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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
人類種領区域との関わり
95/221

95ー冒険者は歯ごたえのある依頼を受けたい2(太陽視点)ー

 は~い。いつも元気な太陽です。

 新米冒険者としては特殊なスタートだったとは思うけど、一応冒険者テンプレートは全部体験したよ。素行の悪い先輩からの可愛がりを撃退。受付に並ぶ列に割り込まれたので、横っ腹へきつい一撃を加えて撃退。僕のパーティーの女性陣に絡んで来た中の下程度の冒険者を鎧袖一触。活動開始から数時間で凄く勉強になった。

 冒険者って学ばないらしい……。

 それから採取系の依頼を根こそぎ受注して、直ぐにクリアして大量に依頼品を持ち込んだら獣人族系の受付嬢のお姉さんにめっちゃ吠えられた。採取依頼中に出てきた僕のランク帯では普通倒せない魔物を大量に仕留めて行ったら、ギルマスのガッツおじさんにがっつり怒られたし。採取依頼中に困っていた寒村を慈善の心で助けたら、サブマスのフェーダお姉さんに怒られりと……。他の冒険者からも、職員さん達からも問題児認定を受けている。


「別に悪い事はしてないのに……」

「いや、ギルドを通さずに依頼を受けたのは限りなく黒に近いグレーゾーンだから。報酬をもらわなかったから厳重注意で済んだけど、あれで報酬を受け取ってたら一週間の活動禁止だったんだからね?」

「えー……。でもー……」

「太陽君。世の中では君の思う事だけが正義ってわけじゃないんだ。大人になりながら覚えて行こう。僕も一緒に頑張るから」

「ありがとう。ガザンさん」

「いいんだよ。皆、何事も経験だから」


 元は聖騎士だったらしいガザンさんはそれなりに年上だけど、優しいお兄さんみたいで凄くいい人。僕が失敗しても、慰めてくれるし、次があると前向きに考えることの重要さを教えてくれる。もちろん優しいだけじゃなくて厳しい面もあるけど、面倒見が良くてとても助かるんだよね。

 ただ、まあ、僕らは出来高ランク制の昇級方式のギルドだからね。僕らがガッツリ依頼をやりこんだり、偶然遭遇した非適正難度の魔物の納品などから、かなり上がってるんだけどね。異例の速度と異例な自体を引き起こしながら、僕達パーティーの“陽光の聖剣”はEランクスタートから、いつの間にかDの丙ランクにランクアップ。次はCランク帯へランクアップするには、試験を受けることが必要になる。Cランク帯までは順当にクエストを受注し、納品や討伐していれば上がれるんだけどね。試験はめんどくさい。

 試験を受け、順調にランクアップできたら僕たちはCの甲ランク。次は試験無しでCの乙ランク。同様に試験なしでCランク最後はCの丙ランクになる。Cの丙からランクアップするには試験が必要になり、ランクアップすればBの甲ランクにランクアップできる。


「Cランク試験って何をすればいいんでしたっけ?」

「確か護衛任務ですよね? 5人パーティー制でギルドと契約する荷馬車の護衛任務だったと思う」

「補助パーティーはどうします? 私達も受けたいと思いますけど」

「いいと思いますよ。できるだけランクアップした方がいいですからね」


 僕をリーダーに主戦力メンバーもサポーターメンバーも、ある程度の戦力は充実している。

 僕のパーティーでは頼れるサブリーダーに狼騎兵のミモザさん。元聖騎士で頼れるお兄さんでタンクユニットのガザンさん。無口で何を考えてるかわからないけど面白い、ユグドラシル出身のエルフ族で魔法使いのマーガレットさん。魔物の森で鍛えられたサテュロス族のレンジャーであるメルバさん。こちらのパーティーはたぶん、ソロだとしても普通にクリアできる。敢えてソロで受けてみるのもいいかな?

