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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
人類種領区域との関わり
81/221

81ー陽神からの願い ハルドエン皇帝家への助力ー

 転生からおおよそ550日。ちょっとした騒動は毎日起こるので、特に気にしていなかったけど、今日の要件はかなり面倒くさかった。それでも神族からの直々の願いともなれば僕も動かざるをえない。ただ、僕自身が動く事案ではなく、僕の仲間を動かすことで解決する案件だろう。

 僕が朝食を食べていた時、陽神さんから神託が来たのだ。

 なんでもハルドエン帝国が危ないらしい。ハルドエン帝国は主戦力の勇者を失い、多くの戦力を僕によって削り取られたことで、国勢が一挙に衰退。武力面、内政面の両方で一気に力を失い、周辺国からの圧迫や攻撃に対抗しきれなくなってしまったのだそうだ。神族としてはそれ自体は問題と言うわけでもなく、国の存亡などは世界の長い歴史の中で何度となく繰り返されたことだから。

 それでは何を僕にして欲しいかと言うと、ハルドエン帝国の皇帝とその娘を護って欲しいと言う事だった。ハルドエン帝国は陽神さんの聖地に帝都があり、大昔に陽神さんがあの地を治めることを許可したので、ハルドエン帝国の皇帝家には陽神さんの加護が強弱様々に現れるらしい。アカメ二号からも聞いているが、皇帝はまともな人物だったらしく、あれからも必死に帝国を支えたが……。腐っていた部分が多すぎたようだ。


「……と言う事で、アカメカブトトカゲ特殊部隊の皆には病床の皇帝母さんと、今はその代わりをしている15歳くらいの娘を中心に助けて欲しい。かなり拙い状況なんだって」

「ふむ。それは構わぬのだが、それなりに大きな国家であったのだろう? その国がいきなりそれ程の苦境に見舞われるものなのだろうか?」

「うん。なんというか、帝国を見限った諸氏が独立して自治を作り出しちゃったのが原因みたいだね。資源が分割されちゃうと、ああいう大きな国は疲弊し易くなる物なんだ。それにその離反勢力がかなり攻撃的みたいなんだよね。このままでは間違いなく皇帝家は全員処刑されちゃう。陽神さんの加護与えているし、長期間あの国と関わり続けてる。本来ならば協力しなくてはいけなかったらしいけど……例の事があったからね」


 アカメ一号も納得したように深く頷き、アカメ二号へ視線を向けた。

 アカメ二号は仕事は選り好みしない。以前もユグドラシル・エルフ王国の件で、僕から出された裏任務を完璧に執り行ってきた。アカメカブトトカゲ特殊部隊の面々は、出撃自体には異論はないとのことで、現場での指揮権をある程度くれるならば…と了承。これは前回の事が大きく関わっている。僕達は魔物の森という魔境のど真ん中に居を構えているので、外の国の情勢までは詳しくは流れて来ないのだ。

 外との交易や細々とでも通商があればまた話は変わるのだが、環境的にも人類種が関わるには、僕の庇護が必須なので難しい。

 だから、一定の自由度を指揮官に与えないと、行動が抑制され過ぎてしまう。それで任務遂行の難度が上がれば目標達成に支障をきたし本末転倒になりかねない。そう言う事でアカメ一号を隊長に、アカメ二号を副隊長としてアカメカブトトカゲ特殊部隊をハルドエン帝国へと放った。僕は僕でできることを行う。

 霊幻樹の森での作戦行動中に異世界ドローンの試作機を用いた。それの暫定的な完成版を運用して人類種の領域側を調べる部隊を派遣しようと思う。これから定期的に送ろうと思っていた部隊なので、それなりに訓練もしっかりとしている。


「今日のコンディションはどうかな?」

『◎』

「そうか。じゃあ、身の安全を一番に頼むよ。万が一にも撃墜されたりしたら、バディの妖精族と一緒に地上から蟻型ゴーレムで南へ逃げてね」

『OK』

「新しい札を作ったんだね。ありがとう。それなら分かり易いよ」

『(^▽^)/』

「ついに顔文字まで出して来るようになったか……。君達も変な物を引っ張り出して来るね」


 異世界ドローンの部隊運用可能な機体は全部で30機。その内10機は予備機で、作戦実行中に何かしらの問題に出会った時に破壊される可能性を考慮している。そして、今回の作戦で動くのは10機5部隊。一部隊は2機のペアで情報収集をメインにしている機体と襲撃を警戒する機体で一組。人里の上空では滅多なことが無いと攻撃を受けることはないらしいけど……。人族に見つかると騒ぎになりかねないとのことで一応の警戒策だ。

