっていることはある。見つけ次第、殺す・・・・・・そうすれば、私は東京の高円寺で、深夜まで飲み明かすのを褒美にするつもりだ」


「外国人なのに高円寺の良さが分かるなんて、通だね、私も一緒に行っていい?」


「・・・・・・任務を完了できて、生き残れれば」


「決まりね」


 そう言って、二人は歩き始めた。


「私のお気に入りの銭湯も教えてあげる」


「風呂屋か・・・・・・中々に乙だな」


 そう会話をしながらも二人には笑顔は無かった。


 時刻は午前六時十二分。


 東京駅占拠から十二時間が経過。


9


「いかがでしょうか? 我々の最新鋭機動兵器ソルブスの性能は?」


 レインズ社のカールマンがそう自慢気に語ると、立石は「素晴らしい性能ね・・・・・・でも、結構、お高いんじゃない?」とだけ言った。


 周りの閣僚たちはその性能と残虐さにただ、ただ、絶句をしていたようだった。


「まぁ、アメリカ本国でも試験機扱いなので、これから、正式採用に向けてのコンペが行われますが、日本政府としてもソルブス計画に賛同を頂ければ、幸いであると」


 立石はニタリと笑い出す。


「いいわ、アメリカのマクドナルド大統領とも話すけど、日本政府も正式にソルブスの導入を検討します」


 そう言うと、石倉が「総理! 正気ですか! あれを見て、言っているんですか!」と噛みつく。


「あの性能の凄まじさを見れば、わが国でも導入するのは自然の通りよ」


「非人道的過ぎます! あんな、人間を人間とも思わない兵器などと!」


 しかし、防衛大臣の大泉は「それが戦争ですよ、石倉先生。環境大臣ごときが口を挟む問題じゃない」と言い出す。


「お前・・・・・・環境省をバカにするのか!」


「いや、お前・・・・・・弁えろよ、畑が違うんだからさ」


 官房長官の三橋が苦言を呈した時点で、その場の空気はソルブスという兵器への支持をする雰囲気へと変わっていった。


「素晴らしい兵器ね・・・・・・導入先と言うと、陸自になるのかしらね?」


「我々は警察用の設計を考えています」


「警察用? 日本の警察にはあれは不要よ、日本は治安が断トツに良いのよ?」


 すると、カールマンは不敵に笑う。


「いいえ、総理、近い将来、警察でもソルブスが必要になるぐらいにこの世界の治安が急激に悪くなる日が来ますよ・・・・・・まぁ、そんな日が来ないために我が国の大統領は力による平和を掲げていますので、ご安心を」


「そうね・・・・・・まぁ、昨今は殺人事件に政治に対する暴力も目立つから、あなたの言っていることも一理あるけど、私から警察にはあれは必要ないと思うけど・・・・・・まずは軍事用が欲しい」


「ありがとうございます、ではーー」


 すると、石倉が急に立ち上がる。


「この死の商人め! お前らのせいで、日本がおかしくなっちゃうじゃないか!」


「石倉先生・・・・・・仮にも相手は客人ですよ、どうしてもと言うなら、罷免しても構わないんですけど、よろしいですか」


「自分から、辞職しますよ・・・・・・あんたは最低の総理大臣だ、日本を戦争に巻き込みたいのか!」


「私から言わせたら、あなたは老害よ。いつまでも、日本が平和だった頃の思い出を忘れられない年寄りどもは新たな日本の創成においては不要で邪魔な存在です・・・・・・退場していただけない?」


 そう言われた、石倉は机を蹴り上げると、そのまま、会議室を出て行った。


「よろしいのですか? 党内のリベラル派との対立が決定的になりますが?」


 三橋がそう言い出すが、立石は「私は国民からの信任を得ています」とだけ言った。


「続けて、良いかな?」


 その一言で、会議室には沈黙に包まれた。


 ただ、一人、カールマンだけがほくそ笑んでいたが。


 時刻は午前六時四十八分。


 東京駅占拠から十二時間四十分が経過していた。


 続く。



 次回、第六話 突入


 来週もよろしくお願いいたします!


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