 サポーターチームのリーダーには、最年長で経験豊富なお母さんみたいな感じの元セルベリエ神教シスターのリリエラさん。サブリーダーで様々な管理面も行っている錬金術師のエメラルドさん。建築班所属で小柄だけど、物凄く勝気で物凄く強いミミカさん。鍛冶場に居たドワーフ最若手で副統括をしているドゥエトさん推薦のルベッガさん。ミルフィモーム族で生活面のサポーターを務めるメーラさん。このサポーターメンバーも普通に強い。余程強敵にぶつからない限りは余裕で乗り越えると思う。主力メンバーよりもトリッキーなところがあって、搦め手だけならこちらのメンバーの方が強いかも。


「パーティーはパーティーで受けることを推奨されてますね。敢えて個人で受けてしまうのもいいですが、我々はパーティーで受けましょう」

「サポーターチームはパーティーで受けるんですね。じゃ、僕らはどうします?」

「バラバラになるのは面倒なので、パーティーで受けましょう。どの道変わらないので」


 ちなみに何故パーティーで受けることが推奨されているかと言うと、Cランク帯まではソロの冒険者が多くほとんどが連携未経験だからだ。冒険者ギルドも生存能力の高いパーティーは優先的にランクを上げていきたいからだと思われる。ちなみに、この後に続くBランク帯の試験になると、パーティーを組んでいる受験者でも一人一人バラバラの状態で受験を義務付けられるようになる。Bランク帯からはパーティーワークからレイドワークを求められる部分があり、より大規模な連携や個人の判断力を求められるからである。Cランク帯まではそのような依頼を求められない故の判断だ。

 ということで、僕達はメインパーティーとサブパーティーとで別々にはなるけど、現状のパーティーでCランク帯到達試験を受験する申請を行っておいた。

 僕達はいろいろやらかすので、問題児パーティーなどと言われているけど、個々人の能力は非常に高く期待の新星である事は確かなのだ。ギルドからしてもギルドに所属する冒険者が作る団体のクランとしてもだ。Bランク帯に突入するとクランというパーティーよりも大きな括りの団体を設立して合同パーティーとして依頼を受けられるようになる。その上のAランク帯に入ると、個人にアライアンスチームの統括をできる権限が生じるようになるらしい。Cランク帯が一人前。Bランク帯になると一流。Aランクにまで至る冒険者は数が限られ、そこまで到達できれば猛者と称される程度の冒険者だ。この支部にも一人しかいないSランク帯冒険者ともなれば、伝説として認識されるらしいよ。


「太陽君はどの程度までランクを上げるつもりなの?」

「最低でもAランクは固いかな~。Sランクも到達条件を聞く限りでは行けそうな気がするんだけど……。試験はめんどくさいし、どうしようかな~?」

「ミモザさんはどう? どこまで食らいつけそう?」

「Aの甲まではなんとかでしょうね。マルクの存在進化の速度も関係しますけどね。そういうガザンさんはどうなんです?」

「私はタンクだからねえ。ぼちぼちBランク帯のどこかで落ち着こうと考えているよ。パーティーワークなんかの連携には自信はあるけど、私は特殊な攻撃スキルは持たないから」


 そうなんだよねー。この世界は職業による大きな壁があるので、ガザンさん程優秀な人でも何かしらの突破口となるスキルの習得や、職業進級が起こらなければ高位冒険者へ上がるには絶望的な職業の人も居る。その代表格が仲間の壁となり、戦線維持を支えるパーティーワークの肝とも言える“タンクロール”の人物なのだ。余談だけど、その次に壁が大きくなっていくのがシーフやレンジャーなど。個人戦での火力が出しにくいジョブの人物から徐々に壁が厚く高くなり、高位をめざしにくくなってしまう。

 だけど、僕からすればパーティーワークを行わなければ勝てないような敵を前にした時に、ガザンさんやメルバさんなどを欠いた状況は考えたくない。僕一人ではどこかで限界が来るし、僕だって対個人戦ならペロ助君と打ち合える程度の実力はあるけど、対多数戦闘に僕のジョブは向かない。そう考えると、仲間の存在は僕個人の考えでは非常に大きいんだよ。

 だから、どこかで僕を除いた定職のメンバーを職業進級させたい。欲を言えば、何かの条件を整えて固有職に覚醒させたいところ。

 僕はなんとなくわかるんだよね。皆の進級条件に何が足りていないのか……。これが勇者の持つ“絶対的主人公の勘”というスキルの恩恵。このスキルは自分よりも上位者には効果が無いデメリットはあるけど、自分よりもレベルが低かったりすると、何かのきっかけでその存在について閃くようになるのだ。敵であれば挙動を読みやすくなるし、弱点に気づきやすくなる。見方ならば怪我をしていたり、サポートのタイミングをつぶさに把握できる鬼ヤバスキルなのだ。大事なことだから二度いうけど、自分より位階の高い相手には効果が無い。これがほんとに残念だ。