 メインパイロットはその総員が10㎝から15㎝のミニマムゴーレム。体格の問題と、魔道具へ直接干渉できると言う強みがあってのこと。中でも機体運用に突出して秀でた個体を選出している。そのバディに30㎝くらいに成長した妖精族。万が一の時にパラシュートの代わりになり、攻撃からの回避と逃避を優先して飛ぶのが上手い妖精が選出されている。

 魔物の森南方には複数の人族国家があるので、そちらの大まかな情報収集が目的。可能ならばハルドエン帝国の帝都方面も行いたかったが、飛行可能時間の問題で帰還ができないことから断念。これは異世界ドローンの性能向上もしくは外部の隠し拠点の設営を考慮するべきかもしれない。


「それじゃ、ドローン部隊の皆も自分の身の安全が第一だから。無理せずによろしく」

『『『『『(@^^)/~~~』』』』』


 最新型“異世界ドローン甲型”は以前の16枚のプロペラを倍の32枚に増やした。六角形の枠に合わせて伸びているアームの先端部に16枚。胴体部分の下部に16枚の小さなプロペラを構え、離着陸の効率化と高度の維持を行えるようにしたらしい。外側のプロペラは飛行方向と速度の加減速にだけ使われるようになっている。それから防衛兵装として結界展開魔法柱と、衝撃魔法発射砲がコックピットの後ろに。構造上、下方への攻撃は無理だが、そもそもこの異世界ドローン甲型は偵察ドローンだ。形状も滞空に適した形なので、魔法使いの索敵魔法などからも見つかりにくいステルス性も持ち合わせる。あとは時間制限と燃費悪さの問題もあるが光学迷彩魔法展開機も搭載されている。

 僕が見ている目の前で離着陸用の広場から、管制塔のミニマムゴーレムの指示を受けて次々に離陸していく。

 近くに居る時はかなり大きなプロペラの駆動音が聞こえるが、距離を取るとそれもほとんど聞こえない。10機5部隊の異世界ドローン甲型部隊が見えなくなったので、待機していたヒノエとキノトにも指示を出す。アカメカブトトカゲ特殊部隊が居れば問題は無いと思うが、ハルドエン帝国から離反した諸氏の情報を集めたい。特に領土拡大に意欲的な者が引っ張る形の派閥は注意が必要だ。なので、ヒノエにはハルドエン帝国西部方面の攻撃的勢力の“ガダルヒム都市連合”に。キノトにはハルドエン帝国南方の新生“マルニバツ王国”へ短期潜入任務をお願いする。


「うむ。そう言う任務待ってた。この前の失態はここで汚名返上」

「うむうむ。ヒノエの言う通り。ここでしっかりと名誉挽回」

「いや、この前の事は気にしすぎだって。アレは誰がどうやっても結果は同じだったし。じゃ、無理せず頑張ってね」

「「うぃ。ドロン…」」


 ヒノエとキノトが妖術で消えて行った。ヒノエとキノトも隠密なので目立たないだけで、僕らの拠点では重要な中核戦力だ。僕からすれば戦闘力だけがこの世界の全てではない。ヒノエとキノトのように情報戦略を行使する上で重要なユニットである。見た目はかわいらしい幼児だが、人類種の英雄級戦力とも戦える戦闘力も持ち合わせ、その本懐はあらゆる防諜を掻い潜る潜入能力だ。英雄級戦力でも彼らのブラインドアタックはかなり怖いと思うよ。

 これでハルドエン帝国側へ派遣できる戦力は……。終わりじゃないっぽいな。

 内々にはかなり前から話しており、そのプランの概要はユグドラシルでのいろいろがあった頃からしそれなりに固まっていた。太陽を主体に外部の情報を集めるべく、冒険者活動をしようと考えていると言う事らしい。それをタイミングもいいからと、魔物の森南方方面の諸国で様々な仕事をするために複数パーティーを運用していきたいという。いかにも太陽らしいアクティブな考え方である。

 太陽もペロ助と同じく狩猟に出ることが多かったが、彼は外で目新しい事を探すことを楽しんでいるところがあった。地球に住んでいた時からケージの外に出して部屋の床の上を散歩することを好んでいたので、元からこういう性格なのだと思う。太陽も固有種の剣勇竜人(ドラゴニュート・ブレイブ)となり、いつも笑顔の絶えないファニーフェイスと、大人と子供の中間を思わせる風合いが女性陣に人気になっている。


「ご主人! 僕も外に出たいんだけど」

「構わないよ。でも、いくつか条件を出すね」

「大丈夫。その辺りはマサムネ君と話し合って人員の入れ替わりとか、情報のやり取りを行うための魔道具の運用とか…事細かに決めてあるから。ほら、これ…凄くない? マサムネ君が独自に作ったらしい、外部活動マニュアルだって」