「しかし、太陽君はいいけど、我々が固有職を得たらばあとが面倒な場合もあるのだよな」

「そうですね。私は身よりも無いので問題はないですけど。困るメンバーもいますよね?」

「え? 私は困りませんが?」

「うん。私も……困らない。むしろ……望むところ」


 ……ウチのパーティーは問題ないらしい。参考までにサポーターパーティーにも聞いてみたけど、特に問題ないと皆が口をそろえた。人族メンバーは最年長のリリエラさん含めて家族もおらず、身寄りもない。獣人族のミミカさんに至っては早く強くなりたいと言うし、メーラさんも外に居るのだから強くはなりたいと言う事だった。

 なので僕以外のパーティーメンバーを鑑定し、ざっくりとした条件を探ることにする。

 僕は勇者の固有能力で全てのパラメーターが均一に成長するせいか、職業スキルや特殊な武技スキル以外はさほど強くない。勇者は成長するまでは器用貧乏なジョブなのだ。その僕がなんでもできることをいいことに生産系上級職の錬金術師が使う“組成鑑定”と、生産系中級職の“登用名人(スカウター)”が使う“人物鑑定”を駆使して個々人の状態を知る。勇者のジョブの便利なところは本当になんでもできること。逆に一つに特化して伸ばせない弱点があるけど……。


「帳面にしておきました!」

「本当に何でもできるんだね。勇者のジョブって便利よねー」

「そうですね~。天職であるかないかで大きく変わるみたいです。僕の場合は固有の勇者系ジョブが天職なのでそれなりに戦えますけど……。低レベル時の勇者なんて最悪ですよ。ホントに無能なんです。それこそパーティー追放とかもあり得ちゃうくらいwww」

「なんでもできて強いのは反則。神族もぶっ壊れジョブは作らないってことだと思う」


 滅多に話さないマーガレットさんが今日は饒舌だ……。ああ、彼女は魔法学者でありながら、スキルやジョブなども関連した論文を執筆しているからか。自分のフィールドに僕らが入って来たから、いつもなら開かない口を開いてくれたのだろう。

 マーガレットさんの言う通りで、ぶっ壊れジョブはこの世界に存在しない。ぶっ壊れキャラクターと言われかねない人物はそれなりに居ると思うけど。そうなり易いのが異世界転移者や異世界転生者で、英雄級戦力となる割合の高さと初期ステータスの高さも段違いだからね。まあ、僕もその異世界転生者だから、基礎ステータスが高めに推移している。僕は不遇系転生主人公や不遇系転移主人公じゃないしね。

 個々人のスキルアップや進級速度の高さはパーティー全体の成長に少なからず関わる。でも、なんで生産系のジョブにも戦闘系スキルが生えてるんだろう……。生産系スキル保持者って基本的に外で戦う事ってないと思うんだよね。何事にも例外が居るからだろうか?


「それは神族の遊び心では?」

「そんなところに遊び心を持たれても困惑しかしませんけどね……」

「そうかな? 生きる上で楽しみは必要じゃない?」

「それはマーガレットちゃんが楽しいだけじゃないかしら?」

「私も楽しい。神様も楽しい。皆ハッピー?」

「最後、疑問形なのね」


 不思議ちゃん系のマーガレットさんの独特のテンポが炸裂している。これはこれで面白いのだけど、ツッコミ役のミモザさんはげんなりしているな。その隣でミモザさんの相棒の銀魔狼のマルクは寝息を立てているけど……。その内にはリリエラさんがどうにかしてくれるだろうし、僕は構わず宿屋の料理を食べる。早くお金を貯めて、パーティーハウスを借りるか買えるようになろう。絶対自分達で料理した方が美味しいと思う。やっぱり、ご主人様の拠点は素晴らしい。あそこだけこちらの世界から浮いた場所になりかけてるよな~……。

 それは皆も同じ気持ちらしく、メーテさんの野営ごはんの方が美味しいと感じるしね。これは食材や道具の品質によるところが大きいね。料理人のスキルの差よりも、食材のランクの差が非常に大きい。だからこそ、僕達がたくさん持ち込んだ食材を宿屋とか街中では出せないし。ホントに早くお金を貯めよう。その為には大物狩りがいいんだけど……。ランク適正外の魔物を狩ると怒られるしなあ~。どうしたらいいかな?

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