 流石マサムネ……と言いたいところだが、ハードカバー製本で100ページ以上になるマニュアルが事細かに書かれている。そのほとんどが情報の取り扱いと、身内の安全確認に関する条項となっていた。新規拠点開拓などの目途も考えると、太陽が冒険者をしてクランハウスのような物をあちこちに運営することはかなり有益だ。魔物の森の内部の情報もある程度集まりつつあり、そろそろ外に出ていきたいメンバーも出てくる頃だろうと考えていた。

 今回はその第一団。必ず成功して欲しい面もあるから、太陽をリーダーに主戦力メンバーもサポーターメンバーも充実させている。主戦力リーダーに太陽。サブリーダーに狼騎兵のミモザさん。元聖騎士でタンクユニットのガザンさん。ユグドラシル出身のエルフで魔法使いのマーガレットさん。サテュロス族のレンジャーであるメルバさん。サポーターリーダーに元セルベリエ神教シスターのリリエラさん。錬金術師のエメラルドさん。建築班所属のミミカさん。鍛冶場に居たドワーフ最若手のルベッガさん。ミルフィモーム族で生活面のサポーターを務めるメーラさん。やはり女性過多ではあるが、とりあえずこの10名で人類種の領域で活動していく。とりあえずはハルドエン帝国を中心に動き、人族至上主義地域の活動は控える方針。第一団の活動が成功したらば、現地でメンバーを募集して活動範囲を拡げていくという。

 ポヤッとしており、大雑把なところのある太陽ではあるが、彼もペロ助と同様に太陽は勘が働くタイプだ。その勘や感覚によるしっかりとした計画も立てられているので、何とかなることだろう。


「失敗は無いと思うけど、気をつけてね。特に太陽は正義感だけで突っ走らないようにしなよ」

「う、うん。気を付けるね……」

「まあ、多少やり過ぎた所で、君は英雄級戦力のまごう事なき中核の勇者系固有職“正義の勇者”だからね。最悪は天職を公表して何とか事を収めれば何とかなると思うし」

「あはははは……。この職業についてから、曲がったことが気になってしょうがなくなっちゃってさ」

「勇者として地位を持ったりしたら、ちゃんと報告してね。それに関しては否定しないから」


 人類種の中では英雄級戦力は権力者に管理されてしまうような存在になる。しかし、何事にも例外が存在するのだ。例えば太陽のようにいきなりポッと出た英雄になると、直ぐにあちこちの実力者が抱き込もうとする反面、既に育ってしまっている英雄なので押さえつけが聞かない。例えば家族や出身の村などを人質に取られるケースなどが上がるが、過去の経歴が一切不明な英雄になればなるだけ囲い込むことができなくなるのだ。

 それから太陽の場合は僕との繋がりがあるので、他地域の有力者とのパイプを繋ぐとなればそれなりの選別を行う事が必須になる。長時間付き合う事になるだろう有力者ならば、いずれは僕との繋がりを教えることになると思う。このようにいろいろな下地を準備した上で、彼らは旅立つことになる。それでも慎重に動くに越したことはない。だから、人族メンバーにはいろいろな面を考慮して裏も表も見て来たミモザさんと、宗教的な勢力の動き方を熟知しているガザンさんがサポートについている。それから外では亜人と呼ばれているメンバーも、人生経験がそこそこ豊富なメンバーを選んでいるんだよね。


「サポーター職のメンバーも何だかんだ戦闘できるしね」

「それが基準で選考したから。特にミミカさんとメーラさんは驚く程強いからびっくりした。普通にそこらの冒険者より強いと思うし」

「種族的な面で目をつけられることだけが問題だね」

「それも一応はご主人が作ってくれた変化の首飾りをつけてもらう事にしてるよ。僕が魔力を充填しておけば、数か月は普通に動くし」

「おけおけ。そこまで準備してるなら何とかなりそうだね。もちろんストレージには蟻型ゴーレムも入れてるんでしょ?」

「もちろん。あんなに便利な物を手放すことはできないしね」


 それにこれは僕の勝手な予想なんだけど、主戦力メンバーとサポーターメンバーで計10名が外に出ていくことになるのだが……。小さき住民の中には外の文化に興味津々なメンバーも居るのだ。絶対に荷物に紛れてミニマムゴーレムや妖精族がついて行くと思う。あんまり長時間水から出てると干からびるチビセイレーンは無理だろうけど。ピグマエウスドラゴニカは…どうかな? まあ、その時に考えればいいだろう。